スカラビア
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「なあ、ななし」
「なんですか?」
「今日、このあと時間あるか?」
「ありますけど」
「じゃあ、もう少し一緒にいてくれよ」
「いいですよ」
「ほんとか!?」
嬉しそうに笑う顔を見ていると、こちらまで頬が緩む。
けれど、カリムはそのまま何かを言いかけて、口を閉じた。
「カリム先輩、どうしました?」
「いや……」
「?」
「ななしって、オレといるときよく笑うよな」
「そうですか?」
「うん」
「カリム先輩が面白いからじゃないですか」
「それ、褒めてるのか?」
「褒めてますよ?」
「そっか、褒めてるのか」
カリムが笑う。
いつも通りの明るい声だった。
それなのに、しばらくすると彼はふっと静かになった。
「……オレさ、最近ななしのこと考える時間が増えたんだ」
「え……?」
「授業中とか、飯食ってるときとか」
「そんなにですか?」
「ああ。次いつ会えるかなっていつも考えてる」
あまりにも自然に言われて、ななしは返事に困った。
カリムはそんな反応を見ても、笑ってごまかそうとはしない。
「変だろ?」
「……うーん」
「嫌だったか?」
「ううん、嫌じゃないです」
「そっか」
カリムは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、もう少し言ってもいいか?」
「何をですか?」
「ななしが好きだってこと」
「……え!」
「オレ、もう自覚してるからさ」
さらりと言われて、胸が大きく鳴った。
カリムは照れてはいるものの、言葉を濁す様子はない。
「いつから、とか聞かれると分かんないけどさ」
「はい」
「お前と一緒にいると楽しいし、会えないとつまんない」
「……」
「他のやつと楽しそうにしてると、ちょっと気になる」
「カリム先輩でも、嫉妬するんですね」
「するぞ」
即答だった。
「そこは否定しないんですか?」
「だって好きなんだから、仕方ないだろ」
「……そういうこと、普通に言うんですね」
「だって、言わないと伝わらないだろ?」
あまりに真っ直ぐで、ななしは視線を逸らした。
するとカリムが少し笑う。
「照れてるのか?」
「……知りません」
「そっか」
カリムが楽しそうに笑いながら、少しだけ距離を縮めた。
「じゃあ、もう一個だけ言うぞ」
「まだあるんですか?」
「あるぜ!」
「何ですか?」
カリムは少しだけ身を屈め、ななしの顔を覗き込む。
「キスしたくなる」
「え……っ!」
思わず身体が固まった。
さっきまで普通に話していたはずなのに、急に距離が近くなる。
カリムはそんなななしを見て、すぐに表情を和らげた。
「ごめん、困らせちまったよな?」
「……びっくりしました」
「うん。そうだよな」
「急だったので」
「わりぃ」
そう言いながらも、カリムは離れなかった。
ただ、無理に近づくこともしない。
ななしがどうするのかを待っている。
「……カリム先輩」
「ん?」
「そういうこと言うとき、そんな顔するんですね」
「どんな顔だ?」
「嬉しそうな顔してます」
「だって嬉しいからな!」
「何がですか?」
「ななしがオレのこと、ちゃんと見てくれてる」
その言葉に、ななしはまた黙り込む。
「……見てますよ」
「ほんとか?」
「はい」
「そっか」
カリムは少しだけ笑った。
それから、さっきより穏やかな声で続ける。
「じゃあ、聞いてもいいか?」
「……何を?」
「キス、してもいいか?」
まっすぐ向けられた言葉に、ななしは息を止めた。
断る理由は浮かばない。
ただ、頷くのが恥ずかしくて、すぐには顔を上げられなかった。
「ななし」
「……はい」
「嫌なら、ちゃんと言ってくれよ」
「嫌じゃ、ないです」
「……そっか」
カリムの声が少しだけ弾んだ。
「じゃあ、こっち見て」
ゆっくり顔を上げると目が合う。
今度は、どちらも何も言わなかった。
「……近いですね」
「嫌か?」
「嫌じゃないです」
「ならよかった」
カリムは笑った。
それから、ほんの少しだけ距離を縮める。
「緊張してるか?」
「してます」
「オレもだ」
「カリム先輩も?」
「そりゃするだろ」
「余裕そうに見えます」
「余裕あるふりしてるだけだぞ」
「ふふっ」
「笑うなって」
「すみません」
「……でも、その顔も好きだな」
「またそういうこと言う」
「本当のことだから仕方ないだろ?」
カリムの指先が、そっとななしの頬に触れる。
確かめるような優しい動きだった。
「ななし」
「はい」
「もう一回聞くぞ」
少しだけ間を置いて、カリムが尋ねる。
「キスしていいか?」
ななしは小さく頷いた。
カリムが嬉しそうに笑う。
「ありがとな」
その声が近くで聞こえた直後、唇がそっと重なった。
ほんの一瞬。
離れたあとも、カリムはすぐには距離を取らなかった。
「……もう一回したくなった」
「カリム先輩……」
「だめか?」
「……ずるいです」
「じゃあ、いいってことだな?」
「知りません」
「ははっ」
カリムは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、もう一回だけな」
「なんですか?」
「今日、このあと時間あるか?」
「ありますけど」
「じゃあ、もう少し一緒にいてくれよ」
「いいですよ」
「ほんとか!?」
嬉しそうに笑う顔を見ていると、こちらまで頬が緩む。
けれど、カリムはそのまま何かを言いかけて、口を閉じた。
「カリム先輩、どうしました?」
「いや……」
「?」
「ななしって、オレといるときよく笑うよな」
「そうですか?」
「うん」
「カリム先輩が面白いからじゃないですか」
「それ、褒めてるのか?」
「褒めてますよ?」
「そっか、褒めてるのか」
カリムが笑う。
いつも通りの明るい声だった。
それなのに、しばらくすると彼はふっと静かになった。
「……オレさ、最近ななしのこと考える時間が増えたんだ」
「え……?」
「授業中とか、飯食ってるときとか」
「そんなにですか?」
「ああ。次いつ会えるかなっていつも考えてる」
あまりにも自然に言われて、ななしは返事に困った。
カリムはそんな反応を見ても、笑ってごまかそうとはしない。
「変だろ?」
「……うーん」
「嫌だったか?」
「ううん、嫌じゃないです」
「そっか」
カリムは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、もう少し言ってもいいか?」
「何をですか?」
「ななしが好きだってこと」
「……え!」
「オレ、もう自覚してるからさ」
さらりと言われて、胸が大きく鳴った。
カリムは照れてはいるものの、言葉を濁す様子はない。
「いつから、とか聞かれると分かんないけどさ」
「はい」
「お前と一緒にいると楽しいし、会えないとつまんない」
「……」
「他のやつと楽しそうにしてると、ちょっと気になる」
「カリム先輩でも、嫉妬するんですね」
「するぞ」
即答だった。
「そこは否定しないんですか?」
「だって好きなんだから、仕方ないだろ」
「……そういうこと、普通に言うんですね」
「だって、言わないと伝わらないだろ?」
あまりに真っ直ぐで、ななしは視線を逸らした。
するとカリムが少し笑う。
「照れてるのか?」
「……知りません」
「そっか」
カリムが楽しそうに笑いながら、少しだけ距離を縮めた。
「じゃあ、もう一個だけ言うぞ」
「まだあるんですか?」
「あるぜ!」
「何ですか?」
カリムは少しだけ身を屈め、ななしの顔を覗き込む。
「キスしたくなる」
「え……っ!」
思わず身体が固まった。
さっきまで普通に話していたはずなのに、急に距離が近くなる。
カリムはそんなななしを見て、すぐに表情を和らげた。
「ごめん、困らせちまったよな?」
「……びっくりしました」
「うん。そうだよな」
「急だったので」
「わりぃ」
そう言いながらも、カリムは離れなかった。
ただ、無理に近づくこともしない。
ななしがどうするのかを待っている。
「……カリム先輩」
「ん?」
「そういうこと言うとき、そんな顔するんですね」
「どんな顔だ?」
「嬉しそうな顔してます」
「だって嬉しいからな!」
「何がですか?」
「ななしがオレのこと、ちゃんと見てくれてる」
その言葉に、ななしはまた黙り込む。
「……見てますよ」
「ほんとか?」
「はい」
「そっか」
カリムは少しだけ笑った。
それから、さっきより穏やかな声で続ける。
「じゃあ、聞いてもいいか?」
「……何を?」
「キス、してもいいか?」
まっすぐ向けられた言葉に、ななしは息を止めた。
断る理由は浮かばない。
ただ、頷くのが恥ずかしくて、すぐには顔を上げられなかった。
「ななし」
「……はい」
「嫌なら、ちゃんと言ってくれよ」
「嫌じゃ、ないです」
「……そっか」
カリムの声が少しだけ弾んだ。
「じゃあ、こっち見て」
ゆっくり顔を上げると目が合う。
今度は、どちらも何も言わなかった。
「……近いですね」
「嫌か?」
「嫌じゃないです」
「ならよかった」
カリムは笑った。
それから、ほんの少しだけ距離を縮める。
「緊張してるか?」
「してます」
「オレもだ」
「カリム先輩も?」
「そりゃするだろ」
「余裕そうに見えます」
「余裕あるふりしてるだけだぞ」
「ふふっ」
「笑うなって」
「すみません」
「……でも、その顔も好きだな」
「またそういうこと言う」
「本当のことだから仕方ないだろ?」
カリムの指先が、そっとななしの頬に触れる。
確かめるような優しい動きだった。
「ななし」
「はい」
「もう一回聞くぞ」
少しだけ間を置いて、カリムが尋ねる。
「キスしていいか?」
ななしは小さく頷いた。
カリムが嬉しそうに笑う。
「ありがとな」
その声が近くで聞こえた直後、唇がそっと重なった。
ほんの一瞬。
離れたあとも、カリムはすぐには距離を取らなかった。
「……もう一回したくなった」
「カリム先輩……」
「だめか?」
「……ずるいです」
「じゃあ、いいってことだな?」
「知りません」
「ははっ」
カリムは嬉しそうに笑った。
「じゃあ、もう一回だけな」
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