イグニハイド
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「……はぁ、マジで無理。なんで拙者がこんなところで、わざわざ対面でレクチャーなんてしなきゃいけないわけ? 普通に画面共有すれば秒で解決する案件なんですけど」
長い青色の髪を小さく揺らしながら、イデアは長い指で目元を覆った。液晶の光を反射する横顔には明らかな疲労と、それ以上の居心地の悪さが滲み出ている。
「そんなこと言わないでくださいよ。イデア先輩に直接教えてもらった方が、ずっと分かりやすいんです」
「それ、ただの気のせいでしょ」
「そんなことないです。本当に助かってます」
パソコンの画面に表示された複雑なプログラムの羅列を指差しながら、二人の距離は自然と狭まる。イデアはブツブツと文句を並べ立てながらも、キーボードを叩く指を止めない。
「ここ、この構文が完全に破綻してる。これじゃあ無限ループ突入でブラウザがクラッシュする未来しか見えない。ほら、ここをこうして……」
「あ、本当だ。消えちゃいました」
「消えたんじゃなくて、処理を正しくバイパスしたの。全く、ななし氏のこういう大雑把なところ、拙者の心臓に悪すぎるから勘弁してほしい」
呆れたように溜息をつくイデアだったが、その声のトーンはどこか柔らかい。ただ目の前の作業に没頭している。その横顔を見つめる視線に気づいたのか、イデアが不意に動きを止めた。
「な、何? 拙者の顔に何か付いてる?」
「いえ。いつもより先輩が穏やかだなと思って」
「ひっ!? ななな、何言ってるの!? そういう観察眼、マジで心臓に悪いからやめてくださらんか!」
イデアはガタッと椅子を引いて露骨に距離を取ろうとしたが、狭いスペースのせいで、それ以上後ろには下がれなかった。青い前髪の隙間から困惑と焦燥の入り混じった視線が向けられる。
「からかってないです。本当にそう思ったので」
「……ななし氏はさぁ、たまにそういう攻略対象キャラでも言わないようなセリフを平然と吐くよね」
「イデア先輩、本当に嫌なら次からはリモートにしますか?」
「………」
その問いかけに、イデアはすぐに答えなかった。
いつもなら「当然でしょ」と即答するはずの彼が、唇を噛んだまま視線を斜め下に落とす。液晶の青い光が白い肌を冷たく照らしているはずなのに、その耳たぶは微かに赤みを帯びていく。
「……別に、嫌とは言ってない」
「え?」
「聞こえなかったなら、もう言わない。拙者の貴重な音声リソースを無駄遣いさせないでほしい」
イデアはふいっと顔を背け、再びパソコンに視線を戻した。しかし、その指先はキーボードの上で迷子になったように彷徨っている。
「……なんか、空気重くない? これ、完全にイベント発生前の前兆演出じゃん。拙者、こういう展開は画面の向こう側だけでお腹いっぱいなんですけど」
「イベントって、なんですか」
「分かってて聞いてるなら、相当な策士だよ……. いや、天然でこれなら拙者じゃ太刀打ちできない……」
イデアが小さく呟き、ゆっくりと振り向いた。
言葉が途切れ、ただお互いの視線だけが薄暗闇の中で固まる。
「イデア先輩」
「……なに」
名前を呼ぶ声がいつもより低く響いた。
イデアの視線がパソコンの画面から、ゆっくりとななしの唇へと移動する。
「拙者、もう限界かもしれない……」
その言葉の直後、液晶の青白い光を遮るようにして、イデアの方から身を乗り出してきた。驚きで息を呑む隙さえ与えず、柔らかな唇が重ねられる。
ほんの数秒のことだったはずなのに、引き延ばされるような錯覚を覚える濃密な時間。冷徹に見える彼の体温が驚くほど熱く肌に伝わってきた。頭の芯が痺れるような感覚の中で、イデアの手が壊れやすいものを扱うようにそっと肩へ触れる。
重なり合っていた熱が、名残惜しそうに静かに離れていった。
「……っ」
イデアは弾かれたように身を引くと、片手で口元を覆い、そのまま完全にフリーズしてしまった。青い髪の先端が激しい感情の揺れを示すように不規則に揺らめいている。
聞こえるのは室内に響く二人の不規則な呼吸音だけ。
イデアは完全に視線を彷徨わせ、何かを言おうとしては口を閉じ、完全に言葉を失っていた。
あまりの無言の長さに、もどかしさと焦燥感がじりじりと込み上げてくる。
「……イデア先輩、何か言ってくださいよ」
沈黙に耐えかねて絞り出したななしの声は微かに震えていた。
「……っ、そんなこと言われても、僕に何を期待してるわけ!?」
イデアは頭を抱え込むようにして、さらに隅へと身を縮めた。いつもなら止めどなく溢れ出るはずの煽りも、今は完全にエラーを起こしたように霧散している。耳まで真っ赤に染まった姿からは、ひどい動転が痛いほどに伝わってきた。
「イデア先輩が急にキスするから、わたしだってびっくりして……」
「それは、ななし氏が……そんな顔で見てくるからでしょ」
消え入りそうな声で呟きながら、イデアは覆っていた手の隙間から、じっとななしを見つめてきた。その瞳には、いつもの皮肉めいた色は一切ない。ただひたすらに熱を孕んだ真摯な感情が揺らめいている。
「……後悔、してない。してないけど、ななし氏がどう思ってるか怖くて、これ以上動けない」
「先輩……」
「僕、本当に余裕ないから。ななし氏が受け入れてくれたのが気まぐれだったりしたら、立ち直れない」
いつもなら絶対に他人に触れようとしない長い指が、今度は躊躇いがちにななしの制服の袖を掴んだ。微かに震えるその手からは、彼の張り詰めた緊張と、それ以上の強い執着が伝わってくる。
「気まぐれなんかじゃ、ありません。わたし、……先輩のことが好きです」
はっきりと紡がれたその告白にイデアの目が見開かれた。
一瞬の静寂の後、彼の中にあった戸惑いや恐れが堰を切ったような独占欲へと塗り替えられていくのが分かった。
「……それ、本当に言ってる?」
イデアの顔が、今度は確信を求めるようにゆっくりと近づいてくる。先ほどよりもずっと密やかで、完全に逃げ場を塞ぐような熱が二人の間に満ちていく。
「ななし氏がその気なら、僕の全部をあげる」
再び重ねられた唇は今度は確かめるように、そして自分のものだと刻みつけるように深く、甘く熱を帯びていった。
そうして深く重なり合っていた熱が、今度は名残惜しそうにゆっくりと離れていく。
「ん……、」
かすかに吐息が漏れると、イデアはななしの肩に額を預けるようにして深く頭を垂れた。青い髪が熱を持った肌にさらさらと触れる。じわじわと体温が伝わってくるほどの至近距離で、イデアの大きな背中が小さく上下していた。
「……もう、本当に無理。拙者の心臓、爆発寸前なんですけど……」
「イデア先輩……?」
「静かにして。今、ななし氏の声をこれ以上ダイレクトに脳に流し込まれたら、本当に歯止めが効かなくなりそう」
肩口から聞こえる声は低く、どこか甘やかに掠れている。服の上からでも分かるほど、ななしの袖を掴む彼の指先には、まだ微かな震えと絶対に離さないという強い力が込められていた。
ななしがそっと空いた手を伸ばし、イデアの背中に触れようとすると、イデアはびくりと大きく身体を跳ね上げた。
「ひっ!? な、なに、ななし氏、歯止めが効かなくなるって言ってるでしょ!」
「あ、すみません……」
「謝らないで! 違う、嫌とかじゃなくて……! むしろ、その……」
ガバッと顔を上げたイデアは、やはり耳の裏まで真っ赤に染まったまま、長い指で前髪をごしごしと掻き乱した。視線が泳ぎ、最終的にななしの少し首元のあたりで固定される。
「……僕から、行くのはよくても、ななし氏から来られるのは……その、要するに、めちゃくちゃに恥ずかしいわけ」
「わたしだって、すごく恥ずかしいです」
ぽつりと返したななしの言葉に、イデアは一瞬きょとんとした後、再び片手で口元を覆って視線を逸らした。しかし今度は完全に引きこもるような拒絶の気配はどこにもない。
液晶の青白い光が静かに二人を照らす中、イデアは小さく溜息をつき、今度は自分からななしの細い手首を優しく包み込んだ。そのままゆっくりと引き寄せられ、気づけば彼の胸の中にすっぽりと収まるような形で抱きしめられている。
「イデア先輩……?」
「……こうしてれば、ななし氏の顔が見えないから、少しは冷静になれる。……なれるはず」
イデアの胸の奥からトクトクと驚くほど速い鼓動が響いてくる。それはななし自身の鼓動の速さと、ほとんど同じだった。
「……本当に、僕なんかでいいわけ?」
「先輩がいいんです」
「……バグじゃないよね? 明日になったら『そんなこと言いましたっけ?』とか言って、記憶リセットされてない?」
「絶対に忘れません」
胸元に顔を埋めたままきっぱりと告げると、イデアの腕にぐっと力がこもった。壊れ物を扱うようだった先ほどまでの手つきとは違い、自身の腕の中に完全に閉じ込めてしまおうとするような、確かな独占欲。
「……言ったからね。もう、リセット不可だから。これからは、ななし氏の放課後のリソースは全部僕が占有するし、こうやって僕の目の届くところにいて」
「イデア先輩って、結構独占欲強いんですね」
「ひひっ、今更ですな」
世界から切り離されたような静寂の中で、二人はどちらからともなく小さく笑い合った。パソコンの画面が静かにスリープモードへと移行し室内の光が消える。
画面から放たれていた冷たくも熱い青色の残像。
それはまるで、二人の心を永遠に繋ぎ止める呪文のように暗闇の奥に深く刻まれていた。しかし互いを繋ぐ熱だけは、いつまでも消えることなく二人を包み込んでいた。
長い青色の髪を小さく揺らしながら、イデアは長い指で目元を覆った。液晶の光を反射する横顔には明らかな疲労と、それ以上の居心地の悪さが滲み出ている。
「そんなこと言わないでくださいよ。イデア先輩に直接教えてもらった方が、ずっと分かりやすいんです」
「それ、ただの気のせいでしょ」
「そんなことないです。本当に助かってます」
パソコンの画面に表示された複雑なプログラムの羅列を指差しながら、二人の距離は自然と狭まる。イデアはブツブツと文句を並べ立てながらも、キーボードを叩く指を止めない。
「ここ、この構文が完全に破綻してる。これじゃあ無限ループ突入でブラウザがクラッシュする未来しか見えない。ほら、ここをこうして……」
「あ、本当だ。消えちゃいました」
「消えたんじゃなくて、処理を正しくバイパスしたの。全く、ななし氏のこういう大雑把なところ、拙者の心臓に悪すぎるから勘弁してほしい」
呆れたように溜息をつくイデアだったが、その声のトーンはどこか柔らかい。ただ目の前の作業に没頭している。その横顔を見つめる視線に気づいたのか、イデアが不意に動きを止めた。
「な、何? 拙者の顔に何か付いてる?」
「いえ。いつもより先輩が穏やかだなと思って」
「ひっ!? ななな、何言ってるの!? そういう観察眼、マジで心臓に悪いからやめてくださらんか!」
イデアはガタッと椅子を引いて露骨に距離を取ろうとしたが、狭いスペースのせいで、それ以上後ろには下がれなかった。青い前髪の隙間から困惑と焦燥の入り混じった視線が向けられる。
「からかってないです。本当にそう思ったので」
「……ななし氏はさぁ、たまにそういう攻略対象キャラでも言わないようなセリフを平然と吐くよね」
「イデア先輩、本当に嫌なら次からはリモートにしますか?」
「………」
その問いかけに、イデアはすぐに答えなかった。
いつもなら「当然でしょ」と即答するはずの彼が、唇を噛んだまま視線を斜め下に落とす。液晶の青い光が白い肌を冷たく照らしているはずなのに、その耳たぶは微かに赤みを帯びていく。
「……別に、嫌とは言ってない」
「え?」
「聞こえなかったなら、もう言わない。拙者の貴重な音声リソースを無駄遣いさせないでほしい」
イデアはふいっと顔を背け、再びパソコンに視線を戻した。しかし、その指先はキーボードの上で迷子になったように彷徨っている。
「……なんか、空気重くない? これ、完全にイベント発生前の前兆演出じゃん。拙者、こういう展開は画面の向こう側だけでお腹いっぱいなんですけど」
「イベントって、なんですか」
「分かってて聞いてるなら、相当な策士だよ……. いや、天然でこれなら拙者じゃ太刀打ちできない……」
イデアが小さく呟き、ゆっくりと振り向いた。
言葉が途切れ、ただお互いの視線だけが薄暗闇の中で固まる。
「イデア先輩」
「……なに」
名前を呼ぶ声がいつもより低く響いた。
イデアの視線がパソコンの画面から、ゆっくりとななしの唇へと移動する。
「拙者、もう限界かもしれない……」
その言葉の直後、液晶の青白い光を遮るようにして、イデアの方から身を乗り出してきた。驚きで息を呑む隙さえ与えず、柔らかな唇が重ねられる。
ほんの数秒のことだったはずなのに、引き延ばされるような錯覚を覚える濃密な時間。冷徹に見える彼の体温が驚くほど熱く肌に伝わってきた。頭の芯が痺れるような感覚の中で、イデアの手が壊れやすいものを扱うようにそっと肩へ触れる。
重なり合っていた熱が、名残惜しそうに静かに離れていった。
「……っ」
イデアは弾かれたように身を引くと、片手で口元を覆い、そのまま完全にフリーズしてしまった。青い髪の先端が激しい感情の揺れを示すように不規則に揺らめいている。
聞こえるのは室内に響く二人の不規則な呼吸音だけ。
イデアは完全に視線を彷徨わせ、何かを言おうとしては口を閉じ、完全に言葉を失っていた。
あまりの無言の長さに、もどかしさと焦燥感がじりじりと込み上げてくる。
「……イデア先輩、何か言ってくださいよ」
沈黙に耐えかねて絞り出したななしの声は微かに震えていた。
「……っ、そんなこと言われても、僕に何を期待してるわけ!?」
イデアは頭を抱え込むようにして、さらに隅へと身を縮めた。いつもなら止めどなく溢れ出るはずの煽りも、今は完全にエラーを起こしたように霧散している。耳まで真っ赤に染まった姿からは、ひどい動転が痛いほどに伝わってきた。
「イデア先輩が急にキスするから、わたしだってびっくりして……」
「それは、ななし氏が……そんな顔で見てくるからでしょ」
消え入りそうな声で呟きながら、イデアは覆っていた手の隙間から、じっとななしを見つめてきた。その瞳には、いつもの皮肉めいた色は一切ない。ただひたすらに熱を孕んだ真摯な感情が揺らめいている。
「……後悔、してない。してないけど、ななし氏がどう思ってるか怖くて、これ以上動けない」
「先輩……」
「僕、本当に余裕ないから。ななし氏が受け入れてくれたのが気まぐれだったりしたら、立ち直れない」
いつもなら絶対に他人に触れようとしない長い指が、今度は躊躇いがちにななしの制服の袖を掴んだ。微かに震えるその手からは、彼の張り詰めた緊張と、それ以上の強い執着が伝わってくる。
「気まぐれなんかじゃ、ありません。わたし、……先輩のことが好きです」
はっきりと紡がれたその告白にイデアの目が見開かれた。
一瞬の静寂の後、彼の中にあった戸惑いや恐れが堰を切ったような独占欲へと塗り替えられていくのが分かった。
「……それ、本当に言ってる?」
イデアの顔が、今度は確信を求めるようにゆっくりと近づいてくる。先ほどよりもずっと密やかで、完全に逃げ場を塞ぐような熱が二人の間に満ちていく。
「ななし氏がその気なら、僕の全部をあげる」
再び重ねられた唇は今度は確かめるように、そして自分のものだと刻みつけるように深く、甘く熱を帯びていった。
そうして深く重なり合っていた熱が、今度は名残惜しそうにゆっくりと離れていく。
「ん……、」
かすかに吐息が漏れると、イデアはななしの肩に額を預けるようにして深く頭を垂れた。青い髪が熱を持った肌にさらさらと触れる。じわじわと体温が伝わってくるほどの至近距離で、イデアの大きな背中が小さく上下していた。
「……もう、本当に無理。拙者の心臓、爆発寸前なんですけど……」
「イデア先輩……?」
「静かにして。今、ななし氏の声をこれ以上ダイレクトに脳に流し込まれたら、本当に歯止めが効かなくなりそう」
肩口から聞こえる声は低く、どこか甘やかに掠れている。服の上からでも分かるほど、ななしの袖を掴む彼の指先には、まだ微かな震えと絶対に離さないという強い力が込められていた。
ななしがそっと空いた手を伸ばし、イデアの背中に触れようとすると、イデアはびくりと大きく身体を跳ね上げた。
「ひっ!? な、なに、ななし氏、歯止めが効かなくなるって言ってるでしょ!」
「あ、すみません……」
「謝らないで! 違う、嫌とかじゃなくて……! むしろ、その……」
ガバッと顔を上げたイデアは、やはり耳の裏まで真っ赤に染まったまま、長い指で前髪をごしごしと掻き乱した。視線が泳ぎ、最終的にななしの少し首元のあたりで固定される。
「……僕から、行くのはよくても、ななし氏から来られるのは……その、要するに、めちゃくちゃに恥ずかしいわけ」
「わたしだって、すごく恥ずかしいです」
ぽつりと返したななしの言葉に、イデアは一瞬きょとんとした後、再び片手で口元を覆って視線を逸らした。しかし今度は完全に引きこもるような拒絶の気配はどこにもない。
液晶の青白い光が静かに二人を照らす中、イデアは小さく溜息をつき、今度は自分からななしの細い手首を優しく包み込んだ。そのままゆっくりと引き寄せられ、気づけば彼の胸の中にすっぽりと収まるような形で抱きしめられている。
「イデア先輩……?」
「……こうしてれば、ななし氏の顔が見えないから、少しは冷静になれる。……なれるはず」
イデアの胸の奥からトクトクと驚くほど速い鼓動が響いてくる。それはななし自身の鼓動の速さと、ほとんど同じだった。
「……本当に、僕なんかでいいわけ?」
「先輩がいいんです」
「……バグじゃないよね? 明日になったら『そんなこと言いましたっけ?』とか言って、記憶リセットされてない?」
「絶対に忘れません」
胸元に顔を埋めたままきっぱりと告げると、イデアの腕にぐっと力がこもった。壊れ物を扱うようだった先ほどまでの手つきとは違い、自身の腕の中に完全に閉じ込めてしまおうとするような、確かな独占欲。
「……言ったからね。もう、リセット不可だから。これからは、ななし氏の放課後のリソースは全部僕が占有するし、こうやって僕の目の届くところにいて」
「イデア先輩って、結構独占欲強いんですね」
「ひひっ、今更ですな」
世界から切り離されたような静寂の中で、二人はどちらからともなく小さく笑い合った。パソコンの画面が静かにスリープモードへと移行し室内の光が消える。
画面から放たれていた冷たくも熱い青色の残像。
それはまるで、二人の心を永遠に繋ぎ止める呪文のように暗闇の奥に深く刻まれていた。しかし互いを繋ぐ熱だけは、いつまでも消えることなく二人を包み込んでいた。
