オクタビネル
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
夕暮れ時の気だるい光が差し込んでいた。
窓の外で揺れる木々の影が、床の上に長い斑模様を描いている。
古びたソファの上にフロイドは大きな身体を丸めるようにして寝転がっていた。長い脚を肘掛けに放り出しクッションを抱え込んでいる。
「ねー、小エビちゃん」
上から降ってきた声にななしは振り返る。
ソファの端からフロイドが首だけをこちらに傾けて覗き込んできていた。重力で少し流れた彼の髪が額にかかっている。
「なんですか、フロイド先輩」
「ひまだから、おもしろいことして」
「おもしろいことって言われても、困ります」
「えー。じゃあさ、オレの髪の毛結んでよ」
フロイドはそう言って自分の髪の毛を何本かつまんでみせた。
「先輩の髪、そこまで長くありませんよ」
「できるって。小エビちゃんの手、ちっさいから器用にできるでしょ」
フロイドはソファの上で寝返りを打ち完全にななしの方を向いた。そのまま、ずるずると上半身をソファの端まで滑らせてくる。
気がつけばフロイドの頭がななしのすぐ膝の横にあった。
「ほら、やって」
「……あみこみとかは無理ですからね」
ななしは少し呆れつつも、そっと手を伸ばした。フロイドの髪に触れると、思ったよりも柔らかい質感が指先をすり抜けていく。
その瞬間、フロイドがふっと目を細めた。
「ん、気持ちい」
「まだ何もしてないです。ただ触っただけです」
「触られただけで気持ちいーんだもん。小エビちゃんの手、なんか落ち着く」
フロイドは目を閉じたまま、猫のように頭をななしの膝の方へと寄せてくる。ななしの手が、一瞬止まる。
「フロイド先輩、近いです」
「いーじゃん。オレ、今すげーリラックスしてんの。邪魔しないで」
「邪魔してるのは先輩の方です」
口ではそう言いながらもななしは再びフロイドの髪に指を通した。耳の上のあたりから、細い毛束をいくつか掬い上げる。指先が彼の頭皮に掠れるたびにフロイドが小さく息を漏らすのが分かった。
部屋の隅で古い柱時計がカチカチと音を立てている。
外から聞こえていた鳥の声もいつの間にか止み、ラウンジの中は妙に静かになっていた。夕日のオレンジ色が二人の影を一つの大きな塊にして壁に映し出している。
「ねぇ、小エビちゃん」
フロイドが閉じていた目をゆっくりと開けた。
下から見上げるような形になるその視線が、ななしの手元から顔へと移っていく。
「なんですか」
「小エビちゃんってさ、オレといるとき、たまにすげー変な顔するよね」
「変な顔って、なんですかそれ」
「んー、なんか我慢してるみたいな顔」
フロイドの大きな手が、ななしの手を下から包み込むようにして握った。ひんやりとした指先がななしの肌に絡みつく。
握る力は驚くほど穏やかで、解こうと思えばすぐに解けるはずだった。それなのに、ななしの身体は硬直したように動かなくなってしまう。
「ほら今も。なんか緊張してんの?」
フロイドが握った手に少しだけ力を込めた。指の隙間に彼の指が深く入り込んでくる。
「……別に、緊張なんて」
「嘘。指、ちょっと震えてる」
楽しそうな声。しかし、その響きはいつものふざけたトーンよりもずっと低くラウンジの空気をじわじわと重くしていくようだった。
フロイドはソファの上で、さらに少しだけ身体を動かした。ななしの膝に彼の額が完全に預けられる。
見上げる彼の顔は、言い訳ができないほどに近かった。
「小エビちゃん」
名前を呼ぶフロイドの呼吸が、ななしの膝からお腹のあたりへと掠れるように伝わる。
ななしはフロイドの髪を掴んだままの手を、どうしても動かすことができなかった。胸の奥が、どくんと大きな音を立てて跳ねた。
フロイドは握ったままの手を離さない。
それどころか長い指をさらに深く絡ませ、ななしの手のひらを自分の胸元へと引き寄せた。制服の薄い生地越しに規則正しい、どこか高鳴っている鼓動がダイレクトに伝わってくる。
「フロイド先輩、あの……」
「ねぇ、髪の毛結ぶの、もうやめ。飽きちゃった」
「自分から言い出したんじゃないですか」
「それよりしたいことできた」
フロイドはソファの上で、ゆっくりと上半身を起こした。
横たわっていた大きな身体が目の前に迫り、夕日の光を遮るようにしてななしの上に影を落とす。床に座るななしを見下ろす形になったフロイドの身体は圧倒的な存在感を持ってそこにあった。
じわじわとラウンジの空気が熱を帯びていく。
フロイドは手を伸ばし、ななしの頬に触れた。大きな手のひらの熱が、冷めかけた部屋の温度とは裏腹に驚くほど熱く肌を灼く。親指の腹がななしの目元から頬のラインをゆっくりとなぞり、やがて唇の端に止まった。
「小エビちゃん、さっきからオレのこと全然見ないじゃん」
「見てます」
「見てねぇよ。目、泳ぎまくってる」
楽しげに細められた彼の視線が、ななしの輪郭をなぞるように動く。その視線に射すくめられるだけで、身体の奥が痺れるように熱くなった。呼吸がうまくできない。
フロイドの顔が、さらに一段と低くなる。
前髪がななしの額に触れ、お互いの吐息が完全に混ざり合う距離になった。フロイドから漂う気配が容赦なくななしの五感を満たしていく。意識のすべてが目の前にいる男だけに支配されていく感覚があった。
「フロイド先輩…」
懇願するようにその名前を呼ぶと、フロイドの口元がわずかに弧を描いた。
「なに? 嫌なら逃げていーよ。……逃げられるならね」
低く掠れた声が鼓膜を震わせる。
フロイドの顔が、さらに数ミリの距離まで近づいた。
お互いの境界線が曖昧になるほど、至近距離で重なり合う呼吸。フロイドの微かな吐息が唇に触れるたび、皮膚の裏側が痺れるような熱に侵されていく。
「小エビちゃん、目ぇ閉じて」
耳元で囁かれた低く掠れた声に、抗う術はなかった。
ななしがゆっくりと瞼を閉じると、視界が漆黒に染まる。その瞬間、触覚が極限まで跳ね上がった。
触れたのは驚くほど柔らかく、そして熱い質感だった。
最初はお互いの唇がそっと重なっただけの触れるような優しさ。フロイドの大きな身体からは想像もつかないほど慎重で、まるで壊れやすいガラス細工に触れるかのようなもどかしさがあった。
しかし、それも一瞬のことだった。
ななしの身体が小さく強張ったのを察したのか、フロイドは絡めていた手の指に、ぐっと力を込めた。逃がさないと誇示するように、深く強く。
「ん……」
ななしの口から零れかけた小さな吐息は、そのままフロイドの口内へと吸い込まれていく。
重ねられた唇の角度が変えられ、さらに深く隙間を埋めるように押し付けられた。唇と唇が擦れ合う微かな音が、遮断された視界の代わりに脳内の芯の部分へ直接響く。
フロイドの舌先がななしの唇の輪郭を優しくなぞり、やがてその熱い質量が、わずかに開いた隙間から内側へと滑り込んできた。
頭の芯がじわじわと融解していくような感覚。
経験したことのない濃密な熱が、口内から全身の血管を巡り指先までを焦がしていく。フロイドの舌が自分のそれに触れるたび、胸の奥が締め付けられるように疼いた。
頬を包み込んでいた彼の大きな手が、いつの間にかななしの後頭部へと回り、髪を優しく梳き上げながら自分のほうへと引き寄せている。拒むことなど最初から考えてもいなかった。
ただ、フロイドから与えられる圧倒的な熱量に溺れないよう、ななしは必死に彼の胸元の衣類を固く握りしめることしかできなかった。
何度目かの深い吸い込みのあと、濡れた音を立てて、ゆっくりと唇が離れていく。
「……はぁ、」
ななしが溢れ出た息を急に吸い込むと、フロイドはまだ名残惜しそうに、ななしの唇の端を自身の唇で軽く啄んだ。
ゆっくりと瞼を開けると、そこにはいつもの気まぐれな表情ではない、どこか熱を孕んだ潤んだ眼差しで自分を見つめるフロイドの顔があった。彼の端正な顔が夕闇の迫るラウンジの中で酷く艶っぽく映る。
「小エビちゃん、すげー熱い。……オレの、ぜんぶ移っちゃったみたい」
フロイドは満足そうに口元を歪めると、赤く色づいたななしの頬に、今度は自身の頬をぴったりと押し付けた。
二人の荒い呼吸だけが完全に日が落ちた部屋の中に、いつまでも重なり合って響いていた。
窓の外で揺れる木々の影が、床の上に長い斑模様を描いている。
古びたソファの上にフロイドは大きな身体を丸めるようにして寝転がっていた。長い脚を肘掛けに放り出しクッションを抱え込んでいる。
「ねー、小エビちゃん」
上から降ってきた声にななしは振り返る。
ソファの端からフロイドが首だけをこちらに傾けて覗き込んできていた。重力で少し流れた彼の髪が額にかかっている。
「なんですか、フロイド先輩」
「ひまだから、おもしろいことして」
「おもしろいことって言われても、困ります」
「えー。じゃあさ、オレの髪の毛結んでよ」
フロイドはそう言って自分の髪の毛を何本かつまんでみせた。
「先輩の髪、そこまで長くありませんよ」
「できるって。小エビちゃんの手、ちっさいから器用にできるでしょ」
フロイドはソファの上で寝返りを打ち完全にななしの方を向いた。そのまま、ずるずると上半身をソファの端まで滑らせてくる。
気がつけばフロイドの頭がななしのすぐ膝の横にあった。
「ほら、やって」
「……あみこみとかは無理ですからね」
ななしは少し呆れつつも、そっと手を伸ばした。フロイドの髪に触れると、思ったよりも柔らかい質感が指先をすり抜けていく。
その瞬間、フロイドがふっと目を細めた。
「ん、気持ちい」
「まだ何もしてないです。ただ触っただけです」
「触られただけで気持ちいーんだもん。小エビちゃんの手、なんか落ち着く」
フロイドは目を閉じたまま、猫のように頭をななしの膝の方へと寄せてくる。ななしの手が、一瞬止まる。
「フロイド先輩、近いです」
「いーじゃん。オレ、今すげーリラックスしてんの。邪魔しないで」
「邪魔してるのは先輩の方です」
口ではそう言いながらもななしは再びフロイドの髪に指を通した。耳の上のあたりから、細い毛束をいくつか掬い上げる。指先が彼の頭皮に掠れるたびにフロイドが小さく息を漏らすのが分かった。
部屋の隅で古い柱時計がカチカチと音を立てている。
外から聞こえていた鳥の声もいつの間にか止み、ラウンジの中は妙に静かになっていた。夕日のオレンジ色が二人の影を一つの大きな塊にして壁に映し出している。
「ねぇ、小エビちゃん」
フロイドが閉じていた目をゆっくりと開けた。
下から見上げるような形になるその視線が、ななしの手元から顔へと移っていく。
「なんですか」
「小エビちゃんってさ、オレといるとき、たまにすげー変な顔するよね」
「変な顔って、なんですかそれ」
「んー、なんか我慢してるみたいな顔」
フロイドの大きな手が、ななしの手を下から包み込むようにして握った。ひんやりとした指先がななしの肌に絡みつく。
握る力は驚くほど穏やかで、解こうと思えばすぐに解けるはずだった。それなのに、ななしの身体は硬直したように動かなくなってしまう。
「ほら今も。なんか緊張してんの?」
フロイドが握った手に少しだけ力を込めた。指の隙間に彼の指が深く入り込んでくる。
「……別に、緊張なんて」
「嘘。指、ちょっと震えてる」
楽しそうな声。しかし、その響きはいつものふざけたトーンよりもずっと低くラウンジの空気をじわじわと重くしていくようだった。
フロイドはソファの上で、さらに少しだけ身体を動かした。ななしの膝に彼の額が完全に預けられる。
見上げる彼の顔は、言い訳ができないほどに近かった。
「小エビちゃん」
名前を呼ぶフロイドの呼吸が、ななしの膝からお腹のあたりへと掠れるように伝わる。
ななしはフロイドの髪を掴んだままの手を、どうしても動かすことができなかった。胸の奥が、どくんと大きな音を立てて跳ねた。
フロイドは握ったままの手を離さない。
それどころか長い指をさらに深く絡ませ、ななしの手のひらを自分の胸元へと引き寄せた。制服の薄い生地越しに規則正しい、どこか高鳴っている鼓動がダイレクトに伝わってくる。
「フロイド先輩、あの……」
「ねぇ、髪の毛結ぶの、もうやめ。飽きちゃった」
「自分から言い出したんじゃないですか」
「それよりしたいことできた」
フロイドはソファの上で、ゆっくりと上半身を起こした。
横たわっていた大きな身体が目の前に迫り、夕日の光を遮るようにしてななしの上に影を落とす。床に座るななしを見下ろす形になったフロイドの身体は圧倒的な存在感を持ってそこにあった。
じわじわとラウンジの空気が熱を帯びていく。
フロイドは手を伸ばし、ななしの頬に触れた。大きな手のひらの熱が、冷めかけた部屋の温度とは裏腹に驚くほど熱く肌を灼く。親指の腹がななしの目元から頬のラインをゆっくりとなぞり、やがて唇の端に止まった。
「小エビちゃん、さっきからオレのこと全然見ないじゃん」
「見てます」
「見てねぇよ。目、泳ぎまくってる」
楽しげに細められた彼の視線が、ななしの輪郭をなぞるように動く。その視線に射すくめられるだけで、身体の奥が痺れるように熱くなった。呼吸がうまくできない。
フロイドの顔が、さらに一段と低くなる。
前髪がななしの額に触れ、お互いの吐息が完全に混ざり合う距離になった。フロイドから漂う気配が容赦なくななしの五感を満たしていく。意識のすべてが目の前にいる男だけに支配されていく感覚があった。
「フロイド先輩…」
懇願するようにその名前を呼ぶと、フロイドの口元がわずかに弧を描いた。
「なに? 嫌なら逃げていーよ。……逃げられるならね」
低く掠れた声が鼓膜を震わせる。
フロイドの顔が、さらに数ミリの距離まで近づいた。
お互いの境界線が曖昧になるほど、至近距離で重なり合う呼吸。フロイドの微かな吐息が唇に触れるたび、皮膚の裏側が痺れるような熱に侵されていく。
「小エビちゃん、目ぇ閉じて」
耳元で囁かれた低く掠れた声に、抗う術はなかった。
ななしがゆっくりと瞼を閉じると、視界が漆黒に染まる。その瞬間、触覚が極限まで跳ね上がった。
触れたのは驚くほど柔らかく、そして熱い質感だった。
最初はお互いの唇がそっと重なっただけの触れるような優しさ。フロイドの大きな身体からは想像もつかないほど慎重で、まるで壊れやすいガラス細工に触れるかのようなもどかしさがあった。
しかし、それも一瞬のことだった。
ななしの身体が小さく強張ったのを察したのか、フロイドは絡めていた手の指に、ぐっと力を込めた。逃がさないと誇示するように、深く強く。
「ん……」
ななしの口から零れかけた小さな吐息は、そのままフロイドの口内へと吸い込まれていく。
重ねられた唇の角度が変えられ、さらに深く隙間を埋めるように押し付けられた。唇と唇が擦れ合う微かな音が、遮断された視界の代わりに脳内の芯の部分へ直接響く。
フロイドの舌先がななしの唇の輪郭を優しくなぞり、やがてその熱い質量が、わずかに開いた隙間から内側へと滑り込んできた。
頭の芯がじわじわと融解していくような感覚。
経験したことのない濃密な熱が、口内から全身の血管を巡り指先までを焦がしていく。フロイドの舌が自分のそれに触れるたび、胸の奥が締め付けられるように疼いた。
頬を包み込んでいた彼の大きな手が、いつの間にかななしの後頭部へと回り、髪を優しく梳き上げながら自分のほうへと引き寄せている。拒むことなど最初から考えてもいなかった。
ただ、フロイドから与えられる圧倒的な熱量に溺れないよう、ななしは必死に彼の胸元の衣類を固く握りしめることしかできなかった。
何度目かの深い吸い込みのあと、濡れた音を立てて、ゆっくりと唇が離れていく。
「……はぁ、」
ななしが溢れ出た息を急に吸い込むと、フロイドはまだ名残惜しそうに、ななしの唇の端を自身の唇で軽く啄んだ。
ゆっくりと瞼を開けると、そこにはいつもの気まぐれな表情ではない、どこか熱を孕んだ潤んだ眼差しで自分を見つめるフロイドの顔があった。彼の端正な顔が夕闇の迫るラウンジの中で酷く艶っぽく映る。
「小エビちゃん、すげー熱い。……オレの、ぜんぶ移っちゃったみたい」
フロイドは満足そうに口元を歪めると、赤く色づいたななしの頬に、今度は自身の頬をぴったりと押し付けた。
二人の荒い呼吸だけが完全に日が落ちた部屋の中に、いつまでも重なり合って響いていた。
