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「ななしさん」
呼びかけられて振り返ると、スカリーが穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
「スカリーさん、どうかしました?」
「少々お願いがあるのですが、こちらへ来ていただけますか」
「……何かありました?」
「いえ。ただ、もう少し近くでお話ししたいと思っただけですよ」
少しだけ手を差し出すスカリーの返事は早く、迷いがなかった。
あまりにも真っ直ぐな言葉に、ななしは少しだけ目を丸くする。
「スカリーさんって、そういうことをさらっと言いますよね」
「我輩としては、思ったことを素直にお伝えしているだけなのですが」
「それが困るんです。……少し、恥ずかしいですから」
その答えを聞いた瞬間、スカリーは少しだけ言葉を詰まらせ、それから可笑しそうに口元を緩めた。
「失礼、ななしさんがそのような反応をされるとは思わず」
「からかってます?」
「まさか。可愛らしいと思っただけですよ」
「もう……、そういうところです」
スカリーは少しだけ目を細め、静かに言葉を続けた。
「静かで落ち着いた時間というのも、貴方となら案外心地よいものですね」
「意外です」
「意外……ですか?」
「ハロウィン以外のことを喋るスカリーさんって、あまり見慣れなくて」
「もちろんハロウィンについて語る時間は至高のものですが……大切な方と過ごす時間が楽しくないはずありません」
その言葉に、ななしの胸が跳ねた。
「大切な方って……」
「ええ。ななしさんのことです」
「……そんな顔で言われたら何も言えなくなります」
「それは困りましたね」
「全然困ってない顔をしてますよ?」
「おや、見抜かれてしまいましたか。我輩もまだまだ修行が足りないようです」
「ほんと、真面目な顔ですごく大胆なことを言う……」
「ですが、これが我輩の本心ですから」
返す言葉が見つからず、ななしは思わず視線を逸らした。
◇
「ななしさん。少しだけ、失礼してもよろしいでしょうか」
「何ですか?」
スカリーは問いに答える代わりに、そっとななしの手を取った。
細く冷ややかな指先が肌に触れる。
「びっくりしました」
「申し訳ありません、嫌でしたでしょうか」
「ううん、嫌じゃないですよ」
「……ありがとうございます。ななしさんが不快な思いをされることだけは避けたいので」
真っ直ぐな言葉に胸が温かくなると同時に、ふと過去の記憶が重なった。
「スカリーさん」
「なんでしょう」
「初対面の時に、いきなり手にキスしてきた人がそれ言います?」
「そう……でしたね。ですが、あの時とは我輩の気持ちの重みが違いますから」
「……」
「また黙ってしまわれましたね」
「だって、そういうことばかり言うから」
言い淀む姿を見て、スカリーは笑いを漏らした。
「ヒヒヒ……失礼、つい」
「スカリーさんがそんな風に笑うの、珍しいですね」
「ななしさんといると、どうにも感情の制御が難しくなってしまうようです」
◇
「そろそろ戻らなければなりませんね」
スカリーが名残惜しそうに呟き、足を止める。
「そうですね」
「……もう少しだけ、このままでいたいのですが」
「私もです」
「本当ですか?」
「はい」
「それは……大変嬉しいですね」
珍しく間を置かずに返事をされ、思わず微笑みがこぼれた。
「スカリーさんって、意外と素直なんですね」
「そうでしょうか?」
「はい」
「では、もう隠す必要もありませんね」
「え……?」
「我輩にとって、ななしさんと過ごす時間はとても大切なものなのです」
「……」
「これからも、こうして隣にいていただけますか」
「はい」
スカリーの口元が穏やかに緩んだ。
差し出された指先へ、今度はななしの側から手を重ねて握り返す。
「スカリーさんが、離したくなさそうにしていたので」
「……参りました。ななしさんには到底敵いませんね」
繋いだ手からじんわりと伝わる温度を感じながら、二人は静かに歩き出した。
呼びかけられて振り返ると、スカリーが穏やかな笑みを浮かべて立っていた。
「スカリーさん、どうかしました?」
「少々お願いがあるのですが、こちらへ来ていただけますか」
「……何かありました?」
「いえ。ただ、もう少し近くでお話ししたいと思っただけですよ」
少しだけ手を差し出すスカリーの返事は早く、迷いがなかった。
あまりにも真っ直ぐな言葉に、ななしは少しだけ目を丸くする。
「スカリーさんって、そういうことをさらっと言いますよね」
「我輩としては、思ったことを素直にお伝えしているだけなのですが」
「それが困るんです。……少し、恥ずかしいですから」
その答えを聞いた瞬間、スカリーは少しだけ言葉を詰まらせ、それから可笑しそうに口元を緩めた。
「失礼、ななしさんがそのような反応をされるとは思わず」
「からかってます?」
「まさか。可愛らしいと思っただけですよ」
「もう……、そういうところです」
スカリーは少しだけ目を細め、静かに言葉を続けた。
「静かで落ち着いた時間というのも、貴方となら案外心地よいものですね」
「意外です」
「意外……ですか?」
「ハロウィン以外のことを喋るスカリーさんって、あまり見慣れなくて」
「もちろんハロウィンについて語る時間は至高のものですが……大切な方と過ごす時間が楽しくないはずありません」
その言葉に、ななしの胸が跳ねた。
「大切な方って……」
「ええ。ななしさんのことです」
「……そんな顔で言われたら何も言えなくなります」
「それは困りましたね」
「全然困ってない顔をしてますよ?」
「おや、見抜かれてしまいましたか。我輩もまだまだ修行が足りないようです」
「ほんと、真面目な顔ですごく大胆なことを言う……」
「ですが、これが我輩の本心ですから」
返す言葉が見つからず、ななしは思わず視線を逸らした。
◇
「ななしさん。少しだけ、失礼してもよろしいでしょうか」
「何ですか?」
スカリーは問いに答える代わりに、そっとななしの手を取った。
細く冷ややかな指先が肌に触れる。
「びっくりしました」
「申し訳ありません、嫌でしたでしょうか」
「ううん、嫌じゃないですよ」
「……ありがとうございます。ななしさんが不快な思いをされることだけは避けたいので」
真っ直ぐな言葉に胸が温かくなると同時に、ふと過去の記憶が重なった。
「スカリーさん」
「なんでしょう」
「初対面の時に、いきなり手にキスしてきた人がそれ言います?」
「そう……でしたね。ですが、あの時とは我輩の気持ちの重みが違いますから」
「……」
「また黙ってしまわれましたね」
「だって、そういうことばかり言うから」
言い淀む姿を見て、スカリーは笑いを漏らした。
「ヒヒヒ……失礼、つい」
「スカリーさんがそんな風に笑うの、珍しいですね」
「ななしさんといると、どうにも感情の制御が難しくなってしまうようです」
◇
「そろそろ戻らなければなりませんね」
スカリーが名残惜しそうに呟き、足を止める。
「そうですね」
「……もう少しだけ、このままでいたいのですが」
「私もです」
「本当ですか?」
「はい」
「それは……大変嬉しいですね」
珍しく間を置かずに返事をされ、思わず微笑みがこぼれた。
「スカリーさんって、意外と素直なんですね」
「そうでしょうか?」
「はい」
「では、もう隠す必要もありませんね」
「え……?」
「我輩にとって、ななしさんと過ごす時間はとても大切なものなのです」
「……」
「これからも、こうして隣にいていただけますか」
「はい」
スカリーの口元が穏やかに緩んだ。
差し出された指先へ、今度はななしの側から手を重ねて握り返す。
「スカリーさんが、離したくなさそうにしていたので」
「……参りました。ななしさんには到底敵いませんね」
繋いだ手からじんわりと伝わる温度を感じながら、二人は静かに歩き出した。
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