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フォスシン

最後に残った悲しみの一欠片/シンシャ

金剛を守るため、廊下の中腹に待ち構える。重たい足音が、徐々に近づいてくるのが分かる。約束を果たしてくれた彼と、対峙しなければならないことが、虚しく思える。現れたフォスの悍ましさに、それでも視線は外さない。
「無様で哀れだな」
歪な笑みを浮かべるフォスに、あの日の面影などはない。道を譲るわけにはいかない。俺の、大切な仲間のため。だから。
「知ってる」
お前の合金で、この悲しみを覆い尽くしてくれ。飲み込んでくれ、俺の最後に残った悲しみの記憶を。あの日、あの時、お前の手を取れなかった情けない俺を、どうか。

謝罪を/シンシャ

パーティが終わった後も、地上を見下ろすことをやめられなかった。今の時期は風が強い。よく知っている。けれど、それすらじきに分からなくなっていくだろう。
「フォス、ごめん」
届くわけない呟き。届いても、また聞かなかったことにされるだろうか。感謝は伝えたが、謝罪は出来ていない。あの日の約束、それが全ての始まりだったとするのなら。必死なフォスの表情、声。その全てをまだ覚えている。
「ごめん」
こんな想いに抱かれても、もう水銀は溢れてこない。涙を失った俺は、何に祈ればフォスを救えるだろうか。

月へ/フォスフォフィライト

「俺は行かない」
そう言われた時、理由が分からなくて信じられなかった。ようやく、ようやく君を夜から解放出来ると。そう思っていたのに。約束した日のことは覚えてないけど、約束は忘れないように、必死に記憶を繋いできたのに。でも、断られてしまったらなにも出来ない。ユークにも気付かれている。僕は君を置いていく。考えて立ち止まる時間はないから。
「あの月が傾き始める頃、虛の岬に来て」
もう戻れない。この道が正しいかなんて分からない。だってシンシャが横にいないんだから。僕は間違えた?整理のつかない気持ち悪さを抱えて、月へ行く。君の審判の、遥か先へ行くんだ。

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