サバナクロー
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サバナクロー寮の風は、いつも砂っぽくて、どこか獣の匂いがする。
レオナさんの着替えを洗濯室へ運ぶ途中、あまりの暑さにななしは廊下の影で一息ついていた。
「あー……。スカラビアほどじゃないけど、この寮も制服フル装備はきついな……」
周りに誰もいないことを確認し、ななしはシャツのボタンを大胆に開け、首元に溜まった熱を逃がそうと手で仰ぐ。男装のためにガチガチに巻いた『さらし』が、汗で肌に張り付いてじっとりと重い。
「……んー、いい眺め。……なんて言ったら、怒ります?」
「ひゃっ!?」
背後から不意に聞こえた低い笑い声。
振り向くと、そこには洗濯物という名のレオナの私物を抱えたラギーが、目を細めてニシシと笑っていた。
「ラ、ラギー先輩! いつからそこに……」
「ボタン開けよっかなーって悩んでるところから? ななしくん、意外と無防備っすよね。そういうとこ、ハイエナ的には見逃せないんすよ」
ラギーは足音もなく距離を詰めると、ななしのすぐ目の前で足を止めた。逃げようとする彼女の肩を、空いている方の手でひょいと押さえて壁に縫い止める。
「……あ。やっぱり。透けて見えちゃってるッスよ?」
ラギーの視線が、ななしが開けたシャツの隙間――さらしの端が肌に食い込んでいる境界線に注がれる。
彼の指がシャツの襟元にスッと伸びた。触れるか触れないかの距離で、指先が熱を帯びているのがわかる。
「や、やめてください……!」
「いいんですか? ここで大声出したら、他の寮生が来ちゃうッスよ〜。……君が実は女の子だってこと、バレてもいいんスかねぇ?まあ、気付いてそうなやつもいそうだけど」
「……っ、ラギー先輩、いつから気づいて……」
「シシシ! 鼻がいい奴を舐めちゃいけません。君から漂う匂い……男の寮生とは全然違う香りがずっと気になってたんスから」
ラギーはさらに顔を近づけ、ななしの耳元で低く囁いた。
その距離、彼の獣耳がななしの頬にふわりと掠める。
「それにしても。……こんなにキツく締めて、痛くないんすか? 貧乏性のオレからすると、せっかくの宝物をそんなに潰しちゃうなんて、もったいないなーって思っちゃうんスけど」
「た、宝物って…」
「オレ、手先は器用っすよ。その解きにくい結び目、解いてあげてもいいんすよ……シシシ!」
ラギーの指先が、さらしの最上部にチリッとした熱を残すように触れた。
からかうような口調。
けれど、その瞳には獲物を追い詰めた肉食獣のような、確かな熱が混じっている。
「……なーんてね。これ以上は、オレの給料に見合わない労働になりそうなんで、お預けっす」
パッと手が離れる。
ラギーはケロッとした顔で数歩下がり、肩をすくめた。
「ななしくん、顔真っ赤。……あんまり隙を見せてると、次はそれ、オレが盗んじゃうかもしれないっスよ? 記念品として」
「……最低です……っ!」
「褒め言葉ッス! じゃ、洗濯物出さなきゃいけないんで。……シャツのボタン、ちゃんと留めてから戻るんスよ。……その『中身』見せたくないんで」
尻尾をゴキゲンに揺らしながら、ラギーは軽やかな足取りで去っていった。
一人残されたななしは、震える手でボタンを留め直しながら、彼が触れた場所がいつまでも熱いことに気づいて、さらに顔を伏せるしかなかった。
レオナさんの着替えを洗濯室へ運ぶ途中、あまりの暑さにななしは廊下の影で一息ついていた。
「あー……。スカラビアほどじゃないけど、この寮も制服フル装備はきついな……」
周りに誰もいないことを確認し、ななしはシャツのボタンを大胆に開け、首元に溜まった熱を逃がそうと手で仰ぐ。男装のためにガチガチに巻いた『さらし』が、汗で肌に張り付いてじっとりと重い。
「……んー、いい眺め。……なんて言ったら、怒ります?」
「ひゃっ!?」
背後から不意に聞こえた低い笑い声。
振り向くと、そこには洗濯物という名のレオナの私物を抱えたラギーが、目を細めてニシシと笑っていた。
「ラ、ラギー先輩! いつからそこに……」
「ボタン開けよっかなーって悩んでるところから? ななしくん、意外と無防備っすよね。そういうとこ、ハイエナ的には見逃せないんすよ」
ラギーは足音もなく距離を詰めると、ななしのすぐ目の前で足を止めた。逃げようとする彼女の肩を、空いている方の手でひょいと押さえて壁に縫い止める。
「……あ。やっぱり。透けて見えちゃってるッスよ?」
ラギーの視線が、ななしが開けたシャツの隙間――さらしの端が肌に食い込んでいる境界線に注がれる。
彼の指がシャツの襟元にスッと伸びた。触れるか触れないかの距離で、指先が熱を帯びているのがわかる。
「や、やめてください……!」
「いいんですか? ここで大声出したら、他の寮生が来ちゃうッスよ〜。……君が実は女の子だってこと、バレてもいいんスかねぇ?まあ、気付いてそうなやつもいそうだけど」
「……っ、ラギー先輩、いつから気づいて……」
「シシシ! 鼻がいい奴を舐めちゃいけません。君から漂う匂い……男の寮生とは全然違う香りがずっと気になってたんスから」
ラギーはさらに顔を近づけ、ななしの耳元で低く囁いた。
その距離、彼の獣耳がななしの頬にふわりと掠める。
「それにしても。……こんなにキツく締めて、痛くないんすか? 貧乏性のオレからすると、せっかくの宝物をそんなに潰しちゃうなんて、もったいないなーって思っちゃうんスけど」
「た、宝物って…」
「オレ、手先は器用っすよ。その解きにくい結び目、解いてあげてもいいんすよ……シシシ!」
ラギーの指先が、さらしの最上部にチリッとした熱を残すように触れた。
からかうような口調。
けれど、その瞳には獲物を追い詰めた肉食獣のような、確かな熱が混じっている。
「……なーんてね。これ以上は、オレの給料に見合わない労働になりそうなんで、お預けっす」
パッと手が離れる。
ラギーはケロッとした顔で数歩下がり、肩をすくめた。
「ななしくん、顔真っ赤。……あんまり隙を見せてると、次はそれ、オレが盗んじゃうかもしれないっスよ? 記念品として」
「……最低です……っ!」
「褒め言葉ッス! じゃ、洗濯物出さなきゃいけないんで。……シャツのボタン、ちゃんと留めてから戻るんスよ。……その『中身』見せたくないんで」
尻尾をゴキゲンに揺らしながら、ラギーは軽やかな足取りで去っていった。
一人残されたななしは、震える手でボタンを留め直しながら、彼が触れた場所がいつまでも熱いことに気づいて、さらに顔を伏せるしかなかった。
