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キャラ単体

精進/ジルコン

陽が傾きかけて、空が薄い黄色に染まる瞬間が好きだ。もうすぐ終わる一日を、無事にイエローと迎えられる喜びと安心に包まれるから。僕は脚の速さも身体の硬さも、イエローには遠く及ばない。全てが僕より優れており、長く皆を支えてきた先輩を尊敬する。
「イエロー、帰りましょう」
陽が沈みかけて、空の色はより濃く橙色に変わっていく。儚く笑うイエローを、守れる盾になりたいと思う。願うことなら、いつまでもイエローの隣に立てますように。その資格を得るために、いつでも精進したいと思うのだ。

よかった/アンタークチサイト

フォスがいてよかった。
「先生がさびしくないように、冬をたのむ」
砕け落ちていく自分の身体を認識しながら、フォスを見る。怯えている彼が安心するようにと、最後に笑みを作った。これからどうなるのだろう。月に行くことなど想像したこともなかったし、月人に興味なんてなかった。ただ先生の隣に居られればよかった。先生の隣に、私の代わりにフォスがいてくれる。安心して、自分の周りを見れば。私が一人になる絵が見えて、ようやくぞっとした。
「ーーーー」
もう声は出ない。嫌だ、一人になりたくない。助けて。助けてくれ、フォスーー。

夜と孤独と仕事/シンシャ

夜に閉じ込められてはいるが、夜が嫌いなわけではない。俺の存在に僅かでも価値をつけてくれる時間に、恨みなどあるわけがない。一人は嫌だが、これも嫌いとは少し違う。一人なら誰も傷つけないし、毒さない。それは酷く安心だ。誰かといるのは俺も落ち着かないから。そう、そう深く理解しているのに。
「あぁ……夜か」
それなのに、夜が来るたびに、押し潰されるような寂しさで涙が溢れるのは何故だろう。いつまでも、孤独に慣れることが出来ないのは何故だろう。これが最善策。仕方がない。他に道はない。みんなの眠りを守ることが、俺に出来る仕事。そう言い聞かせて、歩みを止めそうな脚を前に進める。自分の役目を、投げ出したくないから。

目覚め/パパラチア

「クリソベリルが拐われました」
静かに、落ち着いた声でルチルはそう告げた。目覚めの悪い話だが、俺が眠っている間に起きた事実を受け止めなければならない。
「そうか」
それしか言葉に出来なかった。その場にいなかった俺になにが言えよう。ルチルの許可を取り、外で陽に当たる。陽の光が美味しい。あいつは陽を食べるのが好きだったな。……あぁ。
「また、」
また、頼れる相手がいなくなった。苦しみから逃れるように、目を伏せる。駄目だ、砕けては。眠っては駄目だ。しっかり俺は立っていなければ。
「生きるというのは、疲れるな」
独りごちて、空を見上げる。雄大な夕陽を見ると、自分などちっぽけに思えて仕方なかった。

報告/イエローダイヤモンド

「今日はいいことがあったんだ」
夜風に当たりながら、パパラチアに報告をする。もちろん返事はないけれど、そのことが俺をいつも安心させてくれる。俺の言うことに是とも否とも言わない彼が、俺の心を救っていた。言いたいけれど言えない想いを、彼の前では溢すことが出来た。
「今日は俺が走ったことで、フォスもアメシストも救えたんだ」
俺は自分の脚が嫌いだった。逃げてばかりで、のうのうと生き残って。でも、今日はそんな自分にも出来ることがあるのを思い出せた。
「もう少し長生きしてもいいよな?」
彼から答えが貰える日までは、少なくとも。

月に来た理由/アメシスト84

「あのこを月に行かせるのはかわいそうだから」
言葉にして初めて、自分が嘘を吐いたと自覚した。あのこの為に身代わりで月に来たとは、僕は思っていない。じゃあどういうつもりで月に来たのかと自分に問うが、なんとも判然としない。自分で決めたことだから、後悔はしてないことは確か。
「これがセンパイたちってこと……?」
フォスから真実を告げられて、皆一様に動揺している。フォスは思った以上に月に踏み込んでいるけど、想像以上に頼りなく穴だらけだ。砂を掬いあげて、落とす。皆を元の姿に戻さなくっちゃ。決意と共に、サーティの顔を思い出す。君と離れて僕たちがどうなるかの、答えも見つけなくちゃね。

置いていかれた理由/アメシスト33

「ごめんなさい」
僕の不用意な言葉で、あのこは月へ行ってしまった。僕の身代わりと思ってないとはなんとなく分かるけど、それでもきっかけを作ったのは僕だ。自壊していく僕を、ユークが宥める。あのこが側にいないのが不安だった。
「はじめまして金剛」
先生が話せる全てを話して、ユークはやり直しを提案した。ユークはすごいな。僕もあのこがいなくても、なにかを決められるようになりたい。エーティは一人で決めて月に行った。僕は地上に残って、僕に出来ることを探したい。君と離れ離れになっても、大丈夫だって証明したい。心配することはやめる。あのこは僕と同じで器用なんだから。

割り切れない想い/ユークレース

「3.1415926535……」
おもむろに円周率を口にする。計算好きの僕の癖。ジェードに驚かれて怖がられたから、なるべく控えるようにはしているのだけど。ちょっぴり未来に不安がある時、自分の正しさを見失う時、気持ちを落ち着かせるために唱える。
「8979323846……」
円とは不思議な図形で、割り切ることは出来ない。僕らの気持ちと同じ。どんなに仕方がないこととしても、諦めることは難しい。
「2643383279……」
円周率のように永く果てのない命は、きっと困難を乗り越えて行くためにある。

祈り/ゴーストクォーツ

(ラピスはグズな僕が嫌になったのかも)
ラピスがいなくなって随分時は流れたけれど、思い起こすのはいつものこと。天才の隣に立つには、僕はあまりにも平凡だ。
(そんなわけないだろ。馬鹿なこと考えるのやめろ)
すぐに内側から響く声。感傷に浸る隙間もない。どこまでも正しく、真っ直ぐな僕の黒い部分が嫌いだった。それと同時に、懐かしいような愛おしいような、不思議な気持ちにさせるこの子のことを、僕は持て余していた。
(わかってるよ)
ラピスと二人なら、なんでも出来た。でも、僕は一人で二人だ。ラピスがいなくとも、なんとかやってみせる。ラピスがいなくとも、この子と分かり合ってみせるよ。だから、どうか。飽きるほど繰り返した祈りを、今日もひとつ。

服のこと、彼のこと/レッドベリル

服を作るのが本当に大好きだ。服のことを考えている間は、アクアマリンのことを忘れてしまえるような、それでも彼がずっと側にいてくれるような、不思議な気分に浸っていられるから。夢中で針を進めているうちは、嫌なことは全部無かったことに出来る。
「今日も僕お疲れ〜」
アクアマリンを思い出してしまうのは、自分の髪に触れた時。二人であれこれヘアアレンジを考えたこと。一人になって自分だけで出来るアレンジが増えたこと。今の僕を、彼に見て欲しいこと。思い出して、眠れない夜も多い。
「明日も頑張らなくちゃ」
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