サバナクロー
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「……さっきから何してるんですか」
ななしが声をかけると、ソファに深く座っていたレオナは読んでいた本から顔を上げた。
「何って、見りゃ分かるだろ」
「本を読んでるのは分かります」
「じゃあなんだよ」
「わざわざ隣で読む必要あります?」
「……別にいいだろ」
あまりにも自然に返されて、ななしは言葉に詰まる。
レオナはいつもそうだ。
自分の気分に正直で、興味があることには遠慮がない。
そのくせ肝心なところでははぐらかす。
「……絶対、何か企んでますよね」
「疑り深いな」
「レオナさん相手なら普通です」
その返事に、レオナの口元が少し上がった。
「へぇ。俺はそんなに信用ねぇのか」
「信用してないわけじゃないです」
「じゃあなんだ?」
「からかわれてる気はします」
「気のせいじゃねぇか?」
「……っ」
ななしが呆れたように息を吐くと、レオナは楽しそうに笑った。
◇
その日のレオナは、いつも以上に距離が近かった。
話しかければ返事はするものの、すぐに会話を終わらせようとはしない。
立ち上がろうとすれば「もう行くのか」と引き止めてくる。
「眠いなら休んだ方がいいんじゃないですか?」
「別に眠くねぇよ」
「さっきから何回もあくびしてるのに?」
「お前が気にしすぎなんだ」
「だって……」
「何だよ」
急に近くなった距離に、ななしの言葉が止まる。
「……近いです」
「そうか?」
「そうです」
「なら離れた方がいいか?」
そう言いながらも、レオナは動かなかった。
ななしが困った顔をすると、それを見て満足そうに目を細める。
「レオナさん、絶対わざとですよね」
「何がだ?」
「分かってるくせに」
「分からねぇな」
「嘘です」
レオナは小さく笑った。
普段なら余裕のある表情ばかり見せる人なのに、こういう時だけは楽しそうな表情を隠そうともしない。
「お前は本当に顔に出やすいな」
「誰のせいですか」
「俺のせいか?」
「他に誰がいるんですか」
「なら仕方ねぇな」
反省する気のない返事に、ななしは思わず笑ってしまった。
◇
しばらく他愛ない話をしていたが、ふと会話が途切れた。
その後も、どちらもすぐには口を開かなかった。
ななしが何となく視線を向けると、レオナと目が合った。
「……何ですか」
「別に」
「その顔、絶対何かあります」
「お前は俺を何だと思ってんだ」
「からかうのが好きな人です」
「……否定はしねぇ」
レオナはそう言って、少しだけ身を屈めた。
さらに距離が縮まり、ななしは反射的に肩を強張らせた。
「レオナさん?」
呼びかけると、レオナはすぐには答えなかった。
触れそうで触れない距離のまま、こちらの反応を見ている。
「……何で止まるんですか」
「何でだと思う?」
「分からないです」
「少しは考えろよ」
「そういうところ、ずるいです」
その返事を聞いたレオナは、口元をわずかに緩めた。
「困ってる顔も悪くねぇな」
「楽しんでるんですか?」
「まぁな」
「……ひどいです」
「そう言いながら逃げねぇじゃねぇか」
返す言葉がなくて、ななしは黙り込む。
レオナはそんな様子をしばらく眺めてから、さらに距離を縮めた。
「……レオナさん」
名前を呼ぶ声が少し揺れる。
それが聞こえたのか、レオナは満足そうに目を細めた。
「その顔、覚えとくか」
「わたしで遊んでません?」
「少しな」
「少しじゃないですよね?」
「ったく、細けぇな」
「大事なところです」
「そうかよ」
そう言った直後、レオナはようやく優しく口づけた。
一瞬で終わるはずの時間が、先ほどまでのやり取りのせいで妙に長く感じる。
離れたあと、ななしが何か言おうとすると、レオナが先に口を開いた。
「何だよ、その顔」
「……レオナさんが困らせたんじゃないですか」
「そうだったか?」
「そうです……」
「なら成功だな」
「成功って何ですか」
「お前が俺のことばっか考えてる時間が増えただろ?」
あまりにレオナらしい言い方で、ななしは返事に困った。
「レオナさんって、本当に意地悪ですよね」
「今さらか?」
「今さらですけど、改めて思いました」
「嫌か?」
少しだけ低くなった声に、ななしは顔を上げる。
からかうような態度の奥に、ちゃんと答えを待っている気配があった。
「……嫌なら、こんなところにいません」
そう言うと、レオナは満足したように笑った。
「本当にお前は素直じゃねぇな」
「レオナさんに言われたくないです」
「俺は素直だろ」
「どこがですか」
「会いたい時は呼ぶ」
「それだけですか?」
「十分すぎるだろ」
あまりにも堂々と言われて、ななしはまた笑ってしまう。
レオナはその様子を見て、少しだけ目を細めた。
「次はそんなに待たせねぇよ」
「本当ですか?」
「さぁな」
「信用できないです」
「でも、どうせ来るんだろ?」
返事を迷ったのは一瞬だった。
「……レオナさんが呼ぶなら」
「なら問題ねぇな」
レオナはそう言って確かめるようにもう一度距離を縮めた。
ななしが声をかけると、ソファに深く座っていたレオナは読んでいた本から顔を上げた。
「何って、見りゃ分かるだろ」
「本を読んでるのは分かります」
「じゃあなんだよ」
「わざわざ隣で読む必要あります?」
「……別にいいだろ」
あまりにも自然に返されて、ななしは言葉に詰まる。
レオナはいつもそうだ。
自分の気分に正直で、興味があることには遠慮がない。
そのくせ肝心なところでははぐらかす。
「……絶対、何か企んでますよね」
「疑り深いな」
「レオナさん相手なら普通です」
その返事に、レオナの口元が少し上がった。
「へぇ。俺はそんなに信用ねぇのか」
「信用してないわけじゃないです」
「じゃあなんだ?」
「からかわれてる気はします」
「気のせいじゃねぇか?」
「……っ」
ななしが呆れたように息を吐くと、レオナは楽しそうに笑った。
◇
その日のレオナは、いつも以上に距離が近かった。
話しかければ返事はするものの、すぐに会話を終わらせようとはしない。
立ち上がろうとすれば「もう行くのか」と引き止めてくる。
「眠いなら休んだ方がいいんじゃないですか?」
「別に眠くねぇよ」
「さっきから何回もあくびしてるのに?」
「お前が気にしすぎなんだ」
「だって……」
「何だよ」
急に近くなった距離に、ななしの言葉が止まる。
「……近いです」
「そうか?」
「そうです」
「なら離れた方がいいか?」
そう言いながらも、レオナは動かなかった。
ななしが困った顔をすると、それを見て満足そうに目を細める。
「レオナさん、絶対わざとですよね」
「何がだ?」
「分かってるくせに」
「分からねぇな」
「嘘です」
レオナは小さく笑った。
普段なら余裕のある表情ばかり見せる人なのに、こういう時だけは楽しそうな表情を隠そうともしない。
「お前は本当に顔に出やすいな」
「誰のせいですか」
「俺のせいか?」
「他に誰がいるんですか」
「なら仕方ねぇな」
反省する気のない返事に、ななしは思わず笑ってしまった。
◇
しばらく他愛ない話をしていたが、ふと会話が途切れた。
その後も、どちらもすぐには口を開かなかった。
ななしが何となく視線を向けると、レオナと目が合った。
「……何ですか」
「別に」
「その顔、絶対何かあります」
「お前は俺を何だと思ってんだ」
「からかうのが好きな人です」
「……否定はしねぇ」
レオナはそう言って、少しだけ身を屈めた。
さらに距離が縮まり、ななしは反射的に肩を強張らせた。
「レオナさん?」
呼びかけると、レオナはすぐには答えなかった。
触れそうで触れない距離のまま、こちらの反応を見ている。
「……何で止まるんですか」
「何でだと思う?」
「分からないです」
「少しは考えろよ」
「そういうところ、ずるいです」
その返事を聞いたレオナは、口元をわずかに緩めた。
「困ってる顔も悪くねぇな」
「楽しんでるんですか?」
「まぁな」
「……ひどいです」
「そう言いながら逃げねぇじゃねぇか」
返す言葉がなくて、ななしは黙り込む。
レオナはそんな様子をしばらく眺めてから、さらに距離を縮めた。
「……レオナさん」
名前を呼ぶ声が少し揺れる。
それが聞こえたのか、レオナは満足そうに目を細めた。
「その顔、覚えとくか」
「わたしで遊んでません?」
「少しな」
「少しじゃないですよね?」
「ったく、細けぇな」
「大事なところです」
「そうかよ」
そう言った直後、レオナはようやく優しく口づけた。
一瞬で終わるはずの時間が、先ほどまでのやり取りのせいで妙に長く感じる。
離れたあと、ななしが何か言おうとすると、レオナが先に口を開いた。
「何だよ、その顔」
「……レオナさんが困らせたんじゃないですか」
「そうだったか?」
「そうです……」
「なら成功だな」
「成功って何ですか」
「お前が俺のことばっか考えてる時間が増えただろ?」
あまりにレオナらしい言い方で、ななしは返事に困った。
「レオナさんって、本当に意地悪ですよね」
「今さらか?」
「今さらですけど、改めて思いました」
「嫌か?」
少しだけ低くなった声に、ななしは顔を上げる。
からかうような態度の奥に、ちゃんと答えを待っている気配があった。
「……嫌なら、こんなところにいません」
そう言うと、レオナは満足したように笑った。
「本当にお前は素直じゃねぇな」
「レオナさんに言われたくないです」
「俺は素直だろ」
「どこがですか」
「会いたい時は呼ぶ」
「それだけですか?」
「十分すぎるだろ」
あまりにも堂々と言われて、ななしはまた笑ってしまう。
レオナはその様子を見て、少しだけ目を細めた。
「次はそんなに待たせねぇよ」
「本当ですか?」
「さぁな」
「信用できないです」
「でも、どうせ来るんだろ?」
返事を迷ったのは一瞬だった。
「……レオナさんが呼ぶなら」
「なら問題ねぇな」
レオナはそう言って確かめるようにもう一度距離を縮めた。
