サバナクロー
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植物園のガラス屋根越しに差し込む陽射しは肌にじっとりと張り付くような熱を孕んでいる。風に揺れて葉の擦れ合う音が静かな空間に微かに響いていた。
「……おい、じっとしてろ」
低い声がすぐ耳元でして、ななしは肩を強張らせた。
柔らかな芝生の上に直に座り込んでいるななしの太ももに、レオナは頭を乗せて完全に横たわっている。
「あの、レオナさん。さすがに重いんですけど……」
「あ? ったく、うるせえな。少しは静かに寝かせろ」
寝返りを打つようにしてレオナがななしのお腹のあたりに顔を埋めてくる。大きな身体が甘えるように密着してくるせいで体温がダイレクトに伝わってきた。
「寝るなら自分の寮の部屋で寝ればいいじゃないですか、せっかくの一人部屋なのに」
「ここが一番ちょうどいいんだよ。お前の柔らかさも含めてな」
「変なこと言わないでください」
むっとしてそっぽを向くと、レオナの大きな手がななしの手首を緩く掴んだ。
「逃げるなよ」
「逃げてません。ちょっと姿勢を変えようとしただけです」
「嘘つけ。顔が見えねえだろうが」
レオナは薄く目を開け下から覗き込むようにななしを見上げた。
その視線にはどこか獲物を品定めするような、あるいは単に玩具を弄ぶような特有の気だるさと鋭さが混ざり合っている。
「……そんなにじっと見られると、落ち着かないんですけど」
「じゃあ目ぇ瞑ってろ」
「そういう問題じゃなくて」
ため息をつくななしの指先をレオナは一本ずつなぞるように弄び始めた。
「お前、さっきから心臓の音がうるさいぞ」
「それは、レオナさんが急にこんなことするからで……」
「急でも何でもないだろ。俺がここにいる時点で、こうなることくらい予想しとけ」
傲慢極まりない台詞なのに、彼の口から出ると不思議な説得力を持ってしまう。ななしは掴まれていない方の手で、思わず自分の衣服の裾をぎゅっと握りしめた。
「いつもラギー先輩が探してますよ。今日も授業サボりましたよね?」
「気にする必要ないだろ」
「また留年しますよ」
「いいから無駄口叩いてないで、お前も横になれよ」
レオナがそう言ってななしの身体を自分のほうへと引き寄せる。これ以上距離が縮まればどうなるかは火を見るより明らかだった。
「無理です、起き上がれなくなります」
「起き上がる必要がどこにある。俺がここにいろっつってんだよ」
ニヤリと不敵に口元を歪め、レオナは掴んでいた手首をさらに手繰り寄せた。逆らう隙など与えない圧倒的な力が身体を傾かせる。
「あ……っ」
バランスを崩したななしの身体は、あっけなくレオナの胸元へと倒れ込んだ。想像以上に硬くて熱い胸元だった。
衣服越しに伝わる規則正しい鼓動が自分の慌ただしい心音と重なって、頭の芯がぼうっとしてくる。
「……言わんこっちゃない。急に引っ張るからですよ」
「倒れ込んできたのはお前だろ」
レオナは鼻で低く笑うと、背中に腕を回して逃げ道を塞ぐように引き寄せた。芝生の匂いと植物園の濃い緑の香りが彼の熱い体温に混ざり合って鼻腔をくすぐる。
「あの、レオナさん、これじゃ身動きが……」
「いいから大人しくしてろ」
耳元に吹きかけられる吐息が熱く、ななしは身を縮こまらせた。
レオナは満足そうに目を細めると、大きな手のひらでななしの背中を優しくなぞるように叩く。その大きな手が、まるで小さな子供をあやすかのようでひどく気恥ずかしい。
「……寝るんじゃないんですか?」
「寝る。だが、お前が動くから目が冴える」
「じゃあ、やっぱり離してください」
「断る。お前がここにいるのが一番落ち着くんだよ。……ほら、目を瞑れ」
有無を言わせない響きなのに、その声はひどく掠れていて、どこか甘えるような響きを帯びていた。普段の威圧的な態度からは想像もつかないほど今の彼は無防備で、そして酷く強引だ。
「レオナさんは、ずるいです」
「あ?」
「いつも自分のペースに巻き込むから」
「嫌なら最初からここに来なきゃよかっただろ。来たのはお前だ、ななし」
名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねた。
レオナは薄く目を開け、至近距離からじっとななしを見つめている。その瞳の奥にある熱に射抜かれて言葉が喉の奥につかえた。
「捕まった草食動物が、肉食獣の前で吠えても無駄だってこと、そろそろ覚えろ」
「わたしは別に、捕まったわけじゃ……」
「いいから、俺が飽きるまでここでじっとしてろ」
そう言ってレオナはななしの髪に指を絡め、顔をさらに近づけてきた。彼の唇がほんの数センチ先にある。お互いの吐息が混ざり合うほどの至近距離で植物園の静寂が遠のいていく。
「……本当に、寝るだけですか?」
「さあな。お前の態度次第だろ」
意地悪く微笑むレオナの胸に顔を埋めると、彼は満足そうに深く息を吐きさらに腕の力を強めた。ガラス天井から降り注ぐ陽射しの中、二人の時間は静かに、そして甘く溶けていくようだった。
「……おい、じっとしてろ」
低い声がすぐ耳元でして、ななしは肩を強張らせた。
柔らかな芝生の上に直に座り込んでいるななしの太ももに、レオナは頭を乗せて完全に横たわっている。
「あの、レオナさん。さすがに重いんですけど……」
「あ? ったく、うるせえな。少しは静かに寝かせろ」
寝返りを打つようにしてレオナがななしのお腹のあたりに顔を埋めてくる。大きな身体が甘えるように密着してくるせいで体温がダイレクトに伝わってきた。
「寝るなら自分の寮の部屋で寝ればいいじゃないですか、せっかくの一人部屋なのに」
「ここが一番ちょうどいいんだよ。お前の柔らかさも含めてな」
「変なこと言わないでください」
むっとしてそっぽを向くと、レオナの大きな手がななしの手首を緩く掴んだ。
「逃げるなよ」
「逃げてません。ちょっと姿勢を変えようとしただけです」
「嘘つけ。顔が見えねえだろうが」
レオナは薄く目を開け下から覗き込むようにななしを見上げた。
その視線にはどこか獲物を品定めするような、あるいは単に玩具を弄ぶような特有の気だるさと鋭さが混ざり合っている。
「……そんなにじっと見られると、落ち着かないんですけど」
「じゃあ目ぇ瞑ってろ」
「そういう問題じゃなくて」
ため息をつくななしの指先をレオナは一本ずつなぞるように弄び始めた。
「お前、さっきから心臓の音がうるさいぞ」
「それは、レオナさんが急にこんなことするからで……」
「急でも何でもないだろ。俺がここにいる時点で、こうなることくらい予想しとけ」
傲慢極まりない台詞なのに、彼の口から出ると不思議な説得力を持ってしまう。ななしは掴まれていない方の手で、思わず自分の衣服の裾をぎゅっと握りしめた。
「いつもラギー先輩が探してますよ。今日も授業サボりましたよね?」
「気にする必要ないだろ」
「また留年しますよ」
「いいから無駄口叩いてないで、お前も横になれよ」
レオナがそう言ってななしの身体を自分のほうへと引き寄せる。これ以上距離が縮まればどうなるかは火を見るより明らかだった。
「無理です、起き上がれなくなります」
「起き上がる必要がどこにある。俺がここにいろっつってんだよ」
ニヤリと不敵に口元を歪め、レオナは掴んでいた手首をさらに手繰り寄せた。逆らう隙など与えない圧倒的な力が身体を傾かせる。
「あ……っ」
バランスを崩したななしの身体は、あっけなくレオナの胸元へと倒れ込んだ。想像以上に硬くて熱い胸元だった。
衣服越しに伝わる規則正しい鼓動が自分の慌ただしい心音と重なって、頭の芯がぼうっとしてくる。
「……言わんこっちゃない。急に引っ張るからですよ」
「倒れ込んできたのはお前だろ」
レオナは鼻で低く笑うと、背中に腕を回して逃げ道を塞ぐように引き寄せた。芝生の匂いと植物園の濃い緑の香りが彼の熱い体温に混ざり合って鼻腔をくすぐる。
「あの、レオナさん、これじゃ身動きが……」
「いいから大人しくしてろ」
耳元に吹きかけられる吐息が熱く、ななしは身を縮こまらせた。
レオナは満足そうに目を細めると、大きな手のひらでななしの背中を優しくなぞるように叩く。その大きな手が、まるで小さな子供をあやすかのようでひどく気恥ずかしい。
「……寝るんじゃないんですか?」
「寝る。だが、お前が動くから目が冴える」
「じゃあ、やっぱり離してください」
「断る。お前がここにいるのが一番落ち着くんだよ。……ほら、目を瞑れ」
有無を言わせない響きなのに、その声はひどく掠れていて、どこか甘えるような響きを帯びていた。普段の威圧的な態度からは想像もつかないほど今の彼は無防備で、そして酷く強引だ。
「レオナさんは、ずるいです」
「あ?」
「いつも自分のペースに巻き込むから」
「嫌なら最初からここに来なきゃよかっただろ。来たのはお前だ、ななし」
名前を呼ばれた瞬間、心臓が跳ねた。
レオナは薄く目を開け、至近距離からじっとななしを見つめている。その瞳の奥にある熱に射抜かれて言葉が喉の奥につかえた。
「捕まった草食動物が、肉食獣の前で吠えても無駄だってこと、そろそろ覚えろ」
「わたしは別に、捕まったわけじゃ……」
「いいから、俺が飽きるまでここでじっとしてろ」
そう言ってレオナはななしの髪に指を絡め、顔をさらに近づけてきた。彼の唇がほんの数センチ先にある。お互いの吐息が混ざり合うほどの至近距離で植物園の静寂が遠のいていく。
「……本当に、寝るだけですか?」
「さあな。お前の態度次第だろ」
意地悪く微笑むレオナの胸に顔を埋めると、彼は満足そうに深く息を吐きさらに腕の力を強めた。ガラス天井から降り注ぐ陽射しの中、二人の時間は静かに、そして甘く溶けていくようだった。
