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キャラ単体

海へ行った/ボルツ

クズが海に消えたらしい。なにがどうなったら、そんな荒唐無稽な行動をすることになるんだ。無謀は無能がすることだ。本当の無能なら、無謀は全てその身に返ってくるだろう。
「潮の変わり目に注意しろ」
先生の言葉に、気を引き締めて返事をする。クズでも仲間には変わりない。ここで見失って、そのまま消える方が幸せか?お前が幸運を待つだけなら、僕はそれでも構わない。だが、ダイヤがせっかく助けた命だ。助けられてばかりは心苦しいだろう。そろそろ役に立ってみせたらどうだ。波打ち際を睨みつけながら、あいつの最後に見た顔を思い出そうとしていた。

月へ行った/ボルツ

フォスが月へ行った。ダイヤを連れて。お前はいつだってずるい奴だった。弱さにつけ込んで、甘えてばかりで。たくさん変貌してきたお前は、生まれた頃よりなにも変わってなかったな。少しでも信用した僕が馬鹿だった。
「フォスフォフィライトは仲間ではありません」
無謀は無能がすることだ。今のフォスがそうだとは、とても思えない。だが、僕の相手をするからには覚悟をしろ。必ず、仲間を、金剛を守り抜いてみせる。ユークと作戦を立てる。シンシャの力は必要だ。慌ただしく動く今宵に、あいつの顔など忘れてしまった。

夢/オブシディアン

幼い頃のわくわくした、新鮮な気持ちを忘れたくないと思う。
「こんごうを〜剣にしてもい〜い?」
僕の身体の秘密を知った時、流れ出るガラスに少し恐怖を覚えたけれど、冷えて固まることを知って、形作ることの面白さを知った。先生に導かれて、武器を制作するようになって。皆の特性に合わせて武器を作るのは面白くて、もっと強くてすごい武器を作ってみたくなった。
「じぇ〜どでもいいけどぉ〜」
僕よりもっと固くて強いもので、剣を作ったらさぞかし強くて美しくて、すごいんだろうなぁ。わくわくを忘れずに、仕事をするのが僕の夢だ。

全て同じなら/アメシスト33

双晶にも分からないことがある。なぜ僕らは全く同じに生まれなかったのか。僕が花を見てる時、君は花に止まる蝶を見ているでしょう。僕がクラゲを見つけた時、君は潮の流れが変わることに気付いたでしょう。双晶だから知っている。僕らが違うことを知っている。
「僕はアメシスト、サーティースリー」
口に出して、僕は僕を思い出す。少しの隙間も不安だから、ぴったりとくっついて寄り添う。僕らが全く同じだったら、こんな不安も抱かずに済んだのかな。

違かったなら/アメシスト84

双晶にも分からないことがある。なぜ僕らは全く違うように生まれなかったのか。僕らは同じ野原を見る。同じ海原を眺める。花を慈しむ心を感じ、クラゲを助けようと意見を合わせる。双晶だから考えていることはお見通しで、あまりにも僕ら、同じ時間を生きている。
「僕はアメシスト、エイティフォー」
口に出して、僕は僕を認識する。不安を埋めるように肌に触れ合い、片時も離れない。離れることが出来たなら、僕ら違う存在になって、見つめ合うことが出来るだろうか。

喪失/カンゴーム

一人きりの冬担当にも慣れて、暇な時間が増えた。フォスに会わなければならないので、早くに学校に帰るのは嫌だった。積もった雪の中に飛び込んで、沈みこむ。雪が自分の形に凹んで、身体全体を包み込む。しんしんと冷えていく感覚に、このままアンタークになってしまえないかと思う。アンタークは、寒いほどに強かったと聞く。アンタークは。フォスのため。
(声が消えない)
ゴーストはフォスを守れと言い残した。残された俺がやらなければ。やらねば。自分を喪失してしまいたい。強い責任感から逃れるように、雪の上で寝返りを打った。

憎しみとは/アレキサンドライト

月人への憎しみで、身体が軋む夜がある。研究を続けて、続けて、続けて。クリソベリルへの想いを心と身体に刻みつけるように。忘れたくても、忘れられなかった。ならば、諦めて覚えている。
月人を知れば知るほど、憎しみが募る。憎しみを覚えているうちは、クリソベリルを忘れていないと安心が出来る。手段と目的は、いつしかすり替わって、どちらが大切なのか分からなくなった。憎しみがあるから覚えているのか、覚えるために憎しみを増すのか。どちらでも構わない。クリソベリルを取り戻すその時まで、この不毛な日々が続いても構わない。

安らぎとは/アレキサンドライト

月に来てから平穏だった。胸の引っかかりに知らぬふりをするほど。それで心は守られたから。
フォスが帰ってきた。不安に塗り潰される胸から、心残りをひとつ拾って口にする。
「クリソベリルのことは忘れたわ」
本当は嘘。忘れたくても、忘れられなかった。忘れたと自分に嘘を吐いて、絆された私を咎めずにいるだけ。私が地上に降りても、クリソベリルはきっと戻らない。だけれども、何もせずにこの平穏を謳歌するのは、どうにも居心地が悪かったから。私は目隠しを外し剣を取る。

暇/フォスフォフィライト

暇だ。退屈だ。自由だ。倦怠だ。空虚だ。怠惰だ。なにもない。面目ない。僕の今の状態を表す言葉を探してみた。それぐらい暇なんだ。
「なんかいいことないかなぁー……」
そんな声は空気に混ざって消える。野原に寝そべり空を眺めていたら、眠たくなってきた。そっと瞼を閉じる。そうすれば全て忘れられる。眠るのは好きだった。
(戦争に行きたいな。何か役に立つ仕事がしたい)
淡い想いを胸に、意識が遠のく。夢の中でなら、どんな願いも叶うのに。

若草が伸びてゆく/パパラチア

冬に眠って、目覚めたら夏だった、数十年を超えた。青い空に入道雲が立ち昇る。陽射しが大地を枯らそうと降り注ぎ、植物は声もなく雨を待っている。天へと伸びる若草は、あの時から何世代命を重ねたのだろう。夏が終われば尽きゆく命は、何のために葉を伸ばすのだろう。止まってばかりの俺は、どこへ向かって歩めばいい。
(あ、雨)
通り雨が辺りを湿らせる。生命が歓喜するかのように、雨が大地を叩く音でいっぱいになる。白粉が落ちる、そう頭では理解していたが、しばらく立ち尽くしていたかった。
(あとどのくらい、ちゃんと動ける?)
やるべきことの数を数える。出来ることが少ないから。生きている意味を、掴んでいたいから。
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