イグニハイド
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「……は?」
イデアの手が止まる。
画面に映っていたのは、ななしがクラスメイトと楽しそうに話している姿だった。
イグニハイド寮の自室でいつものように作業をしていただけなのに、偶然目に入った光景が頭から離れない。
「いや……あれ、距離近くない?」
思わず漏れた声には、自分でも驚くくらいトゲがあった。
誰と話そうとななしの自由だ。
そんなことは分かっている。
分かっているのに――
「……なんなんだよ」
キーボードの上で指が止まったまま動かない。
胸の奥がざわついて落ち着かなかった。
ゲームなら原因を探せばいい。
エラーなら修正すればいい。
けれど、この感覚には名前がつけられない。
「……いや」
小さくつぶやいて首を振る。
考えないように画面へ向き直っても、さっきの光景だけは何度も思い返してしまった。
◇
数時間後。
控えめなノックが部屋に響く。
「イデア先輩、いますか?」
聞き慣れた声に、心臓がどくりと鳴る。
「……いるよ、どうぞ」
ドアが開き、ななしが顔をのぞかせた。
「先輩、今日――」
いつも通り話しかけてくる姿に、イデアは視線をそらす。
「先輩、どうかしました?」
「……別に」
短く返したものの、自分でも態度が不自然だと分かっていた。
部屋に気まずい沈黙が流れる。
先に口を開いたのは、結局イデアだった。
「……さっきさ、誰かと話してたよね」
「さっき? ああ、クラスメイトです」
「すごく、楽しそうだった」
その一言だけで、本音は十分伝わってしまった。
「別にさ、いいことなんだけどね……」
「イデア先輩?」
「僕なんかといるより、ああいう人たちと話してるほうが楽しいんじゃないの」
言った瞬間、後悔した。
部屋の空気が少しだけ張りつめる。
「……なんですか、それ」
「だって、そうでしょ」
「クラスメイトと話したらダメなんですか?」
「いや、そういうことじゃ……」
「わたしは普通に話していただけです」
言葉を区切ってから、まっすぐイデアを見る。
「でも、一緒にいて楽しいのはイデア先輩ですよ」
その言葉に、イデアは目を瞬かせた。
「……え」
「クラスメイトはクラスメイトです」
穏やかな声が続く。
「比べる相手じゃありません」
胸の奥を締めつけていたものが、少しずつほどけていく。
それでも、不安はまだ残っていた。
「……それ、信じてもいいやつ?」
「信じてください」
少し笑って返される。
イデアは照れくさそうに目をそらした。
「……信じたい、けど」
「けど?」
「さっきの見たら、普通にダメージ入ったし」
飾らない本音だった。
ななしは一歩だけ近づく。
「じゃあ、今はどうですか?」
「……今は、ちょっと安心してる」
耳まで少し赤くなっている。
その様子を見て、ななしは小さく笑った。
「でも、ななし氏が僕以外と楽しそうにしてるの見ると、普通にへこむ」
「先輩ってめんどくさい人ですね」
「い、今更なんだが?」
返ってきた声には、もうさっきまでの尖った空気はなかった。
笑い声が重なると、部屋の空気も自然と和らいでいく。
「拙者、ななし氏に限っては同担拒否なんで」
「同担?」
イデアは小さく息をついて、照れたようにぼやく。
そう言いながらも、その気持ちを隠そうとはしなかった。
イデアの手が止まる。
画面に映っていたのは、ななしがクラスメイトと楽しそうに話している姿だった。
イグニハイド寮の自室でいつものように作業をしていただけなのに、偶然目に入った光景が頭から離れない。
「いや……あれ、距離近くない?」
思わず漏れた声には、自分でも驚くくらいトゲがあった。
誰と話そうとななしの自由だ。
そんなことは分かっている。
分かっているのに――
「……なんなんだよ」
キーボードの上で指が止まったまま動かない。
胸の奥がざわついて落ち着かなかった。
ゲームなら原因を探せばいい。
エラーなら修正すればいい。
けれど、この感覚には名前がつけられない。
「……いや」
小さくつぶやいて首を振る。
考えないように画面へ向き直っても、さっきの光景だけは何度も思い返してしまった。
◇
数時間後。
控えめなノックが部屋に響く。
「イデア先輩、いますか?」
聞き慣れた声に、心臓がどくりと鳴る。
「……いるよ、どうぞ」
ドアが開き、ななしが顔をのぞかせた。
「先輩、今日――」
いつも通り話しかけてくる姿に、イデアは視線をそらす。
「先輩、どうかしました?」
「……別に」
短く返したものの、自分でも態度が不自然だと分かっていた。
部屋に気まずい沈黙が流れる。
先に口を開いたのは、結局イデアだった。
「……さっきさ、誰かと話してたよね」
「さっき? ああ、クラスメイトです」
「すごく、楽しそうだった」
その一言だけで、本音は十分伝わってしまった。
「別にさ、いいことなんだけどね……」
「イデア先輩?」
「僕なんかといるより、ああいう人たちと話してるほうが楽しいんじゃないの」
言った瞬間、後悔した。
部屋の空気が少しだけ張りつめる。
「……なんですか、それ」
「だって、そうでしょ」
「クラスメイトと話したらダメなんですか?」
「いや、そういうことじゃ……」
「わたしは普通に話していただけです」
言葉を区切ってから、まっすぐイデアを見る。
「でも、一緒にいて楽しいのはイデア先輩ですよ」
その言葉に、イデアは目を瞬かせた。
「……え」
「クラスメイトはクラスメイトです」
穏やかな声が続く。
「比べる相手じゃありません」
胸の奥を締めつけていたものが、少しずつほどけていく。
それでも、不安はまだ残っていた。
「……それ、信じてもいいやつ?」
「信じてください」
少し笑って返される。
イデアは照れくさそうに目をそらした。
「……信じたい、けど」
「けど?」
「さっきの見たら、普通にダメージ入ったし」
飾らない本音だった。
ななしは一歩だけ近づく。
「じゃあ、今はどうですか?」
「……今は、ちょっと安心してる」
耳まで少し赤くなっている。
その様子を見て、ななしは小さく笑った。
「でも、ななし氏が僕以外と楽しそうにしてるの見ると、普通にへこむ」
「先輩ってめんどくさい人ですね」
「い、今更なんだが?」
返ってきた声には、もうさっきまでの尖った空気はなかった。
笑い声が重なると、部屋の空気も自然と和らいでいく。
「拙者、ななし氏に限っては同担拒否なんで」
「同担?」
イデアは小さく息をついて、照れたようにぼやく。
そう言いながらも、その気持ちを隠そうとはしなかった。
