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「こんなところで何をしているんですか、あなたは」
廊下の陰で課題のプリントを眺めていたななしの前に、アズールが影を落とした。
「アズール先輩。次の授業のノートを見返してて」
「相変わらず要領が悪いですね。もっと効率的にまとめればいいものを」
言いながらも、アズールは彼女の手に持ったプリントを覗き込んでくる。
「これでも必死なんです」
「頑張り方を間違っていると言っているのですよ。貸しなさい」
アズールは彼女の手からペンを受け取り、要点に素早く線を引いていく。
「こうやって整理すれば、覚える量は半分で済みます」
「すごい……一瞬で分かりやすくなりました」
「当然です。僕を誰だと思っているのですか」
得意げに胸を張るアズールに、彼女は思わず笑みをこぼした。
「やっぱりアズール先輩は頼りになりますね」
「お世辞なら結構です。それより、僕はタダで動く男ではありませんよ」
褒め言葉を途中で遮り、アズールは露骨に視線を逸らして眼鏡の位置を直した。
「えっ、もしかして指導料を取るつもりですか?」
「当たり前でしょう。僕の貴重な時間を割いてあげたのですから」
「そんな……今月のお小遣い、もうピンチなんですけど」
「別の形で支払いも受け付けていますよ」
アズールはいたずらっぽく口角を上げ、彼女の表情をうかがってくる。
「別の形って、何ですか……?」
「さあ。何がいいでしょうね。僕を納得させるだけの対価を考えてください」
「うーん。放課後まで待ってもらうことってできますか?」
「いいでしょう。今日の放課後、モストロ・ラウンジへお越しください」
◇
開店前の静かなモストロ・ラウンジは、薄暗い水底のような光に包まれていた。
指定されたVIPルームのソファーに腰掛ける彼女の前で、アズールが優雅にお茶を注ぐ。
「さて、僕への支払いは決まりましたか?」
「考えたんですけど……今度ラウンジの手伝いをするんじゃダメですか?」
「僕を甘く見ないでいただきたい。そんな労働力で誤魔化されるとでも?」
アズールはカップをテーブルに置き、彼女の隣へとゆっくり腰を下ろした。
「じゃあ、アズール先輩は何が欲しいんですか」
「そうですね……例えば、あなたの時間をもう少し僕に差し出すとか」
「時間……? それなら、今こうして一緒にいますけど」
「それだけでは足りません。僕が満足するまで付き合ってもらいます」
「いいですよ。わたしも先輩と一緒にいるの、好きですし」
「……っ、本当に、あなたは……」
耳元で低く呟く声とともに、甘い吐息が首筋を撫でる。
「僕に借りを作ったことが、どういうことか教えて差し上げます」
「アズール先輩……?」
「計算が狂うんです。あなたがこうして近くにいるだけで」
耳元で囁かれる低い声に、胸が跳ねる。
アズールはゆっくりと顔を近づけ、触れそうな位置でぴたりと動きを止めた。
「……避けないんですね」
強気な声の奥には、ほんのわずかだけ震える緊張が交じる。
「だって、避ける必要ないですから」
言葉が届いた瞬間、静かに唇が重ねられ体温が伝わる。
名残を惜しむようにアズールは少しだけ顔を離した。
その頬は、耳まで真っ赤に染まっている。
「……これでは対価になりませんね」
「満足できませんでしたか?」
「足りるわけがないでしょう……もっと、僕に支払ってください」
強がる言葉とは裏腹に、アズールは縋るように彼女の腰を抱き寄せ、すかさず二度目のキスをねだるように深く唇を塞いできた。
「ん……アズール、先輩……っ」
「僕のものだと、自覚してください……」
何度も角度を変えて深く重ねられる唇と、背中に回された強い腕の力。
静まり返ったラウンジの奥で、離れる隙すら与えられないまま、互いの体温だけがその場を満たしていった。
廊下の陰で課題のプリントを眺めていたななしの前に、アズールが影を落とした。
「アズール先輩。次の授業のノートを見返してて」
「相変わらず要領が悪いですね。もっと効率的にまとめればいいものを」
言いながらも、アズールは彼女の手に持ったプリントを覗き込んでくる。
「これでも必死なんです」
「頑張り方を間違っていると言っているのですよ。貸しなさい」
アズールは彼女の手からペンを受け取り、要点に素早く線を引いていく。
「こうやって整理すれば、覚える量は半分で済みます」
「すごい……一瞬で分かりやすくなりました」
「当然です。僕を誰だと思っているのですか」
得意げに胸を張るアズールに、彼女は思わず笑みをこぼした。
「やっぱりアズール先輩は頼りになりますね」
「お世辞なら結構です。それより、僕はタダで動く男ではありませんよ」
褒め言葉を途中で遮り、アズールは露骨に視線を逸らして眼鏡の位置を直した。
「えっ、もしかして指導料を取るつもりですか?」
「当たり前でしょう。僕の貴重な時間を割いてあげたのですから」
「そんな……今月のお小遣い、もうピンチなんですけど」
「別の形で支払いも受け付けていますよ」
アズールはいたずらっぽく口角を上げ、彼女の表情をうかがってくる。
「別の形って、何ですか……?」
「さあ。何がいいでしょうね。僕を納得させるだけの対価を考えてください」
「うーん。放課後まで待ってもらうことってできますか?」
「いいでしょう。今日の放課後、モストロ・ラウンジへお越しください」
◇
開店前の静かなモストロ・ラウンジは、薄暗い水底のような光に包まれていた。
指定されたVIPルームのソファーに腰掛ける彼女の前で、アズールが優雅にお茶を注ぐ。
「さて、僕への支払いは決まりましたか?」
「考えたんですけど……今度ラウンジの手伝いをするんじゃダメですか?」
「僕を甘く見ないでいただきたい。そんな労働力で誤魔化されるとでも?」
アズールはカップをテーブルに置き、彼女の隣へとゆっくり腰を下ろした。
「じゃあ、アズール先輩は何が欲しいんですか」
「そうですね……例えば、あなたの時間をもう少し僕に差し出すとか」
「時間……? それなら、今こうして一緒にいますけど」
「それだけでは足りません。僕が満足するまで付き合ってもらいます」
「いいですよ。わたしも先輩と一緒にいるの、好きですし」
「……っ、本当に、あなたは……」
耳元で低く呟く声とともに、甘い吐息が首筋を撫でる。
「僕に借りを作ったことが、どういうことか教えて差し上げます」
「アズール先輩……?」
「計算が狂うんです。あなたがこうして近くにいるだけで」
耳元で囁かれる低い声に、胸が跳ねる。
アズールはゆっくりと顔を近づけ、触れそうな位置でぴたりと動きを止めた。
「……避けないんですね」
強気な声の奥には、ほんのわずかだけ震える緊張が交じる。
「だって、避ける必要ないですから」
言葉が届いた瞬間、静かに唇が重ねられ体温が伝わる。
名残を惜しむようにアズールは少しだけ顔を離した。
その頬は、耳まで真っ赤に染まっている。
「……これでは対価になりませんね」
「満足できませんでしたか?」
「足りるわけがないでしょう……もっと、僕に支払ってください」
強がる言葉とは裏腹に、アズールは縋るように彼女の腰を抱き寄せ、すかさず二度目のキスをねだるように深く唇を塞いできた。
「ん……アズール、先輩……っ」
「僕のものだと、自覚してください……」
何度も角度を変えて深く重ねられる唇と、背中に回された強い腕の力。
静まり返ったラウンジの奥で、離れる隙すら与えられないまま、互いの体温だけがその場を満たしていった。
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