ハーツラビュル
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
昼休みの終わりを告げる鐘が鳴ってもデュースは珍しく席を立たなかった。
「デュース?」
「……ああ、悪い。ちょっと考え事してた」
「珍しいね」
「そうか?」
「うん」
そう言われてデュースは机の上のノートを閉じた。
「最近、エースにも似たようなこと言われた」
「何を?」
「ぼーっとしてるって」
「してるの?」
「……してるかもな」
答えながら視線が逸れる。
その反応が少しおかしくて思わず笑う。
「なんだよ」
「いや、本当にぼーっとしてるんだなって」
「笑うなよ」
「ごめんごめん」
デュースは小さくため息をついた。
「笑われるような理由じゃないんだけどな」
「言えない理由?」
「言えないわけじゃない。ただ……」
言葉が途切れ、そのまま数秒の沈黙が続く。
結局、デュースは首を振った。
「やっぱ今度にする」
「気になるんだけど」
「気にしなくていい」
「余計気になるよ」
「そういう顔するなって」
「どんな顔?」
「聞き出そうとしてる顔」
「してないよ」
「してる」
即答だった。
◇
「で? 結局なんだったんだ?」
放課後。
エースが机に頬杖をつきながら聞く。
「別に」
「別にじゃねえだろ」
「何もない」
「嘘つけ」
デュースは眉を寄せた。
「なんでそう思うんだよ」
「お前、分かりやすいから」
「は?」
「ななしが来た瞬間、顔変わったぞ」
「変わってない!」
「変わってたって」
「変わってない!」
二度目は少し大きな声だった。
周囲の視線が集まりデュースは咳払いをする。
エースは肩を震わせて笑った。
「なあデュース」
「なんだよ」
「好きなんだろ」
「っ……!」
「図星か」
「違う!」
「へえ」
「違うって言ってるだろ!」
「じゃあなんでそんな反応なんだよ」
「それは……」
言葉が詰まる。
エースは呆れた顔をした。
「自覚ないのが一番面倒なんだよなあ」
「だから違うって」
「はいはい」
「おい!」
「ま、とりあえず頑張れよ」
「何をだよ!」
返ってきたのは笑い声だけだった。
◇
「デュース」
名前を呼ばれて振り返る。
「ななし?」
「まだ帰ってなかったんだ」
「お前こそ」
「忘れ物取りに来たら見つけた」
「そうか」
短い沈黙。
先に口を開いたのはデュースだった。
「送っていく」
「え?」
「いや、別に深い意味じゃなくて」
言った直後にデュースは顔をしかめる。
「嬉しい」
「!」
「一緒に帰ろう、デュース」
デュースは数秒固まった。
「……ああ」
一緒に歩き始めるも、会話は途切れ途切れだった。
けれど不思議と気まずくはない。
「そういえば」
「ん?」
「ぼーっとしてるって聞いた」
「誰から」
「エース」
「あいつ……!」
「理由は?」
「…………」
「やっぱり秘密?」
「秘密っていうか」
デュースは前を向いたまま言う。
「考えてたんだよ」
「何を?」
「将来のこと」
予想外の答えだった。
「将来?」
「ああ」
「急に真面目だね」
「急じゃない」
デュースは少しだけ笑った。
「僕、昔よりはまともになったと思うんだ」
「うん」
「勉強もしてるし、約束も守るし、面倒事も前ほど起こさなくなった」
「知ってる」
「でも、まだ全然足りない」
足が止まる。
デュースは真っ直ぐこちらを見た。
「優秀なやつなんて周りにいくらでもいる」
「デュース?」
「僕はまだ胸張ってすごいって言えるような人間じゃない」
その声は静かだった。
冗談も照れ隠しもない本音だった。
「だからもっと頑張らないとって思うんだ」
「……うん」
「母さんにも心配かけたし」
ぽつりと落ちた言葉。
「今度は安心させたい」
「できるよ」
「そうかな」
「できる」
迷いなく返すななしの言葉にデュースは目を丸くした。
「なんでそんなに言い切れるんだよ」
「だってデュース頑張ってるから」
「……見てたのか」
「ちゃんと見てるよ」
「そっか」
デュースが小さく笑う。
その顔は少しだけ嬉しそうだった。
◇
数日後。
「デュース!」
「どうした?」
「ノートありがとう」
「別にそのくらい」
「助かった」
「ならよかった」
それだけの会話。
それだけなのにデュースは妙に機嫌が良かった。
「お前さあ」
隣からエースが呆れた声を出す。
「顔に出すぎ」
「何が」
「何がじゃないだろ」
「意味分かんねえ」
「はいはい」
エースは肩をすくめる。
「そのうち本人に気付かれるぞ」
「だから何の話だよ」
「お前の恋の話」
「違う!」
「三回目だぞその返事」
デュースは頭を抱えた。
◇
「デュース?」
「うわっ!」
「びっくりした」
「こっちの台詞だ!」
「呼んだのに返事なかったよ」
「……考え事してた」
「最近多いね」
「……多いな」
「将来のこと?」
「それもある」
「それも?」
デュースは困った顔をした。
「聞くな」
「聞いちゃ駄目なの?」
「駄目だ」
「即答」
「即答だ」
その返事がおかしくてななしは笑う。
デュースは少し視線を逸らした。
「笑うなって」
「だって」
「……本当に困るんだよ」
「そんなに?」
「ああ」
「わたしが原因だったりする?」
デュースが黙る。
沈黙が答えみたいだった。
「……デュース?」
「悪い」
「ううん」
「今のは忘れてくれ」
「無理かも」
「頼む」
「なんで?」
デュースは大きく息を吐いた。
「僕、自分でもよく分かってないんだ」
「何が?」
「お前のこと考えてる時間が増えた」
ななしの心臓が跳ねる。
「授業中とか」
「うん」
「飯食ってる時とか」
「うん」
「エースやグリムがうるさい時とか」
「それはいつもじゃない?」
「確かに」
二人で笑う。
笑ったあとデュースは真面目な顔に戻った。
「でもさ、」
「うん」
「それって簡単に口にしていいことじゃないと思うんだ」
「……」
「僕はまだ途中だから」
途中。
その言葉が胸に残る。
「もっとちゃんとした人間になって」
デュースは言葉を探すように続けた。
「誰かを幸せにできるって思えるくらいになって」
二人の視線が重なる。
「その時に言うべきなんじゃないかって」
「誰に?」
聞いた瞬間、デュースは困ったように笑った。
「……分かって聞いてるだろ」
「分からないから聞いてるの」
「嘘だ」
「本当」
「……本当、ずるいな」
◇
風が吹く。
しばらく誰も喋らなかった。
先に口を開いたのはデュースだった。
「今の僕じゃ、ななしを幸せにできる自信はない」
デュースは続ける。
「でも、他の奴に譲る気は全然ない」
「……」
「サラサラない」
言い切ったあとで我に返ったようにデュースは目を見開く。
「あ」
「……」
「違う、いや違わないけど」
「どっち?」
「違わない」
「うん」
「でも今のはその」
「告白?」
「っ……!」
顔が赤くなる。
「そうなるのか……?」
「ならないの?」
「そうか……」
デュースは額を押さえた。
「最悪だ」
「どうして?」
「もっと格好いい言い方とかあっただろ」
「十分かっこよかったよ」
「全然だ」
「わたしは嬉しかった」
デュースが顔を上げる。
「本当に?」
「うん」
「……困ったな」
「何が?」
「すげぇ嬉しい」
今度は隠さなかった。
「でもまだ待ってほしい」
「待つよ」
「簡単に言うな」
「簡単じゃないよ」
デュースは少しだけ笑った。
「僕、頑張るから」
「知ってる」
「ちゃんと胸張れるようになって」
「うん」
「その時、もう一回言わせてくれ」
「分かった」
「その時まで誰にも取られるつもりないからな」
「自信満々だね」
「そこだけはな」
「ふふ」
「笑うなって」
「だって嬉しいから」
その言葉にデュースは照れたように視線を逸らした。
けれど少しして、またこちらを見る。
「約束だぞ」
「うん」
「僕、本当に頑張るから」
「わたしも見てるし、一緒に頑張る」
「……それが一番頑張れる理由かもな」
夕方の空の下。
誰より近い場所はきっともう決まっていた。
「デュース?」
「……ああ、悪い。ちょっと考え事してた」
「珍しいね」
「そうか?」
「うん」
そう言われてデュースは机の上のノートを閉じた。
「最近、エースにも似たようなこと言われた」
「何を?」
「ぼーっとしてるって」
「してるの?」
「……してるかもな」
答えながら視線が逸れる。
その反応が少しおかしくて思わず笑う。
「なんだよ」
「いや、本当にぼーっとしてるんだなって」
「笑うなよ」
「ごめんごめん」
デュースは小さくため息をついた。
「笑われるような理由じゃないんだけどな」
「言えない理由?」
「言えないわけじゃない。ただ……」
言葉が途切れ、そのまま数秒の沈黙が続く。
結局、デュースは首を振った。
「やっぱ今度にする」
「気になるんだけど」
「気にしなくていい」
「余計気になるよ」
「そういう顔するなって」
「どんな顔?」
「聞き出そうとしてる顔」
「してないよ」
「してる」
即答だった。
◇
「で? 結局なんだったんだ?」
放課後。
エースが机に頬杖をつきながら聞く。
「別に」
「別にじゃねえだろ」
「何もない」
「嘘つけ」
デュースは眉を寄せた。
「なんでそう思うんだよ」
「お前、分かりやすいから」
「は?」
「ななしが来た瞬間、顔変わったぞ」
「変わってない!」
「変わってたって」
「変わってない!」
二度目は少し大きな声だった。
周囲の視線が集まりデュースは咳払いをする。
エースは肩を震わせて笑った。
「なあデュース」
「なんだよ」
「好きなんだろ」
「っ……!」
「図星か」
「違う!」
「へえ」
「違うって言ってるだろ!」
「じゃあなんでそんな反応なんだよ」
「それは……」
言葉が詰まる。
エースは呆れた顔をした。
「自覚ないのが一番面倒なんだよなあ」
「だから違うって」
「はいはい」
「おい!」
「ま、とりあえず頑張れよ」
「何をだよ!」
返ってきたのは笑い声だけだった。
◇
「デュース」
名前を呼ばれて振り返る。
「ななし?」
「まだ帰ってなかったんだ」
「お前こそ」
「忘れ物取りに来たら見つけた」
「そうか」
短い沈黙。
先に口を開いたのはデュースだった。
「送っていく」
「え?」
「いや、別に深い意味じゃなくて」
言った直後にデュースは顔をしかめる。
「嬉しい」
「!」
「一緒に帰ろう、デュース」
デュースは数秒固まった。
「……ああ」
一緒に歩き始めるも、会話は途切れ途切れだった。
けれど不思議と気まずくはない。
「そういえば」
「ん?」
「ぼーっとしてるって聞いた」
「誰から」
「エース」
「あいつ……!」
「理由は?」
「…………」
「やっぱり秘密?」
「秘密っていうか」
デュースは前を向いたまま言う。
「考えてたんだよ」
「何を?」
「将来のこと」
予想外の答えだった。
「将来?」
「ああ」
「急に真面目だね」
「急じゃない」
デュースは少しだけ笑った。
「僕、昔よりはまともになったと思うんだ」
「うん」
「勉強もしてるし、約束も守るし、面倒事も前ほど起こさなくなった」
「知ってる」
「でも、まだ全然足りない」
足が止まる。
デュースは真っ直ぐこちらを見た。
「優秀なやつなんて周りにいくらでもいる」
「デュース?」
「僕はまだ胸張ってすごいって言えるような人間じゃない」
その声は静かだった。
冗談も照れ隠しもない本音だった。
「だからもっと頑張らないとって思うんだ」
「……うん」
「母さんにも心配かけたし」
ぽつりと落ちた言葉。
「今度は安心させたい」
「できるよ」
「そうかな」
「できる」
迷いなく返すななしの言葉にデュースは目を丸くした。
「なんでそんなに言い切れるんだよ」
「だってデュース頑張ってるから」
「……見てたのか」
「ちゃんと見てるよ」
「そっか」
デュースが小さく笑う。
その顔は少しだけ嬉しそうだった。
◇
数日後。
「デュース!」
「どうした?」
「ノートありがとう」
「別にそのくらい」
「助かった」
「ならよかった」
それだけの会話。
それだけなのにデュースは妙に機嫌が良かった。
「お前さあ」
隣からエースが呆れた声を出す。
「顔に出すぎ」
「何が」
「何がじゃないだろ」
「意味分かんねえ」
「はいはい」
エースは肩をすくめる。
「そのうち本人に気付かれるぞ」
「だから何の話だよ」
「お前の恋の話」
「違う!」
「三回目だぞその返事」
デュースは頭を抱えた。
◇
「デュース?」
「うわっ!」
「びっくりした」
「こっちの台詞だ!」
「呼んだのに返事なかったよ」
「……考え事してた」
「最近多いね」
「……多いな」
「将来のこと?」
「それもある」
「それも?」
デュースは困った顔をした。
「聞くな」
「聞いちゃ駄目なの?」
「駄目だ」
「即答」
「即答だ」
その返事がおかしくてななしは笑う。
デュースは少し視線を逸らした。
「笑うなって」
「だって」
「……本当に困るんだよ」
「そんなに?」
「ああ」
「わたしが原因だったりする?」
デュースが黙る。
沈黙が答えみたいだった。
「……デュース?」
「悪い」
「ううん」
「今のは忘れてくれ」
「無理かも」
「頼む」
「なんで?」
デュースは大きく息を吐いた。
「僕、自分でもよく分かってないんだ」
「何が?」
「お前のこと考えてる時間が増えた」
ななしの心臓が跳ねる。
「授業中とか」
「うん」
「飯食ってる時とか」
「うん」
「エースやグリムがうるさい時とか」
「それはいつもじゃない?」
「確かに」
二人で笑う。
笑ったあとデュースは真面目な顔に戻った。
「でもさ、」
「うん」
「それって簡単に口にしていいことじゃないと思うんだ」
「……」
「僕はまだ途中だから」
途中。
その言葉が胸に残る。
「もっとちゃんとした人間になって」
デュースは言葉を探すように続けた。
「誰かを幸せにできるって思えるくらいになって」
二人の視線が重なる。
「その時に言うべきなんじゃないかって」
「誰に?」
聞いた瞬間、デュースは困ったように笑った。
「……分かって聞いてるだろ」
「分からないから聞いてるの」
「嘘だ」
「本当」
「……本当、ずるいな」
◇
風が吹く。
しばらく誰も喋らなかった。
先に口を開いたのはデュースだった。
「今の僕じゃ、ななしを幸せにできる自信はない」
デュースは続ける。
「でも、他の奴に譲る気は全然ない」
「……」
「サラサラない」
言い切ったあとで我に返ったようにデュースは目を見開く。
「あ」
「……」
「違う、いや違わないけど」
「どっち?」
「違わない」
「うん」
「でも今のはその」
「告白?」
「っ……!」
顔が赤くなる。
「そうなるのか……?」
「ならないの?」
「そうか……」
デュースは額を押さえた。
「最悪だ」
「どうして?」
「もっと格好いい言い方とかあっただろ」
「十分かっこよかったよ」
「全然だ」
「わたしは嬉しかった」
デュースが顔を上げる。
「本当に?」
「うん」
「……困ったな」
「何が?」
「すげぇ嬉しい」
今度は隠さなかった。
「でもまだ待ってほしい」
「待つよ」
「簡単に言うな」
「簡単じゃないよ」
デュースは少しだけ笑った。
「僕、頑張るから」
「知ってる」
「ちゃんと胸張れるようになって」
「うん」
「その時、もう一回言わせてくれ」
「分かった」
「その時まで誰にも取られるつもりないからな」
「自信満々だね」
「そこだけはな」
「ふふ」
「笑うなって」
「だって嬉しいから」
その言葉にデュースは照れたように視線を逸らした。
けれど少しして、またこちらを見る。
「約束だぞ」
「うん」
「僕、本当に頑張るから」
「わたしも見てるし、一緒に頑張る」
「……それが一番頑張れる理由かもな」
夕方の空の下。
誰より近い場所はきっともう決まっていた。
