スカラビア
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ジャミルは隣に座る恋人の様子を静かに観察していた。
ななしは、普段の明るい快活さをどこかへ置き忘れたように、所在なげに視線を泳がせている。時折、思い出したかのように頬の内側を気にかけ、小さく顔を顰める。その仕草は、彼にとって見逃せない違和感として映っていた。
「ななし、さっきから上の空だな。紅茶が冷めているぞ」
ジャミルの落ち着いた声が室内に響く。
彼は手にしたカップをテーブルに置き、わずかに身を乗り出した。褐色の肌に映える切れ長の瞳が、獲物を捕らえるかのように彼女を射抜く。
「あ、ええと……ごめんなさい、ジャミル先輩。ちょっと、考え事をしていて」
ななしは慌てて笑顔を作ろうとしたが、その表情はどこか歪んでいる。真面目な彼女は、隠し事をするのが驚くほど下手だった。常に周囲に気を配り、微細な変化を察知することに長けたジャミルの前では、その不器用さは致命的ですらあった。
ジャミルは長い指先で自身の顎をなぞりながら、ふっと口角を上げる。彼の中に、ある種の独占欲と、それを確認したいという衝動が芽生える。恋人という特権を得てからというもの、彼はこの真面目で光に満ちた少女を、自分の手でじわじわと侵食していくことに悦びを感じるようになっていた。
「考え事、か。俺との時間に他のことを考える余裕があるとは、随分と余裕だな」
「そんなことないです! ただ、その……」
言い淀む彼女の肩を、ジャミルの腕が静かに引き寄せる。抗う間もなく、彼女の身体は彼の胸の中に収まった。服越しに伝わるジャミルの体温が、ななしの思考を白く染め上げていく。
ジャミルは彼女の耳元に唇を寄せ、熱い吐息と共に囁いた。
「なら、証明してみせろ。お前の意識が、今どこにあるのかを」
ゆっくりと、だが拒絶を許さない力強さでジャミルの顔が近づいてくる。彼の端正な顔立ちが至近距離まで迫り、長い睫毛が微かに揺れるのが見えた。普段の冷静な彼からは想像もつかないほど、その瞳には情熱的な色が灯っている。
いつもなら、ななしは喜んでその熱を受け入れていただろう。しかし、今の彼女にはどうしても避けなければならない理由があった。
「……っ、待って、ください!」
彼女は咄嗟にジャミルの胸を押し返した。
ほんの数センチの距離で、唇と唇が触れ合う直前に。
沈黙が室内の空気を重く変える。
ジャミルの動きが止まり、その瞳に冷ややかな光が混じった。彼にとって、自分から求めた接触を拒絶されることは、プライドを著しく傷つける行為に他ならない。
「拒むのか? 俺を」
「違います、違うんです。ただ、今日は、どうしても……」
「理由を聞こう。納得できるものをな」
ジャミルの声は低く、逃げ場を塞ぐような威圧感を孕んでいる。彼はななしの両手首を片手で軽々と掴み上げ、頭上のソファに縫い付けた。逃がさない。その執着心が、彼の行動をより支配的なものへと変えていく。
ななしは顔を赤く染め、必死に言葉を探した。
「あ、あの……口内炎が、できていて。すごく、痛いんです。だから、その……」
最後の方は消え入るような声だった。ジャミルは一瞬、呆気に取られたように目を見開いたが、すぐにクツクツと喉を鳴らして笑い始めた。その笑みには、安堵と、さらなる嗜虐心が混ざり合っている。
「口内炎、だと? そんな子供のような理由で、俺の手を払ったのか」
「……笑わないでください。本当に痛いんです」
「ふん、お前らしいと言えばらしいが。だが、甘いな」
ジャミルは掴んでいた手首を離し、代わりに彼女の頬をやさしく包み込んだ。親指が彼女の潤んだ唇をゆっくりとなぞる。その感触だけで、ななしの背中に電流のような震えが走った。
「感染るものでもないし、お前がどんな顔をしようが、俺の関心が失われることはない。むしろ痛みに耐えて喘ぐお前の姿は、想像しただけで唆る」
「ジャミル先輩、何を……ひゃっ」
言葉の途中で、ジャミルの指が彼女の口内に滑り込んだ。驚きで唇が開く、その隙を彼は逃さなかった。熱い指先が、荒れた粘膜に触れる。鋭い痛みがななしの脳を突き刺したが、それと同時に異物が口内をかき回すという圧倒的な背徳感が彼女を支配した。
「ここか? 酷く腫れているな。痛むだろう」
「は、はふ……っ、やめ、て……」
「嫌だと言いながら、身体は熱くなっている。お前は本当に嘘が下手だ」
ジャミルは指を引き抜くと、糸を引く唾液さえも愛おしそうに見つめた後、強引に唇を重ねた。
「んん……っ!」
逃げようとする舌を、彼の舌が執拗に追い詰める。患部に触れるたびに走る激痛。だが、ジャミルのキスはそれを上回るほどの熱量を持っていた。痛みを快楽に転換させるような、強引で執拗な蹂躙。
ジャミルの手は彼女のシャツの下へと忍び込み、柔らかな肌を直接愛撫し始める。
「ななし、俺の名を呼べ」
「あ、ぅ、ジャミル、せんぱ……っ。いたい、のに……」
「お前のその痛みさえも、俺が支配してやる」
彼は彼女の首筋に深く歯を立てた。マーキングをするかのような執着的な行為。痛みと快楽が混ざり合い、ななしの理性がじわじわと崩壊していく。彼女は次第に抗う力を失い、ジャミルの背中に腕を回し、彼をより深く求めてしまった。
ジャミルは彼女の反応に満足したように鼻を鳴らす。
「そうだ。そうやって俺だけを見ていればいい」
彼は再び唇を重ねた。今度は先ほどよりも優しく、慈しむように。しかし、その奥底には決して逃がさないという冷徹なまでの独占欲が潜んでいる。
少しずつ、自分の都合の良い形に作り替えていく。
たとえそれが、一時的な身体の不調であっても、彼はそれを自分の愛のスパイスとして利用することを厭わない。
「明日、俺が特製の薬を塗ってやる。それまで我慢しろ。いいな?」
ジャミルは彼女の乱れた髪を整えながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
ななしは赤くなった顔を隠すように彼の胸に顔を埋める。痛みはまだ引いていなかったが、それ以上に心の中がジャミルという存在で一杯に満たされているのを感じていた。
スカラビアの夜は更けていく。スパイスの香りは、より深く、二人の肌に染み付いて離れようとはしなかった。
ななしは、普段の明るい快活さをどこかへ置き忘れたように、所在なげに視線を泳がせている。時折、思い出したかのように頬の内側を気にかけ、小さく顔を顰める。その仕草は、彼にとって見逃せない違和感として映っていた。
「ななし、さっきから上の空だな。紅茶が冷めているぞ」
ジャミルの落ち着いた声が室内に響く。
彼は手にしたカップをテーブルに置き、わずかに身を乗り出した。褐色の肌に映える切れ長の瞳が、獲物を捕らえるかのように彼女を射抜く。
「あ、ええと……ごめんなさい、ジャミル先輩。ちょっと、考え事をしていて」
ななしは慌てて笑顔を作ろうとしたが、その表情はどこか歪んでいる。真面目な彼女は、隠し事をするのが驚くほど下手だった。常に周囲に気を配り、微細な変化を察知することに長けたジャミルの前では、その不器用さは致命的ですらあった。
ジャミルは長い指先で自身の顎をなぞりながら、ふっと口角を上げる。彼の中に、ある種の独占欲と、それを確認したいという衝動が芽生える。恋人という特権を得てからというもの、彼はこの真面目で光に満ちた少女を、自分の手でじわじわと侵食していくことに悦びを感じるようになっていた。
「考え事、か。俺との時間に他のことを考える余裕があるとは、随分と余裕だな」
「そんなことないです! ただ、その……」
言い淀む彼女の肩を、ジャミルの腕が静かに引き寄せる。抗う間もなく、彼女の身体は彼の胸の中に収まった。服越しに伝わるジャミルの体温が、ななしの思考を白く染め上げていく。
ジャミルは彼女の耳元に唇を寄せ、熱い吐息と共に囁いた。
「なら、証明してみせろ。お前の意識が、今どこにあるのかを」
ゆっくりと、だが拒絶を許さない力強さでジャミルの顔が近づいてくる。彼の端正な顔立ちが至近距離まで迫り、長い睫毛が微かに揺れるのが見えた。普段の冷静な彼からは想像もつかないほど、その瞳には情熱的な色が灯っている。
いつもなら、ななしは喜んでその熱を受け入れていただろう。しかし、今の彼女にはどうしても避けなければならない理由があった。
「……っ、待って、ください!」
彼女は咄嗟にジャミルの胸を押し返した。
ほんの数センチの距離で、唇と唇が触れ合う直前に。
沈黙が室内の空気を重く変える。
ジャミルの動きが止まり、その瞳に冷ややかな光が混じった。彼にとって、自分から求めた接触を拒絶されることは、プライドを著しく傷つける行為に他ならない。
「拒むのか? 俺を」
「違います、違うんです。ただ、今日は、どうしても……」
「理由を聞こう。納得できるものをな」
ジャミルの声は低く、逃げ場を塞ぐような威圧感を孕んでいる。彼はななしの両手首を片手で軽々と掴み上げ、頭上のソファに縫い付けた。逃がさない。その執着心が、彼の行動をより支配的なものへと変えていく。
ななしは顔を赤く染め、必死に言葉を探した。
「あ、あの……口内炎が、できていて。すごく、痛いんです。だから、その……」
最後の方は消え入るような声だった。ジャミルは一瞬、呆気に取られたように目を見開いたが、すぐにクツクツと喉を鳴らして笑い始めた。その笑みには、安堵と、さらなる嗜虐心が混ざり合っている。
「口内炎、だと? そんな子供のような理由で、俺の手を払ったのか」
「……笑わないでください。本当に痛いんです」
「ふん、お前らしいと言えばらしいが。だが、甘いな」
ジャミルは掴んでいた手首を離し、代わりに彼女の頬をやさしく包み込んだ。親指が彼女の潤んだ唇をゆっくりとなぞる。その感触だけで、ななしの背中に電流のような震えが走った。
「感染るものでもないし、お前がどんな顔をしようが、俺の関心が失われることはない。むしろ痛みに耐えて喘ぐお前の姿は、想像しただけで唆る」
「ジャミル先輩、何を……ひゃっ」
言葉の途中で、ジャミルの指が彼女の口内に滑り込んだ。驚きで唇が開く、その隙を彼は逃さなかった。熱い指先が、荒れた粘膜に触れる。鋭い痛みがななしの脳を突き刺したが、それと同時に異物が口内をかき回すという圧倒的な背徳感が彼女を支配した。
「ここか? 酷く腫れているな。痛むだろう」
「は、はふ……っ、やめ、て……」
「嫌だと言いながら、身体は熱くなっている。お前は本当に嘘が下手だ」
ジャミルは指を引き抜くと、糸を引く唾液さえも愛おしそうに見つめた後、強引に唇を重ねた。
「んん……っ!」
逃げようとする舌を、彼の舌が執拗に追い詰める。患部に触れるたびに走る激痛。だが、ジャミルのキスはそれを上回るほどの熱量を持っていた。痛みを快楽に転換させるような、強引で執拗な蹂躙。
ジャミルの手は彼女のシャツの下へと忍び込み、柔らかな肌を直接愛撫し始める。
「ななし、俺の名を呼べ」
「あ、ぅ、ジャミル、せんぱ……っ。いたい、のに……」
「お前のその痛みさえも、俺が支配してやる」
彼は彼女の首筋に深く歯を立てた。マーキングをするかのような執着的な行為。痛みと快楽が混ざり合い、ななしの理性がじわじわと崩壊していく。彼女は次第に抗う力を失い、ジャミルの背中に腕を回し、彼をより深く求めてしまった。
ジャミルは彼女の反応に満足したように鼻を鳴らす。
「そうだ。そうやって俺だけを見ていればいい」
彼は再び唇を重ねた。今度は先ほどよりも優しく、慈しむように。しかし、その奥底には決して逃がさないという冷徹なまでの独占欲が潜んでいる。
少しずつ、自分の都合の良い形に作り替えていく。
たとえそれが、一時的な身体の不調であっても、彼はそれを自分の愛のスパイスとして利用することを厭わない。
「明日、俺が特製の薬を塗ってやる。それまで我慢しろ。いいな?」
ジャミルは彼女の乱れた髪を整えながら、勝ち誇ったような笑みを浮かべた。
ななしは赤くなった顔を隠すように彼の胸に顔を埋める。痛みはまだ引いていなかったが、それ以上に心の中がジャミルという存在で一杯に満たされているのを感じていた。
スカラビアの夜は更けていく。スパイスの香りは、より深く、二人の肌に染み付いて離れようとはしなかった。
