オクタビネル
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放課後の柔らかな光が差し込む人気の無い廊下で、その腕に捕まった瞬間からいつもと何かが違っていた。
「見つけた、小エビちゃん」
背後から伸びてきた長い腕が、驚いて振り返る隙も与えずに身体をすっぽりと包み込む。フロイドの大きな手が肩に回され、そのまま逆らう余地もなく壁際へと誘導された。
「フロイド先輩? 急にどうしたんですか」
見上げる視線の先でフロイドはいつも通りの気まぐれな笑みを浮かべている。しかし、その双眸の奥にある熱の質が普段のそれとは明らかに異なっていた。
いつもなら「遊ぼー」と無邪気に絡んでくるはずなのに、今日の彼はどこか飢えた獣のような鋭い気配を隠そうともしていない。
「んー? 小エビちゃんにギューってしたくなっただけぇ」
「もう、びっくりしま……」
言葉の終わりを待たずにフロイドの顔が間近に迫った。
唇が重なる。それは、これまでに何度か交わした優しい口づけとは、最初から何もかもが違っていた。
最初からすべて埋め尽くすように深く、激しく貪るような質量を持って唇が押し当てられる。驚いて開いた口内に躊躇なく長い舌が滑り込んできた。
「フロイド先輩……」
「静かにしねぇと、誰か来ちゃうかもよ?」
意地悪く囁く声は低く掠れていて、鼓膜を直接揺らされる。
フロイドの手が頬を包み込み、逃がさないように角度を変えて深く口づけを重ねていく。上顎を愛撫され舌を絡め取られるたびに、脳がじわじわと痺れていくような感覚に襲われた。
「は……あ……」
「小エビちゃん、かわいい。もっと、ちょーだい」
息が続かない。
胸を小さく叩いて酸素を求めるがフロイドはその抵抗を気にも留めない様子で、さらに強く身体を抱き寄せた。密着した身体から彼の心臓がいつもより早く力強く脈打っているのが伝わってくる。
「まって、くるし……」
「やだ、まだ離してあげない」
一瞬だけ隙間ができた唇から銀の糸が引く。
それを見つめるフロイドの視線は、熱く酷くドロリと濁っていた。
再び塞がれる視界。今度はさっきよりも容赦がない。
「フロイド先輩、そこは……だめ」
「なんで? 小エビちゃんが声ガマンしたらいいんじゃね? それとも……ここでされるの、嫌?」
「そういう、ことじゃなくて……あ」
耳元で吐息混じりに囁かれ、首筋に鋭い痛みが走る。
彼が首の皮膚を小さく吸い上げ噛みついたのだ。
「いった……フロイド先輩、噛まないで……」
「えー、オレのモノだって分かっていいじゃん」
楽しそうに目を細めながらフロイドはまた唇を求めてくる。
いつもなら、こちらが少し困った顔をすればつまらないと引いてくれるはずだった。けれど今日の彼は、こちらの反応をすべて楽しむように、さらに深い悦びへと引きずり込もうとしている。
何度も何度も繰り返される口づけ。
完全にフロイドのペースに巻き込まれ足の力が抜けていく。壁に背中を預けていなければ、その場に崩れ落ちてしまいそうだった。それを察したのか、フロイドの腕がさらに強く腰を抱きすくめ、完全に彼にぶら下がるような形になる。
「あは、もう立てないの? 小エビちゃん、弱っちいねぇ」
「だれのせいだと……思ってるんですか」
「オレのせいでしょ? だからオレがちゃんと支えてあげる」
フロイドの指先が、今度はシャツのボタンに掛かる。
一つまた一つと手慣れた手つきでボタンが外されていく音が静かな廊下に小さく響いた。
「……待って、本当に、ここでは……」
「じゃあさ、オレの部屋行く? 今日はジェイドいないよ」
フロイドの顔に獲物を完全に追い詰めたような、妖しくも美しい微笑みが浮かんだ。
その問いに応える言葉を紡ぐよりも早く、彼は再び逃げ道を塞ぐように唇を重ねてきたのだった。
廊下の薄暗がりに溶けるような深い口づけがようやく離れたとき、お互いの荒い吐息だけが空間を満たしていた。フロイドはブレザーの隙間から、半分ほどボタンの外れたシャツの胸元へ視線を落とす。
「もう限界。ここじゃ落ち着いて食べられないし」
満足げに目を細めたフロイドは力が入らない身体を軽々と抱き上げた。驚いて声を上げそうになるのを、彼は楽しそうに鼻歌で遮る。誰もいない夕暮れの渡り廊下を軽快に進み、そのままオクタヴィネル寮の彼の部屋へと連れ去った。
静寂に包まれた部屋の扉が閉まった瞬間、カチリと鍵の閉まる音が響く。
ベッドの端に下ろされた途端、フロイドの大きな質量が覆い被さるように迫ってきた。
「フロイド先輩、本当にジェイド先輩は……」
「だから、いないって言ったじゃん。今はオレと小エビちゃんだけ」
逃げ道を塞ぐように配置された両腕。その長い指先が今度はシャツの残りのボタンを躊躇なく外していく。
露わになった鎖骨のあたりに、フロイドは熱い額を押し当てて深く息を吐き出した。
「ずっと、こうしたかった。小エビちゃんがオレのことばっか考えるようにしたかった」
言葉を失って固まるこちらの様子を、フロイドは楽しげに覗き込んでくる。
フロイドが不敵に笑うと、再び唇が重ねられた。
先ほどまでの廊下でのキスよりもさらに深く、容赦のない熱が流れ込んでくる。舌と舌が不器用に絡み合い互いの唾液が熱を持って混ざり合う。息を吸うタイミングさえもフロイドに支配され、頭の芯が真っ白に染まっていく。
「ん……は……」
「ねぇ、小エビちゃんも、もっとオレに触って」
フロイドは強引に手を引き寄せ、自分の首の後ろへと回させた。触れた彼の肌は驚くほど熱を帯びていて、微かに震えている。いつも気まぐれで掴みどころのないフロイドが、今は自分を求めることだけに全神経を注いでいるという事実に胸の奥が甘く疼いた。
フロイドの熱い手が今度は腰をしっかりと掴んで引き寄せる。
肌に直接触れる手のひらの温度に身体が大きく跳ね上がった。
「っ、……そこ、は……」
「ここ? 気持ちいいの? 小エビちゃんのからだ、すげー熱いよ」
「ちがっ……フロイド先輩、が……」
「オレのせいにして逃げようとしないで」
低く弾むような声で囁きながら、フロイドは首筋から鎖骨へと何度も唇を滑らせていく。柔らかい皮膚を吸い上げ、時折いたずらに歯を立てるたびに、甘い刺激が全身を駆け抜けた。
「フロイド先輩……っ、もう、無理、です……」
「オレは、まだまだ全然足りないんだけど」
フロイドの大きな手のひらが、今度はシャツを完全に肩から押し下げ無防備な肌を容赦なく愛撫し始めた。指先が触れるたびに背筋に電流が走ったような感覚が押し寄せる。
「ん……」
「もっと鳴いてよ、小エビちゃん」
フロイドは満足そうに歪んだ笑みを浮かべ、さらに深く身体を密着させてきた。
シーツに沈み込む身体。どこからが自分の体温で、どこからが彼の熱なのかも分からない。ただ目の前にある大きな存在と、激しく繰り返される口づけの感覚だけが、確かな現実として脳を支配していた。
「小エビちゃんは、オレのこと好き?」
不意に口づけを離したフロイドが、至近距離で問いかけてくる。その声は、いつになく真剣で酷く甘く掠れていた。
「……すき、です……フロイド先輩」
掠れた声で答えるとフロイドは一瞬だけ目を見開き、それから今日一番の笑顔を見せる。
「オレも。小エビちゃんのこと、大好き」
その言葉を最後に再び視界がフロイドの熱で満たされる。
部屋の明かりも点けないまま、二人の甘く激しい時間は果てることなく続いていくのだった。
「見つけた、小エビちゃん」
背後から伸びてきた長い腕が、驚いて振り返る隙も与えずに身体をすっぽりと包み込む。フロイドの大きな手が肩に回され、そのまま逆らう余地もなく壁際へと誘導された。
「フロイド先輩? 急にどうしたんですか」
見上げる視線の先でフロイドはいつも通りの気まぐれな笑みを浮かべている。しかし、その双眸の奥にある熱の質が普段のそれとは明らかに異なっていた。
いつもなら「遊ぼー」と無邪気に絡んでくるはずなのに、今日の彼はどこか飢えた獣のような鋭い気配を隠そうともしていない。
「んー? 小エビちゃんにギューってしたくなっただけぇ」
「もう、びっくりしま……」
言葉の終わりを待たずにフロイドの顔が間近に迫った。
唇が重なる。それは、これまでに何度か交わした優しい口づけとは、最初から何もかもが違っていた。
最初からすべて埋め尽くすように深く、激しく貪るような質量を持って唇が押し当てられる。驚いて開いた口内に躊躇なく長い舌が滑り込んできた。
「フロイド先輩……」
「静かにしねぇと、誰か来ちゃうかもよ?」
意地悪く囁く声は低く掠れていて、鼓膜を直接揺らされる。
フロイドの手が頬を包み込み、逃がさないように角度を変えて深く口づけを重ねていく。上顎を愛撫され舌を絡め取られるたびに、脳がじわじわと痺れていくような感覚に襲われた。
「は……あ……」
「小エビちゃん、かわいい。もっと、ちょーだい」
息が続かない。
胸を小さく叩いて酸素を求めるがフロイドはその抵抗を気にも留めない様子で、さらに強く身体を抱き寄せた。密着した身体から彼の心臓がいつもより早く力強く脈打っているのが伝わってくる。
「まって、くるし……」
「やだ、まだ離してあげない」
一瞬だけ隙間ができた唇から銀の糸が引く。
それを見つめるフロイドの視線は、熱く酷くドロリと濁っていた。
再び塞がれる視界。今度はさっきよりも容赦がない。
「フロイド先輩、そこは……だめ」
「なんで? 小エビちゃんが声ガマンしたらいいんじゃね? それとも……ここでされるの、嫌?」
「そういう、ことじゃなくて……あ」
耳元で吐息混じりに囁かれ、首筋に鋭い痛みが走る。
彼が首の皮膚を小さく吸い上げ噛みついたのだ。
「いった……フロイド先輩、噛まないで……」
「えー、オレのモノだって分かっていいじゃん」
楽しそうに目を細めながらフロイドはまた唇を求めてくる。
いつもなら、こちらが少し困った顔をすればつまらないと引いてくれるはずだった。けれど今日の彼は、こちらの反応をすべて楽しむように、さらに深い悦びへと引きずり込もうとしている。
何度も何度も繰り返される口づけ。
完全にフロイドのペースに巻き込まれ足の力が抜けていく。壁に背中を預けていなければ、その場に崩れ落ちてしまいそうだった。それを察したのか、フロイドの腕がさらに強く腰を抱きすくめ、完全に彼にぶら下がるような形になる。
「あは、もう立てないの? 小エビちゃん、弱っちいねぇ」
「だれのせいだと……思ってるんですか」
「オレのせいでしょ? だからオレがちゃんと支えてあげる」
フロイドの指先が、今度はシャツのボタンに掛かる。
一つまた一つと手慣れた手つきでボタンが外されていく音が静かな廊下に小さく響いた。
「……待って、本当に、ここでは……」
「じゃあさ、オレの部屋行く? 今日はジェイドいないよ」
フロイドの顔に獲物を完全に追い詰めたような、妖しくも美しい微笑みが浮かんだ。
その問いに応える言葉を紡ぐよりも早く、彼は再び逃げ道を塞ぐように唇を重ねてきたのだった。
廊下の薄暗がりに溶けるような深い口づけがようやく離れたとき、お互いの荒い吐息だけが空間を満たしていた。フロイドはブレザーの隙間から、半分ほどボタンの外れたシャツの胸元へ視線を落とす。
「もう限界。ここじゃ落ち着いて食べられないし」
満足げに目を細めたフロイドは力が入らない身体を軽々と抱き上げた。驚いて声を上げそうになるのを、彼は楽しそうに鼻歌で遮る。誰もいない夕暮れの渡り廊下を軽快に進み、そのままオクタヴィネル寮の彼の部屋へと連れ去った。
静寂に包まれた部屋の扉が閉まった瞬間、カチリと鍵の閉まる音が響く。
ベッドの端に下ろされた途端、フロイドの大きな質量が覆い被さるように迫ってきた。
「フロイド先輩、本当にジェイド先輩は……」
「だから、いないって言ったじゃん。今はオレと小エビちゃんだけ」
逃げ道を塞ぐように配置された両腕。その長い指先が今度はシャツの残りのボタンを躊躇なく外していく。
露わになった鎖骨のあたりに、フロイドは熱い額を押し当てて深く息を吐き出した。
「ずっと、こうしたかった。小エビちゃんがオレのことばっか考えるようにしたかった」
言葉を失って固まるこちらの様子を、フロイドは楽しげに覗き込んでくる。
フロイドが不敵に笑うと、再び唇が重ねられた。
先ほどまでの廊下でのキスよりもさらに深く、容赦のない熱が流れ込んでくる。舌と舌が不器用に絡み合い互いの唾液が熱を持って混ざり合う。息を吸うタイミングさえもフロイドに支配され、頭の芯が真っ白に染まっていく。
「ん……は……」
「ねぇ、小エビちゃんも、もっとオレに触って」
フロイドは強引に手を引き寄せ、自分の首の後ろへと回させた。触れた彼の肌は驚くほど熱を帯びていて、微かに震えている。いつも気まぐれで掴みどころのないフロイドが、今は自分を求めることだけに全神経を注いでいるという事実に胸の奥が甘く疼いた。
フロイドの熱い手が今度は腰をしっかりと掴んで引き寄せる。
肌に直接触れる手のひらの温度に身体が大きく跳ね上がった。
「っ、……そこ、は……」
「ここ? 気持ちいいの? 小エビちゃんのからだ、すげー熱いよ」
「ちがっ……フロイド先輩、が……」
「オレのせいにして逃げようとしないで」
低く弾むような声で囁きながら、フロイドは首筋から鎖骨へと何度も唇を滑らせていく。柔らかい皮膚を吸い上げ、時折いたずらに歯を立てるたびに、甘い刺激が全身を駆け抜けた。
「フロイド先輩……っ、もう、無理、です……」
「オレは、まだまだ全然足りないんだけど」
フロイドの大きな手のひらが、今度はシャツを完全に肩から押し下げ無防備な肌を容赦なく愛撫し始めた。指先が触れるたびに背筋に電流が走ったような感覚が押し寄せる。
「ん……」
「もっと鳴いてよ、小エビちゃん」
フロイドは満足そうに歪んだ笑みを浮かべ、さらに深く身体を密着させてきた。
シーツに沈み込む身体。どこからが自分の体温で、どこからが彼の熱なのかも分からない。ただ目の前にある大きな存在と、激しく繰り返される口づけの感覚だけが、確かな現実として脳を支配していた。
「小エビちゃんは、オレのこと好き?」
不意に口づけを離したフロイドが、至近距離で問いかけてくる。その声は、いつになく真剣で酷く甘く掠れていた。
「……すき、です……フロイド先輩」
掠れた声で答えるとフロイドは一瞬だけ目を見開き、それから今日一番の笑顔を見せる。
「オレも。小エビちゃんのこと、大好き」
その言葉を最後に再び視界がフロイドの熱で満たされる。
部屋の明かりも点けないまま、二人の甘く激しい時間は果てることなく続いていくのだった。
