不定期開催!オンボロ寮・美食研究会
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パチパチと油の切れる小気味よい音が響く。
厚切りの豚ロース肉に塩コショウを振り、小麦粉、溶き卵をくぐらせてから、粗めの生パン粉をたっぷりと纏わせる。
たっぷりの油に滑り込ませると、じゅわっと小さな泡が立った。
低温でじっくり火を通し、あとは高温で一気に仕上げるだけだ。
「まだか、子分〜」
「もう少しだから待ってね」
きつね色のトンカツを網の上に取り出し、包丁を入れる。
サクッと小気味よい音がして、断面からじわりと肉汁が滲み出た。
ふいに、窓の外で何かが動いた気配がした。
顔を上げると窓枠に大きな影が降り立っている。
長いしっぽが、ゆらりと揺れていた。
「随分とうまそうな匂いだな」
大きな欠伸をしながら、窓を押し開けて入ってきたのは影の主だった。
気だるげに頭を掻き、鼻をひくつかせながら調理台へと近づいてくる。
「レオナさん!」
「レオナ!」
「あー、いちいちうるせえな」
「もしかして匂いにつられて来ました?」
「今日の美食研究会は超豪華だから、匂いに釣られてもしかたねーんだゾ!」
グリムが得意げに胸を張ると、レオナは呆れたように片眉を上げた。
「相変わらずくだらねぇことやってんな」
「レオナさんも一緒にどうですか?」
「オレ様の分はわけてやらねーけどな!」
レオナはしばらく調理台を眺めていたが、やがて小さく鼻を鳴らした。
「……フン。ちょうど腹が減ってたところだ。食ってやらないこともない」
レオナはどかりと椅子に腰掛け、頬杖をつく。
◇
揚げたてのトンカツをキャベツの千切りとともに大皿へ盛り付け、特製の甘辛ソースを添えてテーブルへ運ぶ。
衣の香ばしい匂いとソースの甘酸っぱい香りが合わさり、空腹感を強烈に刺激してきた。
「それじゃあ、いただきます」
「いただきますなんだゾ!」
レオナは一番厚みのある中央の肉を一口で頬張った。
「……」
「お口に合いましたか?」
「……悪くねぇ」
「この脂身の部分が甘くて最高だゾ!」
レオナは二つ目の肉にソースをたっぷりつけると、黙々と口へ運んでいく。
「野菜も食べてくださいね」
「……草はいらねえ」
「おいレオナ! オレ様の分まで食べるんじゃねーんだゾ!」
「あ? 早い者勝ちだろ。嫌ならさっさと食え」
「ふなっ……負けないんだゾ! 子分、オレ様おかわり!」
「はいはい、今日もいっぱい作ったから慌てないでね」
温かいご飯を盛って渡すと、レオナも空になったお茶碗を差し出してきた。
「レオナさんもおかわりですか?」
「……見りゃ分かんだろ」
「たくさん食べてくださいね」
◇
大盛りのご飯と大きなトンカツが皿の上から消え、気づけば衣の欠片すら残っていなかった。
のんびりと食べ、話し込んでいるうちに、窓の外はいつしかオレンジ色から群青色へと移り変わっていた。
「美味すぎて限界まで詰め込んじまったんだゾ……」
グリムがお腹を丸くしてテーブルに突っ伏している。
「ふたりとも、綺麗に食べてくれてありがとうございました」
「まあ、たまにはこういう雑多なメシも悪くねぇな」
「素直に美味かったって言えばいーんだゾ」
レオナは斜めに差し込む夕日を背に、面倒くさそうに目を閉じた。
「ここで寝るつもりですか?」
「……ああ、寝る」
「自分の部屋に戻って寝てくださいってば」
レオナはそれきり黙り込むと、ごろりと寝転がった。
ほどなくして、小さな寝息が聞こえてくる。
「あっという間に寝たんだゾ」
「本当だね。どこでも寝られるのは少し羨ましいかも」
「次の美食研究会は何を作るんだゾ?」
「うーん、そうだね。次はさっぱりしたものにする?」
「オレ様はまた肉がいいんだゾ!」
にぎやかな相談をよそに眠り続けるレオナを見て、思わず口元がゆるんだ。
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