不定期開催!オンボロ寮・美食研究会
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オンボロ寮のキッチンに、ジュウジュウと油の弾ける音が心地よく響いていた。
砂糖を多めに入れたタレがフライパンの縁で焦げて、香ばしい匂いが立ちのぼる。
同時に、服の裾をぐいっと引っ張られた。
「オレ様、腹と背中がくっつきそうだゾ!」
「もうちょっと待っててね、グリム」
フライパンの中で転がしているのは、俵型に握った白米に豚バラ肉を巻きつけたものだ。
焼き目をつけてから、甘辛いタレを絡めていく。
部屋中に匂いが充満した頃、廊下の向こうからドタバタと足音が近づいてきた。
扉が勢いよく開くと、エースが叫びながら飛び込んでくる。
「なんだこのめちゃくちゃいい匂い!」
すぐ後ろからデュースが顔を覗かせ、呆れたようにため息をついた。
「おいエース、勝手に押し開けるなって」
「なになに、何作ってんの?」
デュースもつられて鼻を鳴らす。
「それにしても、すごくいい匂いだ」
「エースもデュースも、ちょうどいいところに来たね」
「今日の美食研究会のメニューは子分特製の肉巻きおにぎりなんだゾ!」
グリムが胸を張って叫ぶと、エースとデュースは調理台を覗き込んだ。
「マジで? それ絶対うまいやつじゃん!」
「二人とも夕飯は食べたでしょ?」
「育ち盛りの胃袋舐めんなよ?」
「たくさん作ってるから、座って待ってて」
◇
大皿に盛られた肉巻きおにぎりには、香ばしい白ごまがパラパラと振られている。
タレが肉にしみ込み、キラキラと光っているように見えた。
「それじゃあ、いただくんだゾー!」
グリムのいただきますの合図とともに、みんなで豪快に頬張った。
「肉がカリッとしてんのに、中のご飯にタレが染みてて激うま!」
「豚肉の旨味がご飯全体に広がるな!」
エースもデュースも夢中で頬張っている。
グリムは肉巻きおにぎりを両手でしっかりと掴むと、口を大きく開けてガブリと噛みついた。
「豚肉の香ばしさとタレの甘辛さがガツンとぶつかって、白米がぜんぶ引き立ててくれるんだゾ!」
「お、グリム食レポうまいじゃん」
「言わんとしていることはよく分からんが、美味いのは確かだな」
デュースが感心したように頷きながら二個目に手を伸ばす。
「これ、冷めても美味しそうだよね。お弁当とかに入れても良さそう」
「冷める前に全部食うから関係ねーよ! おかわりある?」
「まだまだいっぱい焼いてあるよ。焦らず食べてね」
「このタレって何が入ってんの?」
エースが二個目を口に放り込みながら、興味津々といった様子で聞いてくる。
「生姜のすりおろしを少しと、隠し味にニンニクを入れてるよ」
「生姜が入っているからか、後味が案外さっぱりしていていくらでも食べられそうだな」
デュースは感心したように頷き、丁寧な手つきで三個目のおにぎりを皿から取り分けた。
「おいデュース! お前もう三個目かよ、ずりぃぞ!」
「早い者勝ちだ。たくさん作ってくれたんだからいいじゃないか」
「オレ様だって負けないんだゾ!」
「はいはい、みんなの分は十分あるから慌てないで」
香ばしいタレの匂いと賑やかな声が満ちていた。
窓の外はすっかり暗く、冷たい風がカタカタと窓を揺らしている。
それでも誰も気にせず、肉巻きおにぎりを頬張り続けていた。
「ハーツラビュルは夜食とかないの?」
「寮長に見つかったら激怒されるに決まってるだろ」
「エースは入学早々にケーキつまみ食いして怒られたっけ」
「うっせー」
エースが首をすくめると、デュースも苦笑いを浮かべる。
「でも、たまにはこうやって羽を伸ばすのも悪くないよな」
「オレ様たちの美食研究会は偉大なんだゾ!」
胸を張るグリムの口元には、肉巻きおにぎりのタレがべったりとついたままだ。
得意げな顔がおかしくて、思わずクスッと笑ってしまった。
「部活動の協力って名目なら、リドル先輩も怒らないんじゃない?」
「確かに、お前天才かよ」
「それじゃあ、また今度もよろしくな」
空になった皿を重ねながら、三人はまだ何かとやり合っている。
その賑やかな声を背に、キッチンの灯りを落とした。
◇
「ふぅ……、もう食えねぇ」
エースが椅子に深く背をもたれて、満足そうにお腹をさすっている。
「僕も少し食べすぎてしまったかもしれないな」
「オレ様はまだまだ食べられるんだゾ!」
「グリムも手伝ってくれてありがとうね」
「次の美食研究会も楽しみなんだゾ」
「次もまた呼んでよね、匂いで察して勝手に来ると思うけど」
「僕も手伝えることがあれば言ってくれ。力仕事なら任せてほしい」
「うん、またみんなで美味しいもの作って食べようね」
食器を片付けるカチャカチャという音とともに、静かな夜のオンボロ寮に穏やかな時間が流れていくのだった。
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