サバナクロー
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「……寒い」
毛布が少しだけ揺れ、小さくこぼれた声にレオナが目を開ける。
「なら潜っとけ」
「もう潜ってます」
「もっとだ」
「これ以上は無理です」
言い返すと毛布の端が引っ張られた。
「わっ」
「潜れるだろ」
「レオナさんが占領してるから無理」
「知らねぇな」
レオナはそう返すも少しだけ体勢をずらす。
そのぶん広くなった場所へ入り込むと、毛布の中が少し落ち着いた温度になった。
「今日、グリムが変なこと言ってたんです」
「またあいつか」
「パンを落としても三秒以内ならいけるって」
「短ぇな」
「芝生なら五秒らしいです」
「基準が雑すぎる」
「ですよね」
くすっと笑うとレオナも鼻で笑う。
「で、おまえはどうした」
「拾わないって言いました」
「まともじゃねぇか」
「でもグリムは真剣な顔で『オレ様の炎で焼けばだいたいいける』って」
笑いをこらえた声が近くで揺れた。
「焼けば何でも許されると思ってんのかあいつ」
「すごく自信満々でした」
「困った毛玉だな」
「困らせるという意味では、レオナさんも人のこと言えない気がします」
「……否定はできねぇな」
「ですよね」
「そこで嬉しそうに頷くな」
その返しが妙に早くて思わず吹き出した。
◇
静かになったと思えば今度はレオナが口を開いた。
「そういや、おまえ変な寝言いってたぞ」
「えっ」
「プリンは裏切らない」
「うそ」
「俺が冗談言うと思うか?」
「いや、レオナさんは言うでしょ」
「お前な」
「プリンの夢、見てたのかな」
「寝言の続きもある」
「なんて言ってました?」
「二個あるなら一個ください」
「言いそうで嫌です」
「だろ?」
「聞いてたなら起こしてくださいよ」
「あまりにも面白かったもんで、ついな」
「ひどい」
「寝言に返事したら続き聞けるか試そうと思った」
「試したんですか」
「何味だって聞いた」
「普通にプリンの味じゃないんですか?」
「返事はなかった」
どうしようもないくらいくだらないやり取りなのに、笑いがなかなか収まらない。
◇
毛布の中で足先が少し冷える。
もぞもぞ動くとレオナが面倒そうに眉を寄せた。
「落ち着きねぇな」
「足が冷たいんです」
「俺にどうしろと」
「……」
「おい、黙るなよ」
「どうしてもらおうか考えてました」
「嫌な予感しかしねぇな」
「レオナさん、靴下持ってきてください」
「却下だ」
「即答悲しい」
「動きたくねぇ」
「じゃあ我慢します」
「自分で取りにいけよ」
「それはちょっと難しいですね」
少し間が空いてからレオナがため息をつく。
「ほらよ」
毛布が持ち上がる。
「もっとこっちに寄れ」
「いいんですか?」
「寒いんだろ」
「ありがとうございます」
「礼はいい」
言葉どおり、それ以上何も言わずに目を閉じる。
それでも数秒後には、また口を開いた。
「レオナさん」
「今度は何だ」
「プリンの話したせいで食べたくなりました」
「だから寝言になるんだろ」
「明日買いに行きませんか」
「面倒だ」
「じゃあ一人で買ってこよ」
「俺の分も買ってこい」
「やっぱり食べたいんじゃないですか」
「聞こえなかったか? 面倒なんだ」
「うわ、ずるい」
「今更だろ?」
◇
少ししてからまた話題が変わる。
「レオナさんって、子どもの頃も寝起き悪かったんですか」
「覚えてねぇ」
「ほんとですか」
「多分」
「その返事、便利ですね」
「ああ、便利だぞ。大体乗り切れる」
「信用なくしますよ」
「実力で証明するからいいんだよ」
「さすがレオナ・キングスカラー」
「よく分かってんじゃねえか」
その一言だけは、いつもの調子なのに少し柔らかかった。
二人でまた笑い合い、毛布も一緒に揺れた。
◇
「今日一番くだらなかった話は何だ」
「うーん」
少し考えてから小さく笑う。
「芝生なら五秒です」
「たしかにくだらねぇ」
「レオナさんは」
「お前の寝言」
「プリンですか」
「いや、返事してくれると思った俺だ」
「次は返事しますね」
「寝てるだろ」
「難しいですかね?」
「いいからもう寝ろ」
「はい」
返事はしたものの、しばらくしてからまた笑いが込み上げる。
「今度は何だよ」
「思い出し笑いです」
「いいから早く寝ろ」
「レオナさんも笑ってますよ」
「まったく、俺の眠りを妨げるのはお前くらいだよ」
毛布の中でまた小さく笑い声が重なる。
次はどちらからともなく口を開き、くだらない話はもう少しだけ続きそうだった。
毛布が少しだけ揺れ、小さくこぼれた声にレオナが目を開ける。
「なら潜っとけ」
「もう潜ってます」
「もっとだ」
「これ以上は無理です」
言い返すと毛布の端が引っ張られた。
「わっ」
「潜れるだろ」
「レオナさんが占領してるから無理」
「知らねぇな」
レオナはそう返すも少しだけ体勢をずらす。
そのぶん広くなった場所へ入り込むと、毛布の中が少し落ち着いた温度になった。
「今日、グリムが変なこと言ってたんです」
「またあいつか」
「パンを落としても三秒以内ならいけるって」
「短ぇな」
「芝生なら五秒らしいです」
「基準が雑すぎる」
「ですよね」
くすっと笑うとレオナも鼻で笑う。
「で、おまえはどうした」
「拾わないって言いました」
「まともじゃねぇか」
「でもグリムは真剣な顔で『オレ様の炎で焼けばだいたいいける』って」
笑いをこらえた声が近くで揺れた。
「焼けば何でも許されると思ってんのかあいつ」
「すごく自信満々でした」
「困った毛玉だな」
「困らせるという意味では、レオナさんも人のこと言えない気がします」
「……否定はできねぇな」
「ですよね」
「そこで嬉しそうに頷くな」
その返しが妙に早くて思わず吹き出した。
◇
静かになったと思えば今度はレオナが口を開いた。
「そういや、おまえ変な寝言いってたぞ」
「えっ」
「プリンは裏切らない」
「うそ」
「俺が冗談言うと思うか?」
「いや、レオナさんは言うでしょ」
「お前な」
「プリンの夢、見てたのかな」
「寝言の続きもある」
「なんて言ってました?」
「二個あるなら一個ください」
「言いそうで嫌です」
「だろ?」
「聞いてたなら起こしてくださいよ」
「あまりにも面白かったもんで、ついな」
「ひどい」
「寝言に返事したら続き聞けるか試そうと思った」
「試したんですか」
「何味だって聞いた」
「普通にプリンの味じゃないんですか?」
「返事はなかった」
どうしようもないくらいくだらないやり取りなのに、笑いがなかなか収まらない。
◇
毛布の中で足先が少し冷える。
もぞもぞ動くとレオナが面倒そうに眉を寄せた。
「落ち着きねぇな」
「足が冷たいんです」
「俺にどうしろと」
「……」
「おい、黙るなよ」
「どうしてもらおうか考えてました」
「嫌な予感しかしねぇな」
「レオナさん、靴下持ってきてください」
「却下だ」
「即答悲しい」
「動きたくねぇ」
「じゃあ我慢します」
「自分で取りにいけよ」
「それはちょっと難しいですね」
少し間が空いてからレオナがため息をつく。
「ほらよ」
毛布が持ち上がる。
「もっとこっちに寄れ」
「いいんですか?」
「寒いんだろ」
「ありがとうございます」
「礼はいい」
言葉どおり、それ以上何も言わずに目を閉じる。
それでも数秒後には、また口を開いた。
「レオナさん」
「今度は何だ」
「プリンの話したせいで食べたくなりました」
「だから寝言になるんだろ」
「明日買いに行きませんか」
「面倒だ」
「じゃあ一人で買ってこよ」
「俺の分も買ってこい」
「やっぱり食べたいんじゃないですか」
「聞こえなかったか? 面倒なんだ」
「うわ、ずるい」
「今更だろ?」
◇
少ししてからまた話題が変わる。
「レオナさんって、子どもの頃も寝起き悪かったんですか」
「覚えてねぇ」
「ほんとですか」
「多分」
「その返事、便利ですね」
「ああ、便利だぞ。大体乗り切れる」
「信用なくしますよ」
「実力で証明するからいいんだよ」
「さすがレオナ・キングスカラー」
「よく分かってんじゃねえか」
その一言だけは、いつもの調子なのに少し柔らかかった。
二人でまた笑い合い、毛布も一緒に揺れた。
◇
「今日一番くだらなかった話は何だ」
「うーん」
少し考えてから小さく笑う。
「芝生なら五秒です」
「たしかにくだらねぇ」
「レオナさんは」
「お前の寝言」
「プリンですか」
「いや、返事してくれると思った俺だ」
「次は返事しますね」
「寝てるだろ」
「難しいですかね?」
「いいからもう寝ろ」
「はい」
返事はしたものの、しばらくしてからまた笑いが込み上げる。
「今度は何だよ」
「思い出し笑いです」
「いいから早く寝ろ」
「レオナさんも笑ってますよ」
「まったく、俺の眠りを妨げるのはお前くらいだよ」
毛布の中でまた小さく笑い声が重なる。
次はどちらからともなく口を開き、くだらない話はもう少しだけ続きそうだった。
