ディアソムニア
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学園の喧騒から遠く離れた古びた東屋。
そこはマレウス・ドラコニアとななしだけが知っている、お気に入りの場所だった。
「……おや、ななし。今日も僕を見つけ出してくれたのか。お前のその勘の良さには、いつも感心させられる」
柱に背を預けていたマレウスが柔らかに目を細めて微笑んだ。
彼が纏う空気は夜の森のように静謐で、けれどななしの前でだけは氷が解けるような温かさを帯びる。
「こんにちは、ツノ太郎。……今日はこれを持ってきました」
ななしがカバンから取り出したのは、小さな手回し式のオルゴールだった。マレウスは珍しそうにそれを手に取り、長い指先で丁寧に触れる。
「これは……。ふむ、機械仕掛けで音を奏でる道具か。僕の国では、音楽といえば妖精たちの歌声や、楽器の生演奏が主だった。こういった小さな箱から音が流れるのは、とても興味深い」
マレウスが小さなハンドルを回すと、ポロロンと、どこか懐かしい音色のメロディが流れた。その音にじっと耳を傾け、まるで子どものような純粋な瞳で、箱の中の歯車が回る様子を見つめている。
「……いい音だ。どこか、ななしの笑う時の声に似ている気がする」
「……えっ。そ、そうですか?」
唐突な言葉にななしが顔を赤くすると、マレウスは「くくっ」と、楽しげに喉を鳴らした。
「ツノ太郎、なんだか今日は一段と機嫌が良さそう」
「ああ。今日はヒトの子とこうして、誰にも邪魔されずに過ごせているからな。僕にとって、これ以上の贅沢はない」
マレウスはオルゴールを傍らに置くと、ななしの隣に腰を下ろした。
大きな体が近づき、彼の纏う冷ややかな緑の香りがふわりと鼻先をかすめる。
「……ななし。この前、言っていた『最近流行っている遊び』についても、もっと詳しく聞かせてくれないか? この学園の1年生たちの間ではどのようなことが行われているのか……僕はもっと、ななしの知っている世界を共有したい」
マレウスはななしの手をそっと取り、自分の手のひらで包み込んだ。
指先は驚くほど優しく、まるで壊れやすい宝物に触れるかのようだった。
「これからたくさん教えるね、ツノ太郎」
ななしが小さく頷くと、マレウスは満足そうに微笑み、彼女の肩にそっと頭を預けた。
風が木々を揺らし、遠くで鳥の声が響く。
二人の間には、ただ優しく、穏やかな時間だけが流れていた。
そこはマレウス・ドラコニアとななしだけが知っている、お気に入りの場所だった。
「……おや、ななし。今日も僕を見つけ出してくれたのか。お前のその勘の良さには、いつも感心させられる」
柱に背を預けていたマレウスが柔らかに目を細めて微笑んだ。
彼が纏う空気は夜の森のように静謐で、けれどななしの前でだけは氷が解けるような温かさを帯びる。
「こんにちは、ツノ太郎。……今日はこれを持ってきました」
ななしがカバンから取り出したのは、小さな手回し式のオルゴールだった。マレウスは珍しそうにそれを手に取り、長い指先で丁寧に触れる。
「これは……。ふむ、機械仕掛けで音を奏でる道具か。僕の国では、音楽といえば妖精たちの歌声や、楽器の生演奏が主だった。こういった小さな箱から音が流れるのは、とても興味深い」
マレウスが小さなハンドルを回すと、ポロロンと、どこか懐かしい音色のメロディが流れた。その音にじっと耳を傾け、まるで子どものような純粋な瞳で、箱の中の歯車が回る様子を見つめている。
「……いい音だ。どこか、ななしの笑う時の声に似ている気がする」
「……えっ。そ、そうですか?」
唐突な言葉にななしが顔を赤くすると、マレウスは「くくっ」と、楽しげに喉を鳴らした。
「ツノ太郎、なんだか今日は一段と機嫌が良さそう」
「ああ。今日はヒトの子とこうして、誰にも邪魔されずに過ごせているからな。僕にとって、これ以上の贅沢はない」
マレウスはオルゴールを傍らに置くと、ななしの隣に腰を下ろした。
大きな体が近づき、彼の纏う冷ややかな緑の香りがふわりと鼻先をかすめる。
「……ななし。この前、言っていた『最近流行っている遊び』についても、もっと詳しく聞かせてくれないか? この学園の1年生たちの間ではどのようなことが行われているのか……僕はもっと、ななしの知っている世界を共有したい」
マレウスはななしの手をそっと取り、自分の手のひらで包み込んだ。
指先は驚くほど優しく、まるで壊れやすい宝物に触れるかのようだった。
「これからたくさん教えるね、ツノ太郎」
ななしが小さく頷くと、マレウスは満足そうに微笑み、彼女の肩にそっと頭を預けた。
風が木々を揺らし、遠くで鳥の声が響く。
二人の間には、ただ優しく、穏やかな時間だけが流れていた。
