ハーツラビュル
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薄暗い室内に二人の足音だけが静かに響いていた。
窓の外からは橙色の夕陽が差し込み、床に長い影を落としている。
ななしが机の上の資料を整え終え、一息ついた時だった。
背後から近づいてきた気配が、急に距離を詰めてくる。
「まだ帰んねーの?」
背中に直接響くような声に肩が大きく跳ねた。
振り向こうとした瞬間には、もう退路を塞がれている。
エースが両脇から机に手を突き、覆いかぶさるように顔を覗き込んできた。
「急にびっくりするじゃん……」
「オレ、ずっとここにいたんだけど」
悪戯っぽく口角を上げたエースが、じっと顔を見つめてくる。
近すぎる距離に居心地が悪くなり、視線を横へ逸らした。
「じゃあ、わたし先に帰るね」
「待てよ。まだ話終わってないでしょ」
身を引こうとする動きを察したのか、エースはさらに距離を縮めてきた。
逃げ場をなくされた状態のまま、じわじわと体温が伝わってくる。
「何か用でもあった?」
「用がないと引き留めちゃダメなわけ?」
答えに詰まっていると、エースの指先が頬をかすめ、そのまま耳元へと滑り落ちた。
前髪を払う振りをして、耳たぶにそっと触れられる。
「ちょっと、エース……」
「何?」
「何って……」
「耳まで真っ赤になってんじゃん」
くすくすと笑う吐息が耳元をくすぐった。
ゾクリとした感覚が背筋を駆け抜け、思わず肩をすくめてしまう。
「ちょっと、からかわないでよ」
「別にからかってないって」
「嘘ばっかり」
「マジで可愛いと思って言ってるし」
耳の裏から首筋にかけて、柔らかな唇がかすめるように触れた。
その刺激に声が出そうになり、慌てて両手で口元を覆う。
「なにガードしてんの」
「だって……っ」
「声、我慢しなくていいのに」
「……っ」
「可愛いからもっと聞かせてよ」
耳元で囁かれた低く甘い声に頭の中が痺れるような感覚に襲われる。
吐息が肌を滑るたびに、体中の熱が集まっていくようだった。
「……無理だから」
「無理? なにが?」
「そういうの、無理」
「じゃあどういうのならいいの?」
屁理屈のような返答に反論しようとしたが、口を覆っていた手首を掴まれ、優しく横へと退けられた。
「逃げようとしても無駄だからね」
指を絡められるように手を握り直され、さらに強く引き寄せられる。
互いの胸が触れ合うほどの近さでエースの呼吸を感じた。
「エース、あの……」
「なに?」
「誰か来たらどうするの」
「内側から鍵かけたし、大丈夫」
「え、いつの間に……」
「誰かさんが資料に夢中になってたとき」
あっけらかんと言い放つ顔には、余裕たっぷりの笑みが浮かんでいる。
いつの間にか完璧に退路を断たれていたことに気づき、小さく息を呑んだ。
「意地悪……」
「褒め言葉として受け取っとく」
お互いの顔が近づき、鼻先が触れそうな距離で止まる。
視線がぶつかり、逃げ場のない空気が二人の間に満ちていく。
「声、ずっと我慢するつもり?」
「……うん」
「ふーん。どこまで耐えられるか試してみる?」
耳の裏の柔らかい部分に、温かな唇が深く押し当てられた。
不意打ちの刺激に、押さえつけようとした吐息が小さく漏れてしまう。
「ぁ……っ」
「ほら、ちょっと漏れてた」
嬉しそうに囁くエースの手が、背中へと回される。
逃げられないように抱き寄せられ、完全に密着した状態になった。
「もっと力抜いてよ」
「むり……」
「本当、素直じゃないなあ」
首筋に落ちてくる唇の感触が、一度ごとに熱を帯びていく。
そのたびに身を捩ろうとするが、腕はびくともしない。
「ねえ、ななし」
「……なに」
「こっち見て」
促されるままに顔を上げると、目の前には熱を帯びた瞳があった。
いつもと違う真剣な眼差しに、胸が跳ね上がる。
「我慢しないで、オレのほう見てて」
「だって、恥ずかしい」
「恥ずかしがる必要ないでしょ」
頬を撫でる指先が心地よくて、自然と目を細めてしまう。
エースは満足そうに微笑むと、今度は唇を目指して顔を近づけてきた。
触れ合うだけの短い口づけが何度も重ねられる。
そのたびに小さく漏れる吐息を、エースは逃さず拾い上げていった。
「……エース……」
「ん?」
「これで、終わり……?」
「終わるわけないでしょ。まだ始まったばっかだっつーの」
耳元に囁く声はどこまでも甘く、断るための言葉を溶かしていく。
落ちていく夕陽が完全に沈むまで、二人の距離が離れることはなかった。
窓の外からは橙色の夕陽が差し込み、床に長い影を落としている。
ななしが机の上の資料を整え終え、一息ついた時だった。
背後から近づいてきた気配が、急に距離を詰めてくる。
「まだ帰んねーの?」
背中に直接響くような声に肩が大きく跳ねた。
振り向こうとした瞬間には、もう退路を塞がれている。
エースが両脇から机に手を突き、覆いかぶさるように顔を覗き込んできた。
「急にびっくりするじゃん……」
「オレ、ずっとここにいたんだけど」
悪戯っぽく口角を上げたエースが、じっと顔を見つめてくる。
近すぎる距離に居心地が悪くなり、視線を横へ逸らした。
「じゃあ、わたし先に帰るね」
「待てよ。まだ話終わってないでしょ」
身を引こうとする動きを察したのか、エースはさらに距離を縮めてきた。
逃げ場をなくされた状態のまま、じわじわと体温が伝わってくる。
「何か用でもあった?」
「用がないと引き留めちゃダメなわけ?」
答えに詰まっていると、エースの指先が頬をかすめ、そのまま耳元へと滑り落ちた。
前髪を払う振りをして、耳たぶにそっと触れられる。
「ちょっと、エース……」
「何?」
「何って……」
「耳まで真っ赤になってんじゃん」
くすくすと笑う吐息が耳元をくすぐった。
ゾクリとした感覚が背筋を駆け抜け、思わず肩をすくめてしまう。
「ちょっと、からかわないでよ」
「別にからかってないって」
「嘘ばっかり」
「マジで可愛いと思って言ってるし」
耳の裏から首筋にかけて、柔らかな唇がかすめるように触れた。
その刺激に声が出そうになり、慌てて両手で口元を覆う。
「なにガードしてんの」
「だって……っ」
「声、我慢しなくていいのに」
「……っ」
「可愛いからもっと聞かせてよ」
耳元で囁かれた低く甘い声に頭の中が痺れるような感覚に襲われる。
吐息が肌を滑るたびに、体中の熱が集まっていくようだった。
「……無理だから」
「無理? なにが?」
「そういうの、無理」
「じゃあどういうのならいいの?」
屁理屈のような返答に反論しようとしたが、口を覆っていた手首を掴まれ、優しく横へと退けられた。
「逃げようとしても無駄だからね」
指を絡められるように手を握り直され、さらに強く引き寄せられる。
互いの胸が触れ合うほどの近さでエースの呼吸を感じた。
「エース、あの……」
「なに?」
「誰か来たらどうするの」
「内側から鍵かけたし、大丈夫」
「え、いつの間に……」
「誰かさんが資料に夢中になってたとき」
あっけらかんと言い放つ顔には、余裕たっぷりの笑みが浮かんでいる。
いつの間にか完璧に退路を断たれていたことに気づき、小さく息を呑んだ。
「意地悪……」
「褒め言葉として受け取っとく」
お互いの顔が近づき、鼻先が触れそうな距離で止まる。
視線がぶつかり、逃げ場のない空気が二人の間に満ちていく。
「声、ずっと我慢するつもり?」
「……うん」
「ふーん。どこまで耐えられるか試してみる?」
耳の裏の柔らかい部分に、温かな唇が深く押し当てられた。
不意打ちの刺激に、押さえつけようとした吐息が小さく漏れてしまう。
「ぁ……っ」
「ほら、ちょっと漏れてた」
嬉しそうに囁くエースの手が、背中へと回される。
逃げられないように抱き寄せられ、完全に密着した状態になった。
「もっと力抜いてよ」
「むり……」
「本当、素直じゃないなあ」
首筋に落ちてくる唇の感触が、一度ごとに熱を帯びていく。
そのたびに身を捩ろうとするが、腕はびくともしない。
「ねえ、ななし」
「……なに」
「こっち見て」
促されるままに顔を上げると、目の前には熱を帯びた瞳があった。
いつもと違う真剣な眼差しに、胸が跳ね上がる。
「我慢しないで、オレのほう見てて」
「だって、恥ずかしい」
「恥ずかしがる必要ないでしょ」
頬を撫でる指先が心地よくて、自然と目を細めてしまう。
エースは満足そうに微笑むと、今度は唇を目指して顔を近づけてきた。
触れ合うだけの短い口づけが何度も重ねられる。
そのたびに小さく漏れる吐息を、エースは逃さず拾い上げていった。
「……エース……」
「ん?」
「これで、終わり……?」
「終わるわけないでしょ。まだ始まったばっかだっつーの」
耳元に囁く声はどこまでも甘く、断るための言葉を溶かしていく。
落ちていく夕陽が完全に沈むまで、二人の距離が離れることはなかった。
