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静まり返った薄暗い室内で、長い腕が腰を抱き寄せた。
急激に縮まった距離感に吐息が重なり、見上げた先でフロイドが口角を上げる。
「ねぇ、なんでそんな目ぇ丸くしてんの?」
「急に顔が近くなったから、びっくりして……」
「へぇ、じゃあ…もっと近くしてあげよっか」
「えっ…」
ひょうひょうとした声が落ちてきたかと思うと唇が重ねられた。
上唇を軽く食むような柔らかい感触が伝わる。
驚いて息を呑んだ唇を、今度は下から優しく吸い上げた。
「……っ、フロイド、先輩……」
「ちいさい口、かわいい。ねぇ、力抜きなよ」
「いきなりそんな……っ」
ちゅっと控えめな水音がひとつ鳴り、すぐにまた上唇を弄ばれる。
拒む間も与えず、何度も何度も微かな口付けが落ちてきた。
「……緊張してんの?」
「だって急にこんなことされたら、ドキドキして……」
「へぇ、小エビちゃんかわいいねぇ」
含み笑いとともに、今度は下唇を強く挟み込まれる。
熱を持った唇が何度も触れ合い、口元から小さく漏れる吐息をフロイドは楽しそうに吸い取っていった。
「……ん、ぁ……」
「そう、そのまま力抜いててねぇ」
何度も位置を変えながら、隙間なく唇を重ねていく。
離れそうで離れないもどかしい距離感のまま、柔らかい感触が幾度となく重なった。
「小エビちゃん。口、少し開けて?」
「え……っ、……ぁ」
問いかけに答えようと唇を開いた一瞬の隙を、フロイドは見逃さなかった。
すかさず滑り込んできた温かい舌先が、閉じていた歯の隙間を縫うように、中へと侵入してくる。
「んっ!? ……ふ、ぁ……っ」
一気に深くなったキスに、体が一瞬大きく跳ねる。
口内をなぞるように滑る長い舌の動きに翻弄され、頭の中が痺れたように熱くなっていく。
逃げ出そうにも腰を抱え込まれた腕にしっかりと固定されて動けない。
「は……っ、ふ、フロイド……せんぱいっ」
「喋んなくていいよ。オレの舌、ぎゅーって吸って?」
「んぅ……っ、ふぁ……っ」
互いの舌が押し合い、絡み合うたびに生々しい水音が二人の間に落ちる。
呼吸を整える暇さえ与えられないまま、フロイドは貪るように角度を変えて何度も深く口づけを繰り返した。
「はぁ……っ、ん……ぁ」
「小エビちゃん、えっちな声でてる」
「出して……ない、です……っ」
「出してるじゃん。ほら……」
反論しようと開いた口内へ容赦なく舌が突き入れられ、喉の奥まで届くような刺激に身体を震わせる。。
甘く痺れるような快感が全身の力を奪い去り、フロイドのシャツの胸元をぎゅっと掴みしめた。
「んむ……っ、ふぅ……あ、ぁっ」
「口のなか、すっごく熱い。もっと奥まで触らせて〜」
溢れそうになる唾液を逃さず吸い上げられながら、さらに深く深く舌が侵入してくる。
途切れ途切れの息を吐き出すことしかできず、ただフロイドにすがりつくことしかできなかった。
「ふ……ぁっ、ん……っ」
「小エビちゃん、息上がってんね。でもまだダメ〜」
「っ、フロイド先輩……もう……っ」
深まるキスに思考が溶けそうになる中、後頭部に回されていた大きな手が、ゆっくりと耳元へ滑り降りてきた。
長い指先が髪を掻き分け、耳の後ろの肌に触れる。
「っ……!? んぁっ!!」
「……アハッ、なにそれ。今すっごい跳ねた」
背筋に電撃が走ったような激しい震えに、フロイドの胸に顔を埋めた。
指先が耳の輪郭をうろつき、耳たぶをすっと撫で上げる。
「だ、め……そこ、触らな……っ」
「え〜、ここ? 小エビちゃん、耳弱いんだ」
「ちが……ぁっ! んんーッ」
嬉しそうに目を細めたフロイドが、耳の付け根を爪の先で軽く突く。
同時に強く唇を塞がれ、声にならない喘ぎが口内で溢れた。
「んっ! ……ふ、ぁ……っ」
「やば、耳触りながらキスするの気持ちいい」
「……っ、ぁ……っ」
「小エビちゃんも気持ちい?」
耳孔の近くを指の腹で優しく擦られ、同時に深々と舌を奥までねじ込まれる。
同時に与えられる刺激に、意識は完全に白く染まっていった。
「んっ……、ぁっ、……っ」
「ほんと、かわいい」
耳介を指先でつまみ上げられ、腰が勝手に跳ね上がる。
逃げ場のない快感に涙目になりながら、必死にフロイドの首に腕を回した。
「ん……っ」
「そうやって抱きついてくんなら、もっといじめてあげる」
何度も何度も角度を変えて唇が押し当てられ、耳元を捏ね回すような指の動きが止まらない。
呼吸すら忘れそうなほど、熱に包まれ続けた。
「ふ……ぁ、あ……っ」
「小エビちゃん、顔真っ赤」
ゆっくりと唇が離されると、二人の口元を繋いでいた細い糸が静かに切れた。
フロイドの胸元に崩れ落ち、乱れた呼吸を必死に整えようとする。
「はぁ、はぁ……っ、フロイド先輩の意地悪……」
「え〜、小エビちゃんだって気持ちよかったでしょ」
喉を鳴らして笑いながら、フロイドは顎を持ち上げた。
互いの涎で湿った唇を指の腹でゆっくりとなぞられる。
「ねぇ、知ってる? キスだけでぐちゃぐちゃになってんの」
「っ……言わないでください……」
「……ねぇ、これで終わりなわけないよねぇ?」
囁くような低い声が耳元をくすぐり身体が強張った。
手のひらが太ももの裏へと回り込み、持ち上げるように力を込める。
「ぁ……っ!? フロイド先輩……?」
「小エビちゃんも、もっと奥まで欲しいでしょ?」
視界が揺れ、そのまま静かにベッドの上へと押し倒される。
覆いかぶさってくる体と熱い体温に包まれ逃げ場を完全に失った。
「朝までたっぷり可愛がってあげるからさ。……ね?」
耳元でくすくすと笑う声が響き、夜は静かに更けていった。