ディアソムニア
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
風がカーテンを静かに揺らし開け放たれた窓から月光が部屋の床に細長い白い帯を広げていた。夜の静けさは深く遠くでフクロウの鳴き声がかすかに響くだけだ。
部屋の中央に置かれたソファにななしは腰掛けていた。その隣、驚くほど近い距離にマレウスが座っている。彼はその大きな身体を少し折り曲げるようにしてななしの顔をじっと見つめていた。
「そんなにじっと見られると、落ち着かないんだけど」
ななしが少し身を縮めながら言うとマレウスの唇の端がかすかに上がった。
「そう固くなるな。こうして二人きりで過ごせる時間は、僕にとって非常に貴重なのだ」
「それはそうなんだけど……」
「顔が赤いぞ、ななし」
マレウスはそう言って長い指先でななしの頬に軽く触れた。彼の指先が今のななしにはひどく熱く感じられる。触れられた場所から、じわじわと体温が上がっていくようだった。
ななしは慌ててマレウスの手を優しく押し返した。
「それは、ツノ太郎が近くにいるからだよ」
「僕が近くにいると、顔が赤くなるのか?」
「……自覚がないなら、タチが悪いよ」
「感情がそのまま肌の色に出るとは、実に愛らしいな」
押し返された手を離すことなく、今度はななしの手をそっと包み込んだ。彼の掌は大きく、包み込まれるだけで守られているような安心感と、それ以上の緊張感が押し寄せてくる。
こうして二人だけで静かに過ごす時間は滅多にない。手を繋いだり、隣に座ったりするだけで、ななしにとっては心臓が痛くなるほどの出来事だった。
「ねえ、ツノ太郎」
「なんだ?」
「今日はずいぶん、甘えん坊だね」
ななしが少しからかうように言うと、マレウスは微かに眉をひそめた。機嫌を損ねたわけではなく、どう表現すべきか迷っているような、そんな表情だ。
「甘えている、か。そう見えるのなら否定はしない。僕はいつもななしに触れたいと思っている。これでも、普段はかなり自制しているつもりなのだがな」
「自制してたの?」
「信じていないような顔だな」
マレウスの顔がさらに近づく。吐息がななしの額に触れるほどの距離だ。
「ツノ太郎がそんな風に思ってくれてるなんて、なんだか不思議で」
「不思議なものか。恋人というものは互いに触れ合いたいと思うものだと、リリアも言っていた」
「そっか、リリア先輩が……」
「ななし」
マレウスの声が先ほどよりも一段と低くなる。
その響きは彼の胸の奥から直接響いてくるようだった。
「なに?」
「……一度、試してもいいだろうか」
「何を?」
問いかけながらもななしはその答えを本能的に察していた。マレウスの大きな手がななしの後頭部をそっと支えるように回り込む。逃げる隙など最初からなかったが、ななしに逃げる意思はなかった。
「……嫌なら僕を突き放してくれ」
突き放せるわけがない。
ななしが小さく目を閉じると、それが肯定のサインとなった。
ゆっくりとマレウスの顔が近づいてくる。次の瞬間、柔らかく、そして驚くほど熱いマレウスの唇がななしの唇に触れた。
それはほんの一瞬、触れるだけのキスだった。
小鳥が突つくような、ひどく慎重で大切に扱われたような感覚。マレウスは一度唇を離し少しだけ顔を引いてななしの様子を窺った。
「……ななし」
声はわずかに震えているように聞こえた。その表情はいつもの堂々としたものとは違い、どこか切なげで飢えているようだった。
「つ、ツノ太郎……」
「……すまない。一度だけで終わらせるつもりだったのだが」
マレウスの瞳の奥に光が灯る。彼を縛っていた理性の鎖が今の一瞬で音を立てて軋み始めたのが分かった。
「……これでは、全く足りない」
包み込まれていたななしの手首がマレウスの強い力によってソファへと優しく組み敷かれる。マレウスの身体がななしを覆い隠すようにして覆いかぶさってきた。
「ツノ太郎、ちょっと、まって――」
「お前がこんなに近くにいて、僕を受け入れたのだ。我慢などできるはずがないだろう」
ななしの手首を捉えているマレウスの指先は先ほどよりも明らかに力を増している。痛いほどではないが明確な独占欲の現れだった。
「……顔、すごく近いよ……」
ななしが呟くとマレウスの長い睫毛が微かに揺れた。
「嫌か? ならば僕を拒む言葉を口にすればいい。……今の僕がそれを聞き入れるかどうかは、また別の話だがな」
「それ、全然選択肢になってない」
「そうだな。僕は今、ひどく強欲になっている」
マレウスの唇の端が歪な弧を描く。それは周囲に見せる余裕に満ちたものではなく、目の前の存在をどうにかして繋ぎ止めたいという焦燥の混じったものだった。
再び二人の距離が完全にゼロになる。
今度のキスは先ほどの触れるだけのものとは全く違っていた。マレウスの唇がななしの唇を割るようにして深く重ねられる。
「……っ」
ななしの口から小さな吐息が漏れるとマレウスはその隙を逃さずに、さらに深く追いかけてきた。彼の舌先が掠めるたびななしの身体の芯を痺れるような感覚が駆け抜けていく。
マレウスはななしの呼吸を奪うように何度も角度を変えて唇を貪った。
ななしは必死にマレウスの胸元に手を添え、彼の存在を確かめるようにその衣類を強く握りしめた。マレウスの胸の鼓動が衣服越しにも尋常ではない速さで脈打っているのが伝わってくる。
ようやく唇が離れたとき二人の間には細い銀の糸が引いていた。
「はぁっ、……息、できない……」
ななしが肩を大きく上下させて呼吸を整えようとするが、マレウスはそれを待ってはくれなかった。彼の唇はそのままななしの目元、頬、そして柔らかい輪郭をなぞるようにして、ゆっくりと首筋へと流れていく。
「ツノ太郎、ちょっと、くすぐったい……」
「これは僕の理性を奪ったお前の責任だ」
首筋に落とされる熱い音にななしは思わず身をよじった。しかしその動きすらもマレウスの大きな身体によって容易く抑え込まれてしまう。
マレウスは再び顔を上げななしの瞳を見つめた。彼の呼吸もまた、普段の冷静さからは程遠いほどに荒くなっている。
「まだ足りないな。いくら重ねてもななしが僕の胸の内に完全に溶けてしまわない限り、この渇きは癒えそうにない」
「これ以上は、わたしがもたないよ……」
「もたなくていい。僕に全てを預ければいいさ」
マレウスの手がななしの頬を優しく逃がさないように挟み込む。
「ななし、もう一度だ」
「……ん」
ななしが小さく頷くとマレウスは満足げに目を細め、再度その唇を重ね合わせた。今度は先ほどよりも優しく慈しむような、けれど決して離さないという強い意志が込められた口づけだった。
窓の外では静寂な夜が二人の影を静かに見守るように、どこまでも深く続いていた。
部屋の中央に置かれたソファにななしは腰掛けていた。その隣、驚くほど近い距離にマレウスが座っている。彼はその大きな身体を少し折り曲げるようにしてななしの顔をじっと見つめていた。
「そんなにじっと見られると、落ち着かないんだけど」
ななしが少し身を縮めながら言うとマレウスの唇の端がかすかに上がった。
「そう固くなるな。こうして二人きりで過ごせる時間は、僕にとって非常に貴重なのだ」
「それはそうなんだけど……」
「顔が赤いぞ、ななし」
マレウスはそう言って長い指先でななしの頬に軽く触れた。彼の指先が今のななしにはひどく熱く感じられる。触れられた場所から、じわじわと体温が上がっていくようだった。
ななしは慌ててマレウスの手を優しく押し返した。
「それは、ツノ太郎が近くにいるからだよ」
「僕が近くにいると、顔が赤くなるのか?」
「……自覚がないなら、タチが悪いよ」
「感情がそのまま肌の色に出るとは、実に愛らしいな」
押し返された手を離すことなく、今度はななしの手をそっと包み込んだ。彼の掌は大きく、包み込まれるだけで守られているような安心感と、それ以上の緊張感が押し寄せてくる。
こうして二人だけで静かに過ごす時間は滅多にない。手を繋いだり、隣に座ったりするだけで、ななしにとっては心臓が痛くなるほどの出来事だった。
「ねえ、ツノ太郎」
「なんだ?」
「今日はずいぶん、甘えん坊だね」
ななしが少しからかうように言うと、マレウスは微かに眉をひそめた。機嫌を損ねたわけではなく、どう表現すべきか迷っているような、そんな表情だ。
「甘えている、か。そう見えるのなら否定はしない。僕はいつもななしに触れたいと思っている。これでも、普段はかなり自制しているつもりなのだがな」
「自制してたの?」
「信じていないような顔だな」
マレウスの顔がさらに近づく。吐息がななしの額に触れるほどの距離だ。
「ツノ太郎がそんな風に思ってくれてるなんて、なんだか不思議で」
「不思議なものか。恋人というものは互いに触れ合いたいと思うものだと、リリアも言っていた」
「そっか、リリア先輩が……」
「ななし」
マレウスの声が先ほどよりも一段と低くなる。
その響きは彼の胸の奥から直接響いてくるようだった。
「なに?」
「……一度、試してもいいだろうか」
「何を?」
問いかけながらもななしはその答えを本能的に察していた。マレウスの大きな手がななしの後頭部をそっと支えるように回り込む。逃げる隙など最初からなかったが、ななしに逃げる意思はなかった。
「……嫌なら僕を突き放してくれ」
突き放せるわけがない。
ななしが小さく目を閉じると、それが肯定のサインとなった。
ゆっくりとマレウスの顔が近づいてくる。次の瞬間、柔らかく、そして驚くほど熱いマレウスの唇がななしの唇に触れた。
それはほんの一瞬、触れるだけのキスだった。
小鳥が突つくような、ひどく慎重で大切に扱われたような感覚。マレウスは一度唇を離し少しだけ顔を引いてななしの様子を窺った。
「……ななし」
声はわずかに震えているように聞こえた。その表情はいつもの堂々としたものとは違い、どこか切なげで飢えているようだった。
「つ、ツノ太郎……」
「……すまない。一度だけで終わらせるつもりだったのだが」
マレウスの瞳の奥に光が灯る。彼を縛っていた理性の鎖が今の一瞬で音を立てて軋み始めたのが分かった。
「……これでは、全く足りない」
包み込まれていたななしの手首がマレウスの強い力によってソファへと優しく組み敷かれる。マレウスの身体がななしを覆い隠すようにして覆いかぶさってきた。
「ツノ太郎、ちょっと、まって――」
「お前がこんなに近くにいて、僕を受け入れたのだ。我慢などできるはずがないだろう」
ななしの手首を捉えているマレウスの指先は先ほどよりも明らかに力を増している。痛いほどではないが明確な独占欲の現れだった。
「……顔、すごく近いよ……」
ななしが呟くとマレウスの長い睫毛が微かに揺れた。
「嫌か? ならば僕を拒む言葉を口にすればいい。……今の僕がそれを聞き入れるかどうかは、また別の話だがな」
「それ、全然選択肢になってない」
「そうだな。僕は今、ひどく強欲になっている」
マレウスの唇の端が歪な弧を描く。それは周囲に見せる余裕に満ちたものではなく、目の前の存在をどうにかして繋ぎ止めたいという焦燥の混じったものだった。
再び二人の距離が完全にゼロになる。
今度のキスは先ほどの触れるだけのものとは全く違っていた。マレウスの唇がななしの唇を割るようにして深く重ねられる。
「……っ」
ななしの口から小さな吐息が漏れるとマレウスはその隙を逃さずに、さらに深く追いかけてきた。彼の舌先が掠めるたびななしの身体の芯を痺れるような感覚が駆け抜けていく。
マレウスはななしの呼吸を奪うように何度も角度を変えて唇を貪った。
ななしは必死にマレウスの胸元に手を添え、彼の存在を確かめるようにその衣類を強く握りしめた。マレウスの胸の鼓動が衣服越しにも尋常ではない速さで脈打っているのが伝わってくる。
ようやく唇が離れたとき二人の間には細い銀の糸が引いていた。
「はぁっ、……息、できない……」
ななしが肩を大きく上下させて呼吸を整えようとするが、マレウスはそれを待ってはくれなかった。彼の唇はそのままななしの目元、頬、そして柔らかい輪郭をなぞるようにして、ゆっくりと首筋へと流れていく。
「ツノ太郎、ちょっと、くすぐったい……」
「これは僕の理性を奪ったお前の責任だ」
首筋に落とされる熱い音にななしは思わず身をよじった。しかしその動きすらもマレウスの大きな身体によって容易く抑え込まれてしまう。
マレウスは再び顔を上げななしの瞳を見つめた。彼の呼吸もまた、普段の冷静さからは程遠いほどに荒くなっている。
「まだ足りないな。いくら重ねてもななしが僕の胸の内に完全に溶けてしまわない限り、この渇きは癒えそうにない」
「これ以上は、わたしがもたないよ……」
「もたなくていい。僕に全てを預ければいいさ」
マレウスの手がななしの頬を優しく逃がさないように挟み込む。
「ななし、もう一度だ」
「……ん」
ななしが小さく頷くとマレウスは満足げに目を細め、再度その唇を重ね合わせた。今度は先ほどよりも優しく慈しむような、けれど決して離さないという強い意志が込められた口づけだった。
窓の外では静寂な夜が二人の影を静かに見守るように、どこまでも深く続いていた。
