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嫌われ・嫌悪・病みなど特殊夢

破壊衝動/フォスフォフィライト

俺は他の奴よりも硬い。まず誰と擦れても相手が壊れる。だから常に長めの手袋をしている。不便とは思わないが。
「あ、蝶々だ〜」
呑気なフォスフォフィライトを見る。衝動的に触れたくなる。直に。君は脆いから、俺なんかが触れたらさぞかし派手に砕け散るんだろうなぁ。崩れ落ちるその瞬間が見たい。歪んだ欲望を、この身体は抱え込んでいる。
「いけないいけない……怒られる」
フォスの前では特に気をつけている。あの子を見ると衝動が強くなるから。震える自分の腕を押さえつけた。

破滅衝動/ボルツ

貴方は誰よりも強く硬い。その漆黒の身体で砕いて欲しくて。直に触れようと手を伸ばす。あと少し、のところで聡い貴方に手を取られてしまった。
「なにをする気だ」
「ねぇ、触れてよ」
脆い僕の身体が、貴方の手で粉々になるのを望んでいる。貴方が触れるだけでつけられる傷を、たくさん抱えて生きてみたいのだ。刻み込まれた貴方の痕に、安心して眠りにつきたい。
「触れて」
貴方は黙って僕を睨みつけ、やがて離れていった。心が砕かれるこの瞬間すら甘い。

貴方になりたい/フォスフォフィライト

「どうしたの……?」
月から帰ってきたフォスを引き倒し、馬乗りになった。フォスには答えず、私はフォスとラピスの境目に触れて、締め上げる。ミシ、と嫌な音がした。
「ちょちょちょ、やめ」
貴方の一部になりたかった。脚だって腕だって、貴方のためなら投げ出せたのに。頭を差し出す覚悟がなかった自分に、心底失望した。貴方と私溶け合って、貴方になってしまえば、この孤独は癒えると思うのに。

堕ちる/イエローダイヤモンド

「イエロー、ルビーってどんな奴だったの?」
「ルビーかぁ……」
ルビーになんて興味はない。貴方にそんな表情をさせる奴のことなんて、これっぽっちも。ただ、昔の話をする時に見せる、心の隙間が僕は欲しいだけ。その隙間に滑り込んで、支配して、僕だけのものになって欲しいだけ。
「僕はずぅっーと、お兄様と一緒だよ」
暗示のように僕は口にする。縋るような顔でお兄様は頷く。お兄様の全てが、僕の元へ堕ちる日を夢見ている。

不完全な治療/ルチル

「ルチル〜また欠けちゃった」
「あらあら……こちらで診ます、どうぞ」
なにも知らない顔で、彼は私の元へ訪れる。自分だけ頻繁に欠けること、疑問に思わないのだろうか。バラバラになった彼の手を、丁寧に元に戻していく。糊を、少なくして。
「ルチルすごい〜ありがとう」
「どういたしまして。なにかあればいつでも頼ってください」
おそらく、三日もすれば傷口が開いて、また私の元へ来る。私のせいとも知らずに。貴方はずっとずっと、この私を頼ればいいのだ。

失うならいっそ、/イエローダイヤモンド

今まで多くのものを失った。脚が速いだけで生き残って、気がつけば最年長だ。俺のせいで、ルビーもサファイアもグリーンもピンクもいなくなった。
「お兄様?」
心配そうに覗き込む君を見つめる。優しい君を、俺のせいで失いたくない。これ以上、背負いたくない。気がつけば、手袋を外して手を伸ばしていた。
「お兄様っ……!」
無残に砕ける君を拾い集める。そうだ、このまま箱の中に閉じ込めてしまえば、拐われることはない。大事に大事に仕舞ってしまえば。失うことは、ない。

辛い、苦しい、幸せ/シンシャ

「僕のために花を摘め」
「なんで俺が……」
「お前が摘んだ花でなければ意味がない」
俺が花に触れれば、全てダメになることは知っているだろうに。お前は俺にそれを求める。指先が震えて、躊躇っていると、お前はまた言葉を重ねた。
「ここでお前を割ってもいいんだぞ」
手袋が外された腕をかざされて、肩が揺れる。お前に触れられたら俺なんかは粉々だ。心の中で謝りながら、花を手折る。瞬く間に毒で萎れてしまう。それを受け取って、お前は無邪気に笑った。
「ありがとう」
その言葉で、満たされてしまう自分がいた。

君に混ざる/アンタークチサイト

日が沈み、真っ暗な君の部屋に忍び込む。まだ水槽の中、眠っている君に僕の顔はどう映っているだろう。器に溜めた水を、少しずつ君の中へ注ぐ。
「これでずっと一緒だね」
水には僕を削って溶かし込んである。冬になって君が固まれば、文字通り僕らはひとつになる。想像するだけでゾクゾクする。君の身体を形作る僕を。
「冬が楽しみだなぁ」
全て注ぎ込んで、軽くかき混ぜる。君は渦巻いて、やがて静かになった。何事もなかったように部屋を出る。なにも知らないで目覚める君を待ち望む。
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