名前のない距離
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
土曜日の午前十一時前。
約束の場所へ向かうとエースの姿があった。
ふと顔を上げるとエースと視線が重なった。
彼はポケットから手を出して、少しだけ手を挙げた。
きれいめなシャツを羽織った彼の姿に、一瞬だけ足が止まりそうになった。
「また遅刻」
「まだ五分前だけど」
「オレは十分前に着くのが基本だから」
「この前は五分前だったくせに」
「あれ、そうだっけ?」
呆れたように言いながらも、エースの視線が上から下へとゆっくり動いた。
いつもとは少し違う服装や髪型を、それとなく確かめるような視線。
「……なに?」
「別に? なんか気合入ってんなと思って」
「そ、そうかな」
「ふーん。まあ、いいんじゃない」
素直じゃない言い方に少し眉をひそめると、エースは意地悪く笑った。
「で? さっき言ってた店、どこだっけ」
「ここから歩いて五分くらい」
「じゃ、さっさと行くぞ」
歩き出したエースは、ちらりとこちらを振り返った。
先週の雨の日のように同じ傘に入る必要はないけれど、自然と歩幅を合わせてくれる彼の優しさは変わっていない。
「ていうかさ、お前マジで甘いもん好きよね」
「エースだって嫌いじゃないでしょ?」
「嫌いじゃないけど、わざわざ並んでまで食べようとは思わねーし」
「文句言いながら付き合ってくれてるんだ」
「まあねー、どうせ暇だし」
エースは少しだけ気まずそうに目を逸らすと、首の後ろを手で触った。
◇
目的のカフェに着くと、店の前にはすでに数組の客が列を作っていた。
「うわ、並んでんじゃん」
「やっぱり人気なんだね。どうする? 別のところにする?」
申し訳なさそうに尋ねると、エースは行列の最後尾に迷いなく並び、肩をすくめた。
「せっかく来たんだから並ぶぞ」
「え、平気? 待てる?」
「お前さー、オレをなんだと思ってんの」
呆れたように笑うエースの隣に並ぶと、ふと彼との距離がいつもより近く感じられた。
周りはカップルや女性同士のグループばかりで、二人で並んでいると、まるで恋人同士のように見えているのではないかと自意識過剰になってしまう。
「なにソワソワしてんの」
エースが顔を覗き込んできた。
逃げ場のない至近距離に、鼓動が跳ね上がる。
「ソワソワなんてしてない」
「顔、ちょっと赤いけど」
「外が暑いからだよ」
「ふーん、あっそ」
エースは満足そうに口角を上げると、わざとらしく隣に肩を並べてきた。
肩が触れそうな距離にいる彼を意識してしまい、胸の奥が落ち着かなくなる。
青空の下、二人の順番が来るまでの時間は思っていたよりずっと短く感じられた。
約束の場所へ向かうとエースの姿があった。
ふと顔を上げるとエースと視線が重なった。
彼はポケットから手を出して、少しだけ手を挙げた。
きれいめなシャツを羽織った彼の姿に、一瞬だけ足が止まりそうになった。
「また遅刻」
「まだ五分前だけど」
「オレは十分前に着くのが基本だから」
「この前は五分前だったくせに」
「あれ、そうだっけ?」
呆れたように言いながらも、エースの視線が上から下へとゆっくり動いた。
いつもとは少し違う服装や髪型を、それとなく確かめるような視線。
「……なに?」
「別に? なんか気合入ってんなと思って」
「そ、そうかな」
「ふーん。まあ、いいんじゃない」
素直じゃない言い方に少し眉をひそめると、エースは意地悪く笑った。
「で? さっき言ってた店、どこだっけ」
「ここから歩いて五分くらい」
「じゃ、さっさと行くぞ」
歩き出したエースは、ちらりとこちらを振り返った。
先週の雨の日のように同じ傘に入る必要はないけれど、自然と歩幅を合わせてくれる彼の優しさは変わっていない。
「ていうかさ、お前マジで甘いもん好きよね」
「エースだって嫌いじゃないでしょ?」
「嫌いじゃないけど、わざわざ並んでまで食べようとは思わねーし」
「文句言いながら付き合ってくれてるんだ」
「まあねー、どうせ暇だし」
エースは少しだけ気まずそうに目を逸らすと、首の後ろを手で触った。
◇
目的のカフェに着くと、店の前にはすでに数組の客が列を作っていた。
「うわ、並んでんじゃん」
「やっぱり人気なんだね。どうする? 別のところにする?」
申し訳なさそうに尋ねると、エースは行列の最後尾に迷いなく並び、肩をすくめた。
「せっかく来たんだから並ぶぞ」
「え、平気? 待てる?」
「お前さー、オレをなんだと思ってんの」
呆れたように笑うエースの隣に並ぶと、ふと彼との距離がいつもより近く感じられた。
周りはカップルや女性同士のグループばかりで、二人で並んでいると、まるで恋人同士のように見えているのではないかと自意識過剰になってしまう。
「なにソワソワしてんの」
エースが顔を覗き込んできた。
逃げ場のない至近距離に、鼓動が跳ね上がる。
「ソワソワなんてしてない」
「顔、ちょっと赤いけど」
「外が暑いからだよ」
「ふーん、あっそ」
エースは満足そうに口角を上げると、わざとらしく隣に肩を並べてきた。
肩が触れそうな距離にいる彼を意識してしまい、胸の奥が落ち着かなくなる。
青空の下、二人の順番が来るまでの時間は思っていたよりずっと短く感じられた。
