短編
「ビクス、裁縫どこまでいった?」
「ここ縫ったら一着完成するよ」
衣装制作室で二人、日がな一日作業をする。レッドベリルがデザインをし、私が布を織る。裁縫作業は二人がかりで。最近は来春に向けて夏服を新調している。
「流石! ちょっと疲れたし、海でも見に行かない?」
海、と聞いて少し心配になる。ーーアクアマリンは、海辺で拐われたから。返答に困っていると、レッドも困った顔で笑ってみせた。
「ずっとそのまま、ってわけにもいかないでしょ」
「でも……」
「大丈夫よ。あんた置いて海に身を投げたりなんてしないから」
レッドがそう言うので、不安ながらも頷く。作業を一時中断して、学校を出る。秋が近づき、物悲しさを覚える風が吹いている。緩やかに死に向かう虫や花々は、次の命を結んでいく。……死ねない私達は、いつまでみんなの帰りを待てばよいのだろう?
「着いた〜やっぱ潮風って気持ちいいね!」
想像以上に穏やかなレッドベリルに、言葉を失ってしまう。波は静かに寄せては返す。波が自分の足に当たって、小さく砕けるのを、ただただ見つめる。
「アクアマリンのこと、もういいの?」
自分の呟きに驚く。そんなこと聞いてどうするというのだろう。慌てて口を抑え、失言を撤回しようとしたが、レッドベリルは私を宥めるように笑みを浮かべた。
「もういい、なんてことはないけど。今はあんたが大事だわ」
ずっと気がかりだった。アクアマリンと引き換えに得られた今の立場が。でも、レッドベリルがこうして海に来て、今私にかけてくれた言葉が答えなんだろう。
「ありがとう、レッド」
もう引け目など感じずに、素直に彼の隣に立っていよう。帰り道、私達は手を繋いで歩いた。
「ここ縫ったら一着完成するよ」
衣装制作室で二人、日がな一日作業をする。レッドベリルがデザインをし、私が布を織る。裁縫作業は二人がかりで。最近は来春に向けて夏服を新調している。
「流石! ちょっと疲れたし、海でも見に行かない?」
海、と聞いて少し心配になる。ーーアクアマリンは、海辺で拐われたから。返答に困っていると、レッドも困った顔で笑ってみせた。
「ずっとそのまま、ってわけにもいかないでしょ」
「でも……」
「大丈夫よ。あんた置いて海に身を投げたりなんてしないから」
レッドがそう言うので、不安ながらも頷く。作業を一時中断して、学校を出る。秋が近づき、物悲しさを覚える風が吹いている。緩やかに死に向かう虫や花々は、次の命を結んでいく。……死ねない私達は、いつまでみんなの帰りを待てばよいのだろう?
「着いた〜やっぱ潮風って気持ちいいね!」
想像以上に穏やかなレッドベリルに、言葉を失ってしまう。波は静かに寄せては返す。波が自分の足に当たって、小さく砕けるのを、ただただ見つめる。
「アクアマリンのこと、もういいの?」
自分の呟きに驚く。そんなこと聞いてどうするというのだろう。慌てて口を抑え、失言を撤回しようとしたが、レッドベリルは私を宥めるように笑みを浮かべた。
「もういい、なんてことはないけど。今はあんたが大事だわ」
ずっと気がかりだった。アクアマリンと引き換えに得られた今の立場が。でも、レッドベリルがこうして海に来て、今私にかけてくれた言葉が答えなんだろう。
「ありがとう、レッド」
もう引け目など感じずに、素直に彼の隣に立っていよう。帰り道、私達は手を繋いで歩いた。
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