ディアソムニア
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静まり返った部屋の中、目の前の顔に静かに視線を注ぐ。
ただそれだけのことなのに、胸の奥が締めつけられた。
いつもは凛とした静けさを湛えているその面差しが、今は仄かに熱を帯びているように見える。
長い指先が頬にそっと添えられ、引き寄せられるように顔が近づいてきた。
触れるか触れないかの距離で息を詰めた次の瞬間、柔らかな唇がそっと重なる。
密やかな音が、二人だけの空間にひそやかに響いた。
まずは挨拶を交わすように、上唇と下唇を優しく食むだけの、触れるほどの口づけ。
角度を変えながら幾度となく愛おしげに吸い上げられるたびに、触れ合った場所からじんわりと熱が広がっていった。
「シルバー先輩……」
「……もう少しだけ、じっとしていてくれ」
呟きは言い終わらぬうちに、再び唇で塞がれる。
今度は、ただ触れ合うだけでは終わらなかった。
重なる圧が少しずつ強さを増し、離れる刹那には甘やかな水音がひとつ、静寂の中に落ちる。
幾度となく繰り返される丁寧な攻め立てに、いつしか口もとが自然とほどけていく。
その僅かな隙間を押し開くようにして、温かな熱がそっと滑り込んできた。
「ん……っ、……っ」
「……、■■■……」
割り込んできた舌先が、内側をなぞるようにして奥まで触れてくる。
一歩深まるごとに部屋の空気が張り詰め、呼吸の仕方さえ忘れてしまいそうになった。
規則正しく刻まれていたはずの息遣いは、いつしか隠しようもなく乱れ始めている。
普段の寡黙で冷静な姿からは到底想像もつかないほど熱を帯びた吐息が肌を揺らし、絡み合う舌の動きに合わせて、彼の喉からも低く掠れた吐息が漏れ出た。
「……っ、ふ……っ」
「……すまない、止められそうにない」
言葉を紡ぎ終える隙も与えず、再び角度を変えて唇を強く奪われる。
舌先が奥まで入り込み、口内を余すところなく舐め尽くしていく。
逃げ場のないまま幾度も深いところで絡め取られ、混じり合った唾液が顎を伝い滴り落ちた。
いつもの落ち着き払った彼はどこにもいない。
その見知らぬ表情に胸が激しく高鳴り、全身からゆっくりと力が抜けていく。
背中に回されていた大きな手が、衣服の隙間から時間をかけて肌へと潜り込んできた。
温かく引き締まった掌が脇腹を滑り上がり、素肌の上を直接なぞっていく。
ただの愛撫では済まされない熱量と狂おしさが、その手つきから伝わってきた。
「……っ、ん……」
「……お前の顔を見ていると、理性が保てなくなる」
耳もとに落とされた低い囁きに、首筋がぞくりと震える。
指先が肌をやさしく撫で上げるたびに、甘い痺れが全身を駆け巡っていった。
身体の位置をわずかにずらされ、そのまま押し倒されるようにして体重が覆いかぶさってくる。
鍛え上げられた身体の重みと体温にすっぽりと包み込まれ、逃げることなど最初から叶わなかったのだと思い知らされた。
「……シルバー先輩、顔……すごく熱いです……」
「……お前のせいだろうな」
どこか苦しげに歪んだ彼の表情から、目が離せなかった。
「嫌なら押し返してくれ。……今なら、まだ止められる」
親指が頬を撫で、まるで答えを催促するように額をこつんと合わせてくる。
「嫌じゃ……ないです……」
「……そうか」
低く安堵したような息を漏らすと、再び深く口づけを落としてきた。
首筋へ、鎖骨へ、そしてまた重なり合う唇へ。
呼吸を奪うほど濃密な触れ合いが幾度となく繰り返され、二人の体温はどこまでも深く溶け合っていった。
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