うちの子夢小説
今夜はパーティ。衣装班の端くれの私は、ギューダ様がお召しになる衣装のデザインと縫製を担当した。自分から熱く志願した。ギューダ様のことは、地上にいる頃から知っている。地上観察班の友達の影響で。他の月人は、宝石としてのギューダ様に然程興味がないようだったけど、私の目には美しく輝いて見えた。火のない地上にあって燃えるような闘志と戦闘をする彼を、陰ながらずっとお慕いしてきた。……好きだなどと、口に出来る身分ではないけれど。今夜はパーティだけど、そんな簡単に和解出来るはずもない。それだけ、私達が彼らにしたことは重い。
「ここで着付けてもらえるって聞いたんだけど」
振り返って、ギューダ様の姿が見えて、思わず布の山に隠れる。声はあまり聞いたことがないから、気付かなかった。上品で滑らかな声。同僚がギューダ様を中へ通し、私の前に連れてくる。
「な、なんで」
「あんたの担当でしょうが。ギューダ様、こちらの者にお任せください〜」
呆れた視線を送る同僚に背中を叩かれ、背筋を伸ばす。ギューダ様は腰に手を当てて、なにか品定めをするように、私のつま先から頭のてっぺんまで見まわした。
「……よろしく。あんまりフリフリしたようなのは好きじゃないけど」
「はい、えっと。そう思って、シンプルなものを用意しました。お気に召すといいのですが……」
私が用意したのは、シンプルな燕尾服。地上にいた頃から、冬服の黒がよくお似合いだった。服をご覧になると、満足そうにギューダ様は笑った。
「いいね。着させてよ」
一糸纏わぬギューダ様に、カッターシャツから着せていく。恥ずかしくて目のやり場に困る。触れた指先から、熱を持つような感覚にクラクラした。ズボン、上着、靴、最後に手袋を。かっちり着込んだギューダ様は、やはり見惚れるほどに綺麗だった。
「ちょっと動きづらいけど、悪くないね」
足を踏み鳴らしたり、ぐっと拳を握り込んだり、ギューダ様はお召し物が馴染むように身体を動かした。それを、夢を見るような気持ちでぼんやり見つめていた。
「君。名前は?」
「へ?」
「名前。あるでしょう、それくらい」
気付けば、好奇心に彩られたその瞳から、逃れられなくなっていて。言葉を失う私に、ギューダ様は好戦的な笑みを向ける。
「僕のこと好きでしょ、君」
「は、」
「見てれば分かるよ。だから最高の服のお礼に、名前くらい覚えてあげる」
見透かされたことが恥ずかしくて、穴があったら入りたいし、ここから今すぐ逃げ出したい。けれど、一歩後ずさったのを見逃さないとばかりに、手首を掴まれてしまった。ぐるぐると目がまわる。
「逃さないよ」
「あ、う」
言葉にならない声が漏れる。近くで見る貴方は、やっぱりどこまでも美しい顔で、情熱的だった。
「もう一度訊くよ? 君の名前は?」
「ここで着付けてもらえるって聞いたんだけど」
振り返って、ギューダ様の姿が見えて、思わず布の山に隠れる。声はあまり聞いたことがないから、気付かなかった。上品で滑らかな声。同僚がギューダ様を中へ通し、私の前に連れてくる。
「な、なんで」
「あんたの担当でしょうが。ギューダ様、こちらの者にお任せください〜」
呆れた視線を送る同僚に背中を叩かれ、背筋を伸ばす。ギューダ様は腰に手を当てて、なにか品定めをするように、私のつま先から頭のてっぺんまで見まわした。
「……よろしく。あんまりフリフリしたようなのは好きじゃないけど」
「はい、えっと。そう思って、シンプルなものを用意しました。お気に召すといいのですが……」
私が用意したのは、シンプルな燕尾服。地上にいた頃から、冬服の黒がよくお似合いだった。服をご覧になると、満足そうにギューダ様は笑った。
「いいね。着させてよ」
一糸纏わぬギューダ様に、カッターシャツから着せていく。恥ずかしくて目のやり場に困る。触れた指先から、熱を持つような感覚にクラクラした。ズボン、上着、靴、最後に手袋を。かっちり着込んだギューダ様は、やはり見惚れるほどに綺麗だった。
「ちょっと動きづらいけど、悪くないね」
足を踏み鳴らしたり、ぐっと拳を握り込んだり、ギューダ様はお召し物が馴染むように身体を動かした。それを、夢を見るような気持ちでぼんやり見つめていた。
「君。名前は?」
「へ?」
「名前。あるでしょう、それくらい」
気付けば、好奇心に彩られたその瞳から、逃れられなくなっていて。言葉を失う私に、ギューダ様は好戦的な笑みを向ける。
「僕のこと好きでしょ、君」
「は、」
「見てれば分かるよ。だから最高の服のお礼に、名前くらい覚えてあげる」
見透かされたことが恥ずかしくて、穴があったら入りたいし、ここから今すぐ逃げ出したい。けれど、一歩後ずさったのを見逃さないとばかりに、手首を掴まれてしまった。ぐるぐると目がまわる。
「逃さないよ」
「あ、う」
言葉にならない声が漏れる。近くで見る貴方は、やっぱりどこまでも美しい顔で、情熱的だった。
「もう一度訊くよ? 君の名前は?」
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