ハーツラビュル
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「それでさ、あの時ほんとに驚いて」
「えっ、本当に?」
思わず笑い声が重なる。
話し相手の男子生徒が身振りを交えて話すたびにつられて肩が揺れた。
「次は絶対成功するって」
「応援してる」
そんな他愛もないやり取りだった。
その途中で視界の端に赤い髪が映る。
リドルは少し離れた場所で立ち止まりこちらを見ていた。
「……リドル先輩」
声をかけようとした瞬間だった。
すっと近寄ってきた彼は、何も言わずに腕をつかむ。
「えっ!?」
「いいから来るんだよ」
落ち着いた声なのに有無を言わせない調子だった。
「ごめんね、また今度!」
男子生徒へ慌てて手を振ると、そのまま歩き出すリドルについていく。
歩調はいつもより少しだけ速い。
腕を引かれたまま角を曲がると、ようやく彼が足を止めた。
「リドル先輩?」
「……」
「どうしたんですか?」
返事はない。
代わりに腕をつかんだまま、少しだけ視線を逸らす。
「何かありました?」
「いや…何も……」
「何か言いたそうな顔してますよ」
「そう見えるかい?」
「はい…」
短く答えると、リドルは眉を寄せた。
「キミは…」
そこで言葉が切れる。
何か言いたいのに飲み込んでしまったようだった。
「ボクを見つけたなら、声くらいかけてもよかったんじゃないかい」
「え?」
「さっき……」
「あ……見えてました?」
「見えていたさ」
「すみません、話が盛り上がってて」
「ずいぶん楽しそうだったようだけど」
「普通に話してただけなんですけど…」
「ボクにはそうは見えなかった」
ふいに腕をつかむ力が少し強まる。
痛いほどではないが、離す気がないのは伝わった。
「リドル先輩」
「何だい」
「もしかして、怒ってますか?」
「怒ってなどいないよ」
「ほんとですか?」
「ボクが嘘をついているとでも?」
「じゃあ、この腕は?」
「……」
沈黙が返ってきた。
その様子がおかしくて思わず笑ってしまう。
「笑うところじゃないだろう!」
「ごめんなさい」
「反省しているようには見えないのだけど」
「だって…」
笑いをこらえながら見上げる。
「リドル先輩が可愛いから」
「……は?」
ぴたりとリドルの動きが止まる。
「今、何とお言いだい?」
「リドル先輩が可愛いって」
「……っ!」
耳まで赤くなったリドルは咳払いをひとつした。
「そういうことを軽々しく言うものじゃないよ!」
「でも、本当に思ったから」
「……まったく」
珍しくリドルの歯切れが悪い。
いつもの堂々とした寮長とは少し違って見えた。
「リドル先輩」
「……何だい」
「もしかしてヤキモチですか?」
「……」
「違いました?」
「違うと言えば、キミは信じるのかい?」
「たぶん信じないですね」
「即答するんだね」
リドルは小さくため息をつく。
「キミが誰と話そうと自由なのはわかってるんだ」
「……」
「そんなことを止める権利、ボクにはない」
そこでまた言葉を探すように黙った。
照れくさそうに唇を結ぶ。
「でも……」
「でも…?」
「楽しそうに笑っている相手がボクじゃないと、胸のあたりが落ち着かなくなるんだ…」
リドルは少し間を置いてから、小さな声で続けた。
思いがけない言葉にななしは目を瞬かせる。
リドルは照れくさそうに目を逸らした。
「キミがあんなふうに笑うなら、その隣にいたかった」
「リドル先輩……」
「……情けないだろう?」
「そんなことないです」
ななしは首を横に振る。
「そんな顔しないでください」
「ボクは寮長なのに…」
「そこ、関係あります?」
「こんなことで余裕がなくなるなんて」
「でも、わたしは嬉しかったです」
「え?」
「先輩がこうして話してくれて、嬉しいんです」
リドルは少しだけ目を見開き、観念したように肩を落とす。
「……ななしには敵わないな」
「そうですか?」
「キミのことになると、少しくらい余裕がなくなるのは……許しておくれ」
言い終えたリドルは、照れ隠しのように視線を逸らした。
「えっ、本当に?」
思わず笑い声が重なる。
話し相手の男子生徒が身振りを交えて話すたびにつられて肩が揺れた。
「次は絶対成功するって」
「応援してる」
そんな他愛もないやり取りだった。
その途中で視界の端に赤い髪が映る。
リドルは少し離れた場所で立ち止まりこちらを見ていた。
「……リドル先輩」
声をかけようとした瞬間だった。
すっと近寄ってきた彼は、何も言わずに腕をつかむ。
「えっ!?」
「いいから来るんだよ」
落ち着いた声なのに有無を言わせない調子だった。
「ごめんね、また今度!」
男子生徒へ慌てて手を振ると、そのまま歩き出すリドルについていく。
歩調はいつもより少しだけ速い。
腕を引かれたまま角を曲がると、ようやく彼が足を止めた。
「リドル先輩?」
「……」
「どうしたんですか?」
返事はない。
代わりに腕をつかんだまま、少しだけ視線を逸らす。
「何かありました?」
「いや…何も……」
「何か言いたそうな顔してますよ」
「そう見えるかい?」
「はい…」
短く答えると、リドルは眉を寄せた。
「キミは…」
そこで言葉が切れる。
何か言いたいのに飲み込んでしまったようだった。
「ボクを見つけたなら、声くらいかけてもよかったんじゃないかい」
「え?」
「さっき……」
「あ……見えてました?」
「見えていたさ」
「すみません、話が盛り上がってて」
「ずいぶん楽しそうだったようだけど」
「普通に話してただけなんですけど…」
「ボクにはそうは見えなかった」
ふいに腕をつかむ力が少し強まる。
痛いほどではないが、離す気がないのは伝わった。
「リドル先輩」
「何だい」
「もしかして、怒ってますか?」
「怒ってなどいないよ」
「ほんとですか?」
「ボクが嘘をついているとでも?」
「じゃあ、この腕は?」
「……」
沈黙が返ってきた。
その様子がおかしくて思わず笑ってしまう。
「笑うところじゃないだろう!」
「ごめんなさい」
「反省しているようには見えないのだけど」
「だって…」
笑いをこらえながら見上げる。
「リドル先輩が可愛いから」
「……は?」
ぴたりとリドルの動きが止まる。
「今、何とお言いだい?」
「リドル先輩が可愛いって」
「……っ!」
耳まで赤くなったリドルは咳払いをひとつした。
「そういうことを軽々しく言うものじゃないよ!」
「でも、本当に思ったから」
「……まったく」
珍しくリドルの歯切れが悪い。
いつもの堂々とした寮長とは少し違って見えた。
「リドル先輩」
「……何だい」
「もしかしてヤキモチですか?」
「……」
「違いました?」
「違うと言えば、キミは信じるのかい?」
「たぶん信じないですね」
「即答するんだね」
リドルは小さくため息をつく。
「キミが誰と話そうと自由なのはわかってるんだ」
「……」
「そんなことを止める権利、ボクにはない」
そこでまた言葉を探すように黙った。
照れくさそうに唇を結ぶ。
「でも……」
「でも…?」
「楽しそうに笑っている相手がボクじゃないと、胸のあたりが落ち着かなくなるんだ…」
リドルは少し間を置いてから、小さな声で続けた。
思いがけない言葉にななしは目を瞬かせる。
リドルは照れくさそうに目を逸らした。
「キミがあんなふうに笑うなら、その隣にいたかった」
「リドル先輩……」
「……情けないだろう?」
「そんなことないです」
ななしは首を横に振る。
「そんな顔しないでください」
「ボクは寮長なのに…」
「そこ、関係あります?」
「こんなことで余裕がなくなるなんて」
「でも、わたしは嬉しかったです」
「え?」
「先輩がこうして話してくれて、嬉しいんです」
リドルは少しだけ目を見開き、観念したように肩を落とす。
「……ななしには敵わないな」
「そうですか?」
「キミのことになると、少しくらい余裕がなくなるのは……許しておくれ」
言い終えたリドルは、照れ隠しのように視線を逸らした。
