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放課後の図書室は驚くほど静まり返っていた。
窓の外からは運動部の威勢のいい声が微かに響いてくるが、室内には紙をめくる音だけが満ちている。
「ジェイド先輩、この資料について教えて欲しいんですけど」
ななしが机の上に広げたのは魔法薬学の分厚いレポートだった。指差された箇所の文字を覗き込むようにしてジェイドが隣に腰を下ろす。
「ここですか? 確かに少々、言い回しが難解かもしれません。これは要するに菌類の自生環境における魔力の変動についての記述です」
「なるほど……。本を読んでも全然意味が分からなくて、困っていたんです」
「ふふ、無理もありません。この著者は少し偏屈な表現を好む方ですから。僕でよければ、いくらでもご説明いたしますよ」
「ありがとうございます。先輩がいてくれて本当に助かりました」
「あなたの役に立てるのなら、僕にとっては至上の喜びです。それに……こうして堂々とななしさんを独り占めできる時間でもありますから」
真面目な解説から一転して、その声音には明確な熱が混ざり始める。
「……あの、先輩。ここ、図書室ですから」
「安心してください。周囲を気にするほど悪いことはしません」
ジェイドは机の上に肘をつき楽しげに首を傾げた。その距離が先ほどよりも確実に近くなっている。
「そういうことを、さらっと言うのは反則だと思います」
「おや、本心ですよ? ななしさん、あなたは少し僕の忍耐力を買いかぶっている気がします」
「忍耐力ですか?」
「ええ。ななしさんとお付き合いを始めてからというもの、僕は随分と物分かりの良い先輩を演じているつもりなのですが……。どうにも自分の中にいる欲張りな部分が、それだけでは満足してくれないようでして」
ジェイドの手がそっとななしの髪に触れた。指先が毛先を弄るように滑り、そのまま頬へと移動する。
「初めてキスをした時……あなたはとても可愛らしかった」
「っ、その話をここで出すのは、やめてください……!」
ななしの顔が一気に赤く染まっていく。その様子を見てジェイドは満足そうに目を細めた。
「どうしてですか? 僕にとっては何度も思い返したい大切な思い出です。けれど同時に、困った呼び水にもなってしまいました」
「呼び水?」
「一度触れてしまえば次が欲しくなる。以前の僕なら、ただ見つめているだけでもそれなりに満足できていたはずなのですが。一度あの心地よさを知ってしまっては、もう引き返せません」
ジェイドの指先が頬から顎へと滑り、ゆっくりとななしの顔を上向かせる。
「ジェイド先輩……」
「あなたの呼ぶ僕の名前は、いつも以上に甘く聞こえますね。……ねえ、ななしさん。もう一度僕に触れさせてくれませんか」
「でも、誰か来たら……」
「大丈夫です。もし誰か来ても、僕がうまく追い払いますから。あなたはただ僕だけを見ていてください」
囁くような声と共にジェイドの顔が近づいてくる。逆らう隙など与えないような、けれどどこまでも優しい手つきで彼はななしの唇を塞いだ。
ほんの少し触れるだけの静かなキスだった。
図書室の静寂の中に衣類が擦れる音だけが微かに響く。ななしが驚いて目を見開いたのも束の間、ジェイドは一度唇を離し、すぐに角度を変えて今度は少し深く吸い上げるように唇を重ねてきた。
「……っ」
かすかな吐息が漏れる。
ななしの背中にジェイドの手が回り、引き寄せるようにして体に力が加えられた。机に挟まれた狭い空間の中で二人の距離は完全にゼロになる。
ジェイドの仕草はどこまでも丁寧で、慈しむような甘さに満ちていた。ゆっくりと時間をかけてななしの反応を確かめるように何度も何度も唇を重ねていく。
ようやく解放されたとき、ななしはすっかり息を乱していた。
「……本当に、容赦ないですね」
「これでも、かなり手加減をしたつもりなのですが……」
ジェイドは親指の腹でななしの少し赤くなった唇を優しくなぞった。その表情には普段の笑顔とは違う、どこか艶っぽい笑みが浮かんでいる。
「これ以上はレポートが終わりませんね……」
「ふふ、そうですね。あなたの課題を邪魔してしまっては、良き先輩の名が廃ります。では、続きをやりましょうか」
ジェイドは何事もなかったかのようにペンを持ち直し再びテキストに目を落とした。しかし、繋いだ手はしっかりと握られたままだ。
「あの、先輩。手が……」
「集中できませんか?」
「それは……できますけど」
「なら、このままで。僕の我が儘に少しだけ付き合ってください」
握られた手に少しだけ力がこもる。ジェイドの穏やかな横顔を見つめながら、ななしは早くなる鼓動を自覚していた。
静かな図書室の中で二人の時間だけが他よりもずっと甘く、ゆっくりと流れていく。レポートの文字を追いながらも、繋がれた手の熱がどうしても意識の大部分を占めていた。
「ななしさん、ここも少し補足が必要ですね」
「えっ? あ、はい」
「僕の顔に、何かついていましたか?」
「違います。ただ……今日の先輩、なんだかいつもと雰囲気が違う気がして……」
ななしが小さく呟くと、ジェイドは一瞬だけ驚いたように目を見張り、それから愛おしそうな笑みを浮かべた。
「自覚はありますよ。あなたに対してだけは、どうしても歯止めが効かなくなってしまう……ですが、僕のななしさんへの気持ちの底は、あなたが思っているよりもずっと深いですよ?」
ただ底なしの愛情と、まだまだ満たされないという独占欲だけが静かに透けて見えていた。
図書室に差し込む光は完全にオレンジ色へと変わり、本棚の影を長く濃く床に落としている。手元を照らすランプの灯りが、二人の輪郭を柔らかく浮かび上がらせていた。
「……これで最後ですね。お疲れ様でした、ななしさん」
ジェイドがさらさらと最後の注釈を書き込みペンをペン立てに戻した。綺麗に整えられたレポートの束をトントンと机に打ち付けて揃える。
「終わった……! ジェイド先輩、本当にありがとうございます。先輩がいなかったら今日中に終わりませんでした」
「礼には及びません。……さて、」
ジェイドは机の上に置いていたななしの手を、再びそっと包み込んだ。指先が滑り込むようにして、より深く指を絡め合わせる。
「先輩?」
「……ここからは、僕の時間にしていただいても構いませんよね?」
彼の声はどこまでも穏やかだが、その瞳の奥にある熱は先ほどよりも確実に増していた。逃がす気など最初から無いと言わんばかりの静かな圧力がそこにはある。
「ジェイド先輩、その……」
「言ったはずです。僕の底は、あなたが思っているよりもずっと深い、と」
ジェイドは手を伸ばしななしの背中にそっと回した。そのままゆっくりと引き寄せられ二人の肩がぴったりと触れ合う。
「ななしさん、あなたは本当に欲のない方だ。僕と目が合うだけで赤くなり、少し唇を重ねただけで息を乱してしまう。そんな初々しいあなたを見ていると胸が締め付けられると同時に……もっと困らせてしまいたくなる」
「……先輩って、結構意地悪ですよね」
「ええ、自覚はあります。特にあなたを前にした時の僕は自分でも驚くほど欲深くなってしまうようです」
ジェイドの顔が近づき吐息がななしの頬をかすめる。
心臓がうるさいくらいに脈打つのを感じながら、ななしはただ目の前の瞳を見つめることしかできなかった。
「……嫌ですか?」
低く耳元で囁かれた声に、ななしは小さく首を横に振る。
「嫌じゃないです。先輩がわたしのことをそうやって想ってくれるのは……すごく嬉しいです」
恥ずかしさに耐えながら紡いだ言葉に、ジェイドの息が微かに詰まる。一瞬彼の動きが止まり、それから深いキスが降ってきた。
「ん……っ」
先ほどの丁寧なキスとは違い、今度は何度も角度を変え深く貪るように唇が重ねられる。ななしの背中に回されたジェイドの手に力がこもり、彼の胸の中に閉じ込められるような形で抱きすくめられた。
唇が離れるたびに銀の糸が微かに引き、ななしが息を整える間もなく、すぐに次のキスが降ってくる。
「は、ぁ……ジェイド、せんぱ……」
「名前を呼ばないでください。これ以上、我慢ができなくなってしまいます」
ジェイドの声音は低くどこか掠れていた。彼はななしの首筋に額を預け深い呼吸を繰り返している。その身体が微かに震えているのが密着した肌から伝わってきた。
「先輩……?」
「本当に……あなたは、僕を狂わせるのが上手ですね」
ジェイドはゆっくりと顔を上げると、ななしの乱れた髪を優しく耳にかけた。その手つきは驚くほど繊細で壊れ物を扱うかのようだ。
「不思議ですね。一度触れ合えば、もっと近くにと願ってしまう。あなたの全てを僕だけで満たしてしまいたいと……そう思ってしまうのです」
「わたしも……同じですよ」
ななしはジェイドの胸元にそっと手を添え、少しだけ力を込めて彼を見上げた。
「先輩に触れられると、すごくドキドキするし、もっと一緒にいたいって思います。だから……我が儘なんかじゃありません」
「……やはり、あなたには敵いませんね」
ジェイドはななしの額に優しく愛おしそうにキスを落とした。そして最後に名残惜しそうに唇を重ねる。
「さて、そろそろ閉館時間ですね。名残惜しいですが、今日はここまでにしましょうか」
ジェイドはそう言って微笑むと、ななしの荷物を手際よくまとめ始めた。
「帰りは、もちろん僕が送らせていただきます。……まだ、もう少しだけ二人きりでいたいですから」
差し出されたジェイドの手にななしは迷わず自分の手を重ねる。
完全に日が落ちた図書室を後にする二人の影は、ぴったりと一つに重なっていた。
窓の外からは運動部の威勢のいい声が微かに響いてくるが、室内には紙をめくる音だけが満ちている。
「ジェイド先輩、この資料について教えて欲しいんですけど」
ななしが机の上に広げたのは魔法薬学の分厚いレポートだった。指差された箇所の文字を覗き込むようにしてジェイドが隣に腰を下ろす。
「ここですか? 確かに少々、言い回しが難解かもしれません。これは要するに菌類の自生環境における魔力の変動についての記述です」
「なるほど……。本を読んでも全然意味が分からなくて、困っていたんです」
「ふふ、無理もありません。この著者は少し偏屈な表現を好む方ですから。僕でよければ、いくらでもご説明いたしますよ」
「ありがとうございます。先輩がいてくれて本当に助かりました」
「あなたの役に立てるのなら、僕にとっては至上の喜びです。それに……こうして堂々とななしさんを独り占めできる時間でもありますから」
真面目な解説から一転して、その声音には明確な熱が混ざり始める。
「……あの、先輩。ここ、図書室ですから」
「安心してください。周囲を気にするほど悪いことはしません」
ジェイドは机の上に肘をつき楽しげに首を傾げた。その距離が先ほどよりも確実に近くなっている。
「そういうことを、さらっと言うのは反則だと思います」
「おや、本心ですよ? ななしさん、あなたは少し僕の忍耐力を買いかぶっている気がします」
「忍耐力ですか?」
「ええ。ななしさんとお付き合いを始めてからというもの、僕は随分と物分かりの良い先輩を演じているつもりなのですが……。どうにも自分の中にいる欲張りな部分が、それだけでは満足してくれないようでして」
ジェイドの手がそっとななしの髪に触れた。指先が毛先を弄るように滑り、そのまま頬へと移動する。
「初めてキスをした時……あなたはとても可愛らしかった」
「っ、その話をここで出すのは、やめてください……!」
ななしの顔が一気に赤く染まっていく。その様子を見てジェイドは満足そうに目を細めた。
「どうしてですか? 僕にとっては何度も思い返したい大切な思い出です。けれど同時に、困った呼び水にもなってしまいました」
「呼び水?」
「一度触れてしまえば次が欲しくなる。以前の僕なら、ただ見つめているだけでもそれなりに満足できていたはずなのですが。一度あの心地よさを知ってしまっては、もう引き返せません」
ジェイドの指先が頬から顎へと滑り、ゆっくりとななしの顔を上向かせる。
「ジェイド先輩……」
「あなたの呼ぶ僕の名前は、いつも以上に甘く聞こえますね。……ねえ、ななしさん。もう一度僕に触れさせてくれませんか」
「でも、誰か来たら……」
「大丈夫です。もし誰か来ても、僕がうまく追い払いますから。あなたはただ僕だけを見ていてください」
囁くような声と共にジェイドの顔が近づいてくる。逆らう隙など与えないような、けれどどこまでも優しい手つきで彼はななしの唇を塞いだ。
ほんの少し触れるだけの静かなキスだった。
図書室の静寂の中に衣類が擦れる音だけが微かに響く。ななしが驚いて目を見開いたのも束の間、ジェイドは一度唇を離し、すぐに角度を変えて今度は少し深く吸い上げるように唇を重ねてきた。
「……っ」
かすかな吐息が漏れる。
ななしの背中にジェイドの手が回り、引き寄せるようにして体に力が加えられた。机に挟まれた狭い空間の中で二人の距離は完全にゼロになる。
ジェイドの仕草はどこまでも丁寧で、慈しむような甘さに満ちていた。ゆっくりと時間をかけてななしの反応を確かめるように何度も何度も唇を重ねていく。
ようやく解放されたとき、ななしはすっかり息を乱していた。
「……本当に、容赦ないですね」
「これでも、かなり手加減をしたつもりなのですが……」
ジェイドは親指の腹でななしの少し赤くなった唇を優しくなぞった。その表情には普段の笑顔とは違う、どこか艶っぽい笑みが浮かんでいる。
「これ以上はレポートが終わりませんね……」
「ふふ、そうですね。あなたの課題を邪魔してしまっては、良き先輩の名が廃ります。では、続きをやりましょうか」
ジェイドは何事もなかったかのようにペンを持ち直し再びテキストに目を落とした。しかし、繋いだ手はしっかりと握られたままだ。
「あの、先輩。手が……」
「集中できませんか?」
「それは……できますけど」
「なら、このままで。僕の我が儘に少しだけ付き合ってください」
握られた手に少しだけ力がこもる。ジェイドの穏やかな横顔を見つめながら、ななしは早くなる鼓動を自覚していた。
静かな図書室の中で二人の時間だけが他よりもずっと甘く、ゆっくりと流れていく。レポートの文字を追いながらも、繋がれた手の熱がどうしても意識の大部分を占めていた。
「ななしさん、ここも少し補足が必要ですね」
「えっ? あ、はい」
「僕の顔に、何かついていましたか?」
「違います。ただ……今日の先輩、なんだかいつもと雰囲気が違う気がして……」
ななしが小さく呟くと、ジェイドは一瞬だけ驚いたように目を見張り、それから愛おしそうな笑みを浮かべた。
「自覚はありますよ。あなたに対してだけは、どうしても歯止めが効かなくなってしまう……ですが、僕のななしさんへの気持ちの底は、あなたが思っているよりもずっと深いですよ?」
ただ底なしの愛情と、まだまだ満たされないという独占欲だけが静かに透けて見えていた。
図書室に差し込む光は完全にオレンジ色へと変わり、本棚の影を長く濃く床に落としている。手元を照らすランプの灯りが、二人の輪郭を柔らかく浮かび上がらせていた。
「……これで最後ですね。お疲れ様でした、ななしさん」
ジェイドがさらさらと最後の注釈を書き込みペンをペン立てに戻した。綺麗に整えられたレポートの束をトントンと机に打ち付けて揃える。
「終わった……! ジェイド先輩、本当にありがとうございます。先輩がいなかったら今日中に終わりませんでした」
「礼には及びません。……さて、」
ジェイドは机の上に置いていたななしの手を、再びそっと包み込んだ。指先が滑り込むようにして、より深く指を絡め合わせる。
「先輩?」
「……ここからは、僕の時間にしていただいても構いませんよね?」
彼の声はどこまでも穏やかだが、その瞳の奥にある熱は先ほどよりも確実に増していた。逃がす気など最初から無いと言わんばかりの静かな圧力がそこにはある。
「ジェイド先輩、その……」
「言ったはずです。僕の底は、あなたが思っているよりもずっと深い、と」
ジェイドは手を伸ばしななしの背中にそっと回した。そのままゆっくりと引き寄せられ二人の肩がぴったりと触れ合う。
「ななしさん、あなたは本当に欲のない方だ。僕と目が合うだけで赤くなり、少し唇を重ねただけで息を乱してしまう。そんな初々しいあなたを見ていると胸が締め付けられると同時に……もっと困らせてしまいたくなる」
「……先輩って、結構意地悪ですよね」
「ええ、自覚はあります。特にあなたを前にした時の僕は自分でも驚くほど欲深くなってしまうようです」
ジェイドの顔が近づき吐息がななしの頬をかすめる。
心臓がうるさいくらいに脈打つのを感じながら、ななしはただ目の前の瞳を見つめることしかできなかった。
「……嫌ですか?」
低く耳元で囁かれた声に、ななしは小さく首を横に振る。
「嫌じゃないです。先輩がわたしのことをそうやって想ってくれるのは……すごく嬉しいです」
恥ずかしさに耐えながら紡いだ言葉に、ジェイドの息が微かに詰まる。一瞬彼の動きが止まり、それから深いキスが降ってきた。
「ん……っ」
先ほどの丁寧なキスとは違い、今度は何度も角度を変え深く貪るように唇が重ねられる。ななしの背中に回されたジェイドの手に力がこもり、彼の胸の中に閉じ込められるような形で抱きすくめられた。
唇が離れるたびに銀の糸が微かに引き、ななしが息を整える間もなく、すぐに次のキスが降ってくる。
「は、ぁ……ジェイド、せんぱ……」
「名前を呼ばないでください。これ以上、我慢ができなくなってしまいます」
ジェイドの声音は低くどこか掠れていた。彼はななしの首筋に額を預け深い呼吸を繰り返している。その身体が微かに震えているのが密着した肌から伝わってきた。
「先輩……?」
「本当に……あなたは、僕を狂わせるのが上手ですね」
ジェイドはゆっくりと顔を上げると、ななしの乱れた髪を優しく耳にかけた。その手つきは驚くほど繊細で壊れ物を扱うかのようだ。
「不思議ですね。一度触れ合えば、もっと近くにと願ってしまう。あなたの全てを僕だけで満たしてしまいたいと……そう思ってしまうのです」
「わたしも……同じですよ」
ななしはジェイドの胸元にそっと手を添え、少しだけ力を込めて彼を見上げた。
「先輩に触れられると、すごくドキドキするし、もっと一緒にいたいって思います。だから……我が儘なんかじゃありません」
「……やはり、あなたには敵いませんね」
ジェイドはななしの額に優しく愛おしそうにキスを落とした。そして最後に名残惜しそうに唇を重ねる。
「さて、そろそろ閉館時間ですね。名残惜しいですが、今日はここまでにしましょうか」
ジェイドはそう言って微笑むと、ななしの荷物を手際よくまとめ始めた。
「帰りは、もちろん僕が送らせていただきます。……まだ、もう少しだけ二人きりでいたいですから」
差し出されたジェイドの手にななしは迷わず自分の手を重ねる。
完全に日が落ちた図書室を後にする二人の影は、ぴったりと一つに重なっていた。
