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名刺SSまとめ

君は美しい/プラシオライト

「おはようアデュー! 今日も一段と美しいね!」
「そうね。おはよう」
跪き讃えるポーズで挨拶しても、一瞥もくれず通り過ぎる。返事があっただけ、今日は機嫌が良いようだ。アデュラリアの背中を追う。
「アデュー、今度西の浜に夕陽を見に行かない? 天気が良い日に……西日に照らされる君はさぞかし美しいだろうなぁ」
「気が向いたらね」
「いつでも待ってる! 君の美しさには花も自信をなくして俯く……」
どんな賛辞を並べても、君の瞳に僕は映らない。けれど、諦めることはない! 僕の想いが君に届くまで、僕は君へのラブコールをやめない。

戯れ/カーネリアン、クリソプレーズ

雲一つない、快晴。平原の向こうに、小さな予兆の黒点が現れる。
「来たな。今日も競走しようぜ」
「当然。足引っ張らないでよね」
「誰に向かって言ってんだよ」
カーネリアンとクリソプレーズの二名は、黒点に向かって一直線に駆け出した。戦闘に恐れはなく、二人は笑っていた。月人と衝突すると、華麗に舞って霧散させていく。
「俺様が十七! 俺様の勝ちだな!」
「あら、私は十八倒したのだけど」
「数え間違えてねぇか? そんないたか?」
勝敗で揉めるのはいつものこと。若きエース二人は今日も無事に生き残った。

自重/デュモルチェライト

グランディと今日の会議のまとめをしている。二人黙って、筆を走らせる。ふいに、窓から陽の光が陰った。見るからにグランディはそわそわしだす。
「グランディ」
「あ、あぁ。分かっている」
またしばらく作業を続ける。やがて空に厚い雲が出始める。
「……雲が出ている間は、襲撃はないと思うんだが」
「作業が途中です」
作業を続ける。やがて、ついになにも言わずにそろりとグランディは席を立つ。見逃すものか。
「グランディ! 自重してください!」
「ちょっとぐらい、放浪しても……」
「ダメです!」

知らない花/シトリン

見たことのない花を見つけたから、持ち帰った。綺麗な花だけれど、私は名前を知らない。
「俺も知らないな」
「私も知らないわ」
ビオランとクリープに訊ねてみたけど、知らなかった。シェーラなら、知っていたのかな。憧れの石を思い出して、長期休養所に会いにいく。私と同じ、黄色い貴方。
「シェーラ、素敵でしょ? 名前を知ってたら教えて欲しいな」
話しかけても、ここにはいない。貴方がいなくなって、私はとても落ち込んだけれど。変わらなくちゃと強く思ったの。だから、ありがとう。

君なら許す/アイドクレース

「アイド〜……ちょっといい……?」
「どうしたデマン? そんなとこいないでこっちおいで!」
ものすごく申し訳なさそうな顔で、デマンがこちらを見ている。そんな顔をされると、あたしの方が困ってしまう。デマンは恐る恐るこちらに近づくと、意を決したように頭を下げた。
「ごめん! アイドが作った椅子、壊しちゃった……」
そのまま動かないデマンに、かける言葉が見つからない。椅子が壊れて悲しいのだが、必死に謝るデマンは可愛い。
「な、なんてことないさ〜! また作るから。気にしないで! ね?」
他の奴ならこうは言わないな〜と、あたしは自分の甘さを自覚する。

散らかり放題/ビオラン

「なにをどうしたらこうなるわけ?」
「う〜ごめんよビオラン……」
ペアのアイドクレースは、本当によく物を散らかす。木工の作業に没頭すると周りが見えなくなるらしく、ゴミも材料も工具も散らかり放題だ。しかも、本人は片付けが苦手ときてる。
「あたしもこれでも気をつけてるんだけどさ……」
「出来ない言い訳は聞いてないの」
ピシャっと言い放つと、アイドは縮こまった。俺は緊張をほぐすように、笑ってみせた。
「ま、俺が片付けるんだからいいけど」
別に怒ってないのだ。これが俺の仕事だし。

蝶々/スピネル

「わー蝶々だー!!」
「っ、やめなさい」
ターフェが蝶を捕まえようとするのを、咄嗟に止めた。ターフェは不思議そうな顔をしたが、すぐに笑顔になってやめてくれた。ほっと胸を撫で下ろす。
「スピネルは、蝶が好きなんすね!」
『スピネルは蝶が好きなのね』
遠い昔に、シェーラに言われた言葉と重なる。そうか、俺は蝶が好きだったんだな。
「うん、俺は蝶が好きなんだ」
「そっか。スピネルの好きなものが知れて、俺嬉しいっす!」
ターフェが思い出させてくれた、懐かしく温かい気持ちに、久しぶりに笑えていた。

水面の月/パライバトルマリン

「……眠れねぇや」
早めに布団を被ったが、眠気は来なくてベットを抜け出した。時刻はおそらく日付が変わる頃。こんな時間に起きてる石なんていねぇ。弟がいた時には、夜も退屈せずに済んだのだが。月を映す水面を見ていた。真っ黒な水面の下、クラゲが揺らめいているのが分かる。その中に、ショールが紛れ込んでないか、なんて。ポップな幻覚も最近は見ない。
「なにしてるの……?」
「お、マラヤ! 寝てないなら話そうぜ〜」
「僕が話すことなんてないよ……」
「俺っちが話すからいいの!」
今の相方は弟と違う方向に暗いけど。こっちも上手いことやってるよ。だから、あの時助けてくれてありがとな、ショール。

星の光は何処からくるのか/セレスティン

「星の光は、何処からくるのですか?」
好奇心のままに先生に訊ねた。すると、先生は優しく、丁寧にお話ししてくださったのだけど、私には全く理解が出来なかったのでした。
「アングレー、星についての教科書を作って!」
「レスティーが作ったらいいでしょう……小生、星は専門外です」
「バカな私に出来るわけないでしょ〜!」
項垂れて泣きつけば、アングレーはため息を吐いて諦めたようだ。
「仕方のない石ですね、貴方は」
賢い同属の彼に、私はいつも甘えている。

言葉足らずの愛/スピネル

シェーラと組むようになって、気づいた事がある。
「あら、綺麗なお花!」
可憐で穏やかなシェーラは、月人を目の前にすると豹変する。今まで見た事ないから知らなかった。……恐らく、変貌する前にギューダが全て倒していたんだ。シェーラに闘わせないために、ギューダは強かった。そうなんだろ、と言ったら、多分否定するんだろうけど。
「どうしたの、スピネル?」
「なんでもないよ」
愛されていたんだね、なんて。僕から伝えるのは馬鹿だと思うから。今度会えたなら、ちゃんと伝えなよ。
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