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キャラ単体

夢幻/パパラチア

夢を見る。いつもいつも。夢の中に生きている。夢と現実、どちらに生きる俺が本物なのかなんて、考えるのが馬鹿馬鹿しくなるほど永い時、俺は眠る。先生が笑う。みんなが笑う。俺も笑う。全てが幻だ。意識は鮮明になることを知らず、ただ水底に沈むように、どこかを漂っている。
(はぁ…………)
意識の外側で、ルチルがため息を吐くのが聞こえた気がした。俺の不運が、誰かを苦しめることは望まない。望まないことばかりだ。なにを選べば、安らかにいられる? 選ぶ権利すら、俺には与えられないだろうか。……いや、選べるその時、俺はちゃんと立ってられるだろうか。それだけが不安だ。まだ目覚めは来ない。

当惑/イエローダイヤモンド

思い出す。赤い花びらにルビーを。薄ピンクの蝶にピンクトパーズを。青く煌めく海にサファイアを。風吹き抜ける草原の緑にグリーンダイヤモンドを。なにを見ても、かつてのパートナーを思い出す。色彩が、逃げてばかりの俺を責め立てる。この瞳から、色が抜け落ちてしまえばどんなに楽か。それすら許されないことのような気がして、瞬きを忘れる。
「イエロー、帰りましょう」
ジルコンの声に、顔を上げる。夕日を背に立つ後輩を見て、ああ、ジルコンがいなくなったら、夕日を見るたびにジルコンを思い出すんだろうなと。過ぎって、言いようのない眩暈に襲われた。

復讐/アレキサンドライト

陽射しを感じて目を覚ます。どうやら、月人の研究に没頭しすぎて寝落ちしていたようだ。書き途中の資料に覚えがない。記憶があやふやな感覚には、とても覚えがある。
『クリソベリル!』
自分が紅くなった時の記憶は、いつも曖昧でよく覚えていない。だから、クリソベリルが奪われたあの日の、あの子のことをよく思い出せない。自分が恨めしくて、悔しくて、月人が憎い。新鮮な憎しみに感謝する。私はまだ、クリソベリルを思い出せる。書きかけの資料に目を通す。私の復讐は終わらない。

天才/ラピスラズリ

『そんなことでは、いつか拐われてしまうよ』
そう僕に忠告してくれたのは誰だっけ。どうにもダメだ、言葉の全てを覚えることは容易くても、それを誰が残したのかに興味が持てなくて。不可解な戦争を探るうちに、思案に耽って僕は、首を射抜かれた。
「ラピス!」
焦ったゴーストの顔を見たのが最後、視界は黒く閉じ、意識もハッキリしなくなっていく。胴と別たれた頭を、ゴーストが抱えてくれた感触がある。どうやら、僕はここまでのようだ。けれど、インクルージョンには託した。この天才を誰が引き継ぐのか、それとも僕が復活するのが先か、楽しみに眠るとしよう。

存在理由/ルチル

ふとした瞬間に、考えることがある。生きている価値とはなんなのかについて。生まれ落ちたことに、意味などあるのかということを。皆、なにかしら抱えて生まれてくる。イエローは俊足を、パパラチアはパズルの身体を、シンシャは毒を。私は……パパラチアのパズルを解くことに価値を見出し、自分の存在理由について考えることに麻酔をした。永すぎる生命は、逃げ場などない生き地獄に等しい。そんなことを思う。それでも、朝目覚めることはやめられないのであれば。
「貴方の価値は私が取り戻します」
生きる理由となってくれた、彼に私は報いたい。それで私の価値も決まるのならば、そんな上等なことはないでしょう?

拐われた日/モルガナイト

『怒ると周りが見えなくなるの、悪い癖だよ。そこがモルガの良いとこでもあるけど』
いつかゴーシェの声が、頭に響く。あの時もお前は、眉を下げて曖昧に笑ったよな。バラバラに散ったゴーシェを奪われないように手を伸ばす。俺の下半身も砕けている。月人に阻まれて、ゴーシェに手は届かない。襲いくる矢が、俺の身体を刻んでいく。
「嫌だ、嫌、先生ーー」
まだヘリオドールを取り返していない。まだ奪われたもの全てを取り返していない。フォスが目覚めたら、話したいことがある。俺の、みんなの、これからについて。だから、お願い。
「先生、助けてーー」

いなくなった日/モルガナイト

ゴーシェが月に行ってしまった。皆んなの様に上手く悔めなかった。ヒビの入らないこの身体は、案外丈夫なのだと知る。大丈夫、まだ胸に穴が空いたような喪失感はあるけれど、私はまっすぐに立っていられる。
「私、これからどうしよう?」
私の声から、いつもの不安げな色合いは消えていた。不思議なものだ、ゴーシェが隣にいてもいつも不安ばかりだったのに。失うから、強くなることもある。顔を上げた。真白な月が、学校を見下ろす。私はこれから、どう変わっていける?

願い/ゴーシェナイト

「なにぼーっとフォスのこと見てんだよ」
「……ううん、なんでもないよ」
モルガに向き直り、横を歩く。当たり前の様に隣にいてくれる存在。僕はモルガのために、モルガは僕のために。それが当然で必然の仲。モルガがもしいなかったとして、僕は今まで生きてこられただろうか。ふと考えて、身震いしたのだ。その時、目の前をフォスが通って、凝視してしまった。
「あの子にもパートナーがいればいいのに」
「あ? なんか言ったか?」
小さく呟き、あれこれ考えるけれど。どれも彼からしたらお節介なことばかりで、僕に出来ることは見守ることだけ。どうか、彼の行く道に幸せがありますように。

自由/ゴーシェナイト

「みんな帰っちゃった、つまんない」
でも、家まで帰ることはしない。誰もいない方へ、ステップを刻みながら歩く。ここともお別れか。月も楽しかったな。
「センパイはやっぱすごいな〜」
難しいことはよく分かんないけど、月人達の願いを叶えるのは、間違いなくセンパイだ。ついてきてよかったなーと、街並みを堪能しながら思う。面白そうだった。地上の生活がつまらなかったわけじゃないけど。実際、月の生活は面白かった。それだけで僕には充分だった。
「ぼっくっのまーち♪」
これから僕はなにをしよう。自由に生きるのは、素晴らしい。

思案/ジェード

新しい朝が来た。きちっと身なりを整え、朝礼に向かう。ユークから今日の空模様を聞き、布陣を考える。皆の特性、考え、気分。月人の思惑、行動。それらをまとめながら、最善を探る。皆の前に立ち、言葉を発するのはいつになっても緊張する。
「ボルツ、ダイヤ組は付近の巡回へ」
頷くボルツと、少し浮かない顔のダイヤ。羨ましそうに見つめるフォス。それぞれの感情を想像し、共感を探し、解決策を思案する。ユークのように聡明ではないので、見つけられることは少ないが。私の堅牢は、耐え抜き考えを止めないためにある。
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