イグニハイド
名前変換
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「……は?」
いつものように作業をしていただけなのに、偶然目に入った光景に手が止まる。
「いや……あれ、距離近くない?」
思わず漏れた声には、自分でも驚くくらいトゲがあった。
誰と話そうと■■■の自由だ。
そんなことは分かっている。
分かっているのに――
「……なんなんだよ」
キーボードの上で指が止まったまま動かない。
胸の奥がざわついて落ち着かなかった。
ゲームなら原因を探せばいい。
エラーなら修正すればいい。
けれど、この感覚には名前がつけられない。
「……いや」
小さくつぶやいて首を振る。
考えないように画面へ向き直っても、さっきの光景だけは何度も思い返してしまった。
◇
数時間後。
控えめなノックが部屋に響く。
「イデア先輩、いますか?」
聞き慣れた声に、心臓がどくりと鳴る。
「……いるよ、どうぞ」
ドアが開き、■■■が顔をのぞかせた。
「先輩、今日――」
「……」
「先輩、どうかしました?」
「……別に」
短く返したものの、自分でも態度が不自然だと分かっていた。
部屋に気まずい沈黙が流れる。
先に口を開いたのは、結局自分だった。
「……さっきさ、誰かと話してたよね」
「さっき? ああ、クラスメイトです」
「すごく、楽しそうだった」
その一言だけで、本音は十分伝わってしまった。
「別にさ、いいことなんだけどね……」
「イデア先輩?」
「僕なんかといるより、ああいう人たちと話してるほうが楽しいんじゃないの」
言った瞬間、後悔した。
部屋の空気が少しだけ張りつめる。
「……なんですか、それ」
「だって、そうでしょ」
「クラスメイトと話したらダメなんですか?」
「いや、そういうことじゃ……」
「わたしは普通に話していただけです」
言葉を区切ってから、まっすぐこちらを見る。
「でも、一緒にいて楽しいのはイデア先輩ですよ」
「……え」
「クラスメイトはクラスメイトです」
「……」
「比べる相手じゃありません」
胸の奥を締めつけていたものが、少しずつほどけていく。
それでも、不安はまだ残っていた。
「……それ、信じてもいいやつ?」
「信じてください」
少し笑って返される。
照れくさくて目をそらした。
「……信じたい、けど」
「けど?」
「さっきの見たら、普通にダメージ入ったし」
「じゃあ、今はどうですか?」
「……今は、ちょっと安心してる」
耳まで赤くなっていると思う。
多分その様子を見て、■■■は小さく笑った。
「でも、■■■氏が僕以外と楽しそうにしてるの見ると、普通にへこむ」
「先輩ってめんどくさい人ですね」
「い、今更なんだが?」
笑い声が重なると、部屋の空気も自然と和らいでいく。
「拙者、■■■氏に限っては同担拒否なんで」
「同担?」
小さく息をついてぼやく。
そう言いながらも、もう気持ちは隠せなかった。