サバナクロー
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「……レオナさん、起きてください」
声をかけるが、返事はない。
「聞こえてますよね? 離してください……っ」
「……うるせぇな。静かにしろ」
「動きづらくて困ってるんですけど」
「俺が寝るまで大人しくしてろ」
目を閉じたまま、伸びてきた腕で腰をしっかり囲い込まれた。
抗う暇もなく体を密着させられ、背中が彼の広い胸元へとすっぽり収まってしまう。
「……っ、近いですよ」
「今更なに言ってんだ」
耳元で落とされた低い声に、うなじのあたりがひやりとする。
わたしの肩に顎を乗せると、ふぅと息を吐き出した。
大きな手のひらが、こちらの腰元を撫でるようにゆっくりと往復する。
「お前、今日はやけにおとなしいな」
「別に普通です……ただ、落ち着かないだけで」
「なら好都合だ。今日は離す気ねぇから、覚悟しとけ」
耳の後ろあたりに、柔らかい唇がそっと触れた。
「……レオナ、さん……っ」
首筋から頬を撫でるように滑ってきた唇が、そのままわたしの口元を優しく覆う。
離れてはまた重ねられ、突いては吸うような短いキスが何度も繰り返される。
規則正しいようでどこか意地悪なその繰り返しに、頭の中がぼんやりとしていく。
「……力抜けよ」
「……むり、です」
さらに角度を変え、上唇をそっと深く吸い上げられる。
熱い吐息が鼻腔をくすぐり、視界がじんわりと滲んでいった。
「ん……っ、……」
「声、漏れてるぞ」
「……言わないでください……っ」
笑みを孕んだ声とともに、再び唇が重ねられる。
先ほどまでとは違う、強引さを含んだキスだった。
「ん、……っ」
唇の端を軽く噛まれ、思わず漏れ出た吐息の隙間を突いて、温かい舌がさらに深く踏み込んでくる。
歯列を丁寧になぞるような繊細な動きに、全身の力が抜けてしまいそうだった。
「んっ……、……っ、レオナ、さん……」
「なんだ」
「息……くるしい……っ」
「なら、もっと吸い方教えてやろうか」
「……っ」
滑るように入ってきた舌先に、内側の柔らかい粘膜をくまなく擦り上げられる。
互いの舌が絡み合うたび、思考が途切れていった。
「ん……っ、……ふ……っ」
「……そんな顔すんな。止まらなくなる」
甘くこぼれる吐息をひとつも逃さず吸い取られ、体の奥が熱くなっていく。
夢中になって首元に手を回したその瞬間、胸元にすっと冷たい空気が滑り込んできた。
服の隙間から、大きな手が直接肌へと忍び込んでくる。
「っ……!?」
「なんだよ」
「レオナさん、手……っ」
急に肌を撫でられた驚きに、思わず体が跳ねる。
そのまま大きく身をねじり、押し返そうと腕を突っ張った。
「……どうした」
「だって……っ」
顔を真っ赤にして胸元を押さえるわたしを見て、ニヤリと意地悪く目を細めた。
「なんだ、期待したか?」
「ちがっ……」
レオナは無理に奥へ進めようとはせず、脇腹を撫でるだけにとどめていた。
その落ち着いた手つきが、かえって肌を過敏にさせていく。
「……嫌ならやめるか?」
「嫌、とは……言ってないですけど……」
「なら余計なこと考えんな。力抜け」
再びぐっと腰を引き寄せられ、今度は逃げる間もなく唇を深く奪われる。
服の中の手は決して乱暴な動きを見せず、ただ肌をなだめるように静かに留まっていた。
ゆっくりと脱力し、わたしは腕の中に全体重を預けた。
「……んっ、……っ」
「……そうだ。それでいい」
耳元で囁く低い声と、幾度となく重ねられるキスの感触だけが、静かな午後の中にいつまでも残っていた。