名前のない距離
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
火曜日の夜、風呂上がりで髪を乾かしていると、デスクの上に置いたスマホが短く震えた。
画面を覗き込むと、通知欄に表示されていたのはエースの名前だった。
『土曜の件だけど』
『どこ行くか決めた?』
通知を開くと、そっけない二行のメッセージが表示されていた。
ドライヤーのスイッチを切り、タオルで髪を拭きながら返信を入力する。
『まだ迷ってる』
『エースは行きたいところないの?』
送信ボタンを押して画面を見つめていると、ほんの数秒で既読がついた。
その早さに思わずドキリとして、スマホを握り直す。
『オレはお前に付き合うって言ったじゃん』
『なんか食べたいもんとかねーの』
◇
画面越しだからこそ、相手の表情が見えない分、一文字一文字に余計な深読みをしてしまう。
ただの暇つぶしのやり取りなのか、それとも彼も少しは楽しみにしてくれているのか。
『カフェとかでもいいの?』
『いいけど。女子が好きそうな店?』
『嫌なら別の場所にするけど』
『お前が行きたいならそこ行く』
素直じゃない返答に思わず口元が緩む。
エースはいつもそうだ。
文句を言いながらも、結局はこちらの希望を優先させてくれる。
『じゃあ、前に話した新しいパンケーキのお店行きたい』
メッセージを送ってから、ふと不安になる。
男性一人では入りづらいような可愛らしいカフェに連れていくのは、さすがに申し訳ないかもしれない。
追加で『やっぱり違うところにしようか』と打ち込もうとした瞬間、画面に写真がポンと送られてきた。
『ここ?』
『予約いるか見てやったけど、土曜は並べば入れそう』
「……準備良すぎでしょ」
思わず画面に向かって独り言が漏れた。
わざわざ自分で検索して調べてくれたのだと思うと、胸の奥がじんわりと熱くなる。
『検索してくれたの? ありがとう』
『ヒマだったからな』
『実は気になってた?』
『お前が優柔不断だから手伝ってやっただけ』
相変わらずの言い草だったけれど、きっと今頃いつものように少しムッとした顔をしているんだろう。
『じゃあ、土曜日はそこにしよう』
『十一時に店の最寄り駅な』
『了解。遅刻しないでね』
『遅刻すんのはお前だろ』
くだらない軽口の応酬。
メッセージのラリーはそこで途切れたけれど、私はしばらく画面を閉じられずにいた。
会っていない平日も、こうして彼の言葉が生活の隙間に入り込んでくる。
こんなふうに当たり前にやり取りできる時間を、彼も少しでも楽しみにしてくれていたらいいのにと願ってしまう。
ベッドに横になり、スマホを胸元に抱きしめた。
土曜日までの四日間がひどく長く感じられて、小さく息を吐き出した。
画面を覗き込むと、通知欄に表示されていたのはエースの名前だった。
『土曜の件だけど』
『どこ行くか決めた?』
通知を開くと、そっけない二行のメッセージが表示されていた。
ドライヤーのスイッチを切り、タオルで髪を拭きながら返信を入力する。
『まだ迷ってる』
『エースは行きたいところないの?』
送信ボタンを押して画面を見つめていると、ほんの数秒で既読がついた。
その早さに思わずドキリとして、スマホを握り直す。
『オレはお前に付き合うって言ったじゃん』
『なんか食べたいもんとかねーの』
◇
画面越しだからこそ、相手の表情が見えない分、一文字一文字に余計な深読みをしてしまう。
ただの暇つぶしのやり取りなのか、それとも彼も少しは楽しみにしてくれているのか。
『カフェとかでもいいの?』
『いいけど。女子が好きそうな店?』
『嫌なら別の場所にするけど』
『お前が行きたいならそこ行く』
素直じゃない返答に思わず口元が緩む。
エースはいつもそうだ。
文句を言いながらも、結局はこちらの希望を優先させてくれる。
『じゃあ、前に話した新しいパンケーキのお店行きたい』
メッセージを送ってから、ふと不安になる。
男性一人では入りづらいような可愛らしいカフェに連れていくのは、さすがに申し訳ないかもしれない。
追加で『やっぱり違うところにしようか』と打ち込もうとした瞬間、画面に写真がポンと送られてきた。
『ここ?』
『予約いるか見てやったけど、土曜は並べば入れそう』
「……準備良すぎでしょ」
思わず画面に向かって独り言が漏れた。
わざわざ自分で検索して調べてくれたのだと思うと、胸の奥がじんわりと熱くなる。
『検索してくれたの? ありがとう』
『ヒマだったからな』
『実は気になってた?』
『お前が優柔不断だから手伝ってやっただけ』
相変わらずの言い草だったけれど、きっと今頃いつものように少しムッとした顔をしているんだろう。
『じゃあ、土曜日はそこにしよう』
『十一時に店の最寄り駅な』
『了解。遅刻しないでね』
『遅刻すんのはお前だろ』
くだらない軽口の応酬。
メッセージのラリーはそこで途切れたけれど、私はしばらく画面を閉じられずにいた。
会っていない平日も、こうして彼の言葉が生活の隙間に入り込んでくる。
こんなふうに当たり前にやり取りできる時間を、彼も少しでも楽しみにしてくれていたらいいのにと願ってしまう。
ベッドに横になり、スマホを胸元に抱きしめた。
土曜日までの四日間がひどく長く感じられて、小さく息を吐き出した。
