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本編

黒の国にて

凍てつく風で細かい雪が舞い上がる。朝日に包まれながら、厳かに、堅苦しい空気が漂っていた。黒の国の宝石達は、皆一様に服をしっかりと着込み、襟を正して西方を見る。黒の長髪が風に靡く。持ち主のカーボナードの表情は険しかった。
「タイが曲がっていますよ」
黄色い髪のサルファーが、空気をほぐすように話しかける。カーボナードのタイを、優しく直した。
「あぁ、ありがとう」
「出かける前に、僕のことどうぞ抱き上げてね」
サルファーに言われるがまま、カーボナードは彼を抱き上げる。細心の注意を払いながら。笑い合う二人から目を逸らして、ブラックサファイアが歩き始める。赤髪のルベライトも、それに続く。
「早く暴れたくてウズウズするぜ」
肩を回しながら、ルベライトがブラックサファイアに話しかける。ブラックサファイアは無視するのかと思われたが、一言、
「私達に当てるなよ」
と忠告した。
「お前こそ、足引っ張んなよな」
とルベライトも言い返す。二人がどんどん西へ向かうので、カーボナードは慌ててサルファーを下ろし、留守番のベルゼライトに向き直った。
「では、行ってくる。二人共良い子にしてるように」
「…………ん」
ベルゼライトは返事をして、背の低いマイクロライトに目配せする。マイクロライトはカーボナードの横に立つと、胸を張ってみせた。
「任せろ! きちっとボナーを守ってみせるからさ」
「ん。マイクも気をつけて」
マイクロライトとベルゼライトは、確認をするように目を合わせる。それを微笑ましそうにカーボナードは見つめた。二人の頭を、そっと撫でる。
「おい! いい加減置いてくぞ!」
ルベライトの声ではっとなり、カーボナードとマイクロライトは急いで跡を追う。
「いってらっしゃい! 気をつけてね」
「…………」
サルファーが大きく、ベルゼライトが小さく手を振る。手を振り返しながら、4名は西の方へ出発した。海を超えて、反対の地にメイドさんを迎えに行くために。今日こそは、とカーボナードは西を睨む。今日こそはあの悪魔からメイドさんを取り戻す。そう堅く決意したのだった。
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