イグニハイド
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イグニハイド寮は今日も静まり返っていた。
部屋にはモニターの明かりだけが広がり、イデアは画面に向かったまま指を止めない。
「なにこの確率。さすがに無理ゲーなんだけど……」
ぼやきながらもキーボードを叩く音は途切れない。
そのとき、控えめなノックが部屋に響いた。
「……誰?」
「ななしです。入っても大丈夫ですか?」
聞き慣れた声にイデアの手がぴたりと止まる。
少し間を置いて小さく返事をした。
「……どうぞ」
ドアが開くと、廊下の光が部屋へ差し込む。
その明るさにイデアは目を細め、ななしはそんな様子を見て小さく笑った。
「またずっと部屋にいたんですか?」
「いや……まあ、そうだけど」
イデアは少し気まずそうに視線を逸らす。
「それで、今日はどうしたの?」
ななしは机の端へ小さな袋を置いた。
「差し入れです。先輩、またご飯後回しにしてるかなって」
「うっ……」
イデアは返す言葉が見つからない。
見透かされたことに苦笑しながら小さく肩を落とした。
「……ありがと」
短く礼を言うと、椅子を少しだけ回してななしの方へ向き直る。
画面ではなく、すぐ近くにいる相手を見るのは少し落ち着かない。
「……あのさ」
珍しくイデアの方から口を開いた。
「無理して来なくてもいいからね」
「無理?」
「この部屋、いるだけで退屈じゃない?」
「そんなことないですよ」
言葉は迷いなく返ってきた。
その即答に、イデアは思わず目を瞬かせる。
「ここ落ち着きますし、何よりイデア先輩と一緒にいられますから」
その一言に、イデアは言葉を失う。
少しだけ視線を泳がせてから、小さく息をついた。
「……それ、なんか設定おかしくない?」
「おかしくないですよ?」
笑顔のまま返されると、イデアは照れ隠しのように顔を背ける。
「……まあ、来てくれるのは……嫌じゃない」
声は小さかった。
それでも照れをごまかさずに口にした本音だった。
◇
部屋にはまた静けさが戻る。
キーボードを打つ音がゆっくりと響き、その隣でななしは差し入れを広げながら穏やかに過ごしていた。
モニターの光に照らされた空間は、さっきまでより少しだけ温かく感じられる。
しばらくして、ななしが遠慮がちに口を開いた。
「……もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」
イデアは画面から目を離さないまま、小さく頷く。
「……好きにすれば」
そっけない返事だった。
けれど口元には、ほんの少しだけ力の抜けた笑みが浮かんでいた。
部屋にはモニターの明かりだけが広がり、イデアは画面に向かったまま指を止めない。
「なにこの確率。さすがに無理ゲーなんだけど……」
ぼやきながらもキーボードを叩く音は途切れない。
そのとき、控えめなノックが部屋に響いた。
「……誰?」
「ななしです。入っても大丈夫ですか?」
聞き慣れた声にイデアの手がぴたりと止まる。
少し間を置いて小さく返事をした。
「……どうぞ」
ドアが開くと、廊下の光が部屋へ差し込む。
その明るさにイデアは目を細め、ななしはそんな様子を見て小さく笑った。
「またずっと部屋にいたんですか?」
「いや……まあ、そうだけど」
イデアは少し気まずそうに視線を逸らす。
「それで、今日はどうしたの?」
ななしは机の端へ小さな袋を置いた。
「差し入れです。先輩、またご飯後回しにしてるかなって」
「うっ……」
イデアは返す言葉が見つからない。
見透かされたことに苦笑しながら小さく肩を落とした。
「……ありがと」
短く礼を言うと、椅子を少しだけ回してななしの方へ向き直る。
画面ではなく、すぐ近くにいる相手を見るのは少し落ち着かない。
「……あのさ」
珍しくイデアの方から口を開いた。
「無理して来なくてもいいからね」
「無理?」
「この部屋、いるだけで退屈じゃない?」
「そんなことないですよ」
言葉は迷いなく返ってきた。
その即答に、イデアは思わず目を瞬かせる。
「ここ落ち着きますし、何よりイデア先輩と一緒にいられますから」
その一言に、イデアは言葉を失う。
少しだけ視線を泳がせてから、小さく息をついた。
「……それ、なんか設定おかしくない?」
「おかしくないですよ?」
笑顔のまま返されると、イデアは照れ隠しのように顔を背ける。
「……まあ、来てくれるのは……嫌じゃない」
声は小さかった。
それでも照れをごまかさずに口にした本音だった。
◇
部屋にはまた静けさが戻る。
キーボードを打つ音がゆっくりと響き、その隣でななしは差し入れを広げながら穏やかに過ごしていた。
モニターの光に照らされた空間は、さっきまでより少しだけ温かく感じられる。
しばらくして、ななしが遠慮がちに口を開いた。
「……もう少しだけ、ここにいてもいいですか?」
イデアは画面から目を離さないまま、小さく頷く。
「……好きにすれば」
そっけない返事だった。
けれど口元には、ほんの少しだけ力の抜けた笑みが浮かんでいた。
