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ゴーストクォーツ、アメシスト84、アメシスト33、カンゴーム、ラピスラズリ

変わらない真実/カンゴーム

貴方が「カンゴーム」という自分の名前を、忘れていくのが少し寂しかった。強そうな良い名前。
「カンゴーム」
「その呼び方、もうやめろって言ってるだろ〜! はい、お前の分のクレープ」
渡されたクレープをかじりながら、二人街を歩く。私達はあの日から変わってしまったのだろうか。本当は変わっていないのだろうか。
「なんか心配なのか? 元気ないぞ?」
「うん、大丈夫」
「お前と俺は友達なんだから、遠慮なんてするなよ!」
笑った貴方を見て、友達だと言う貴方を見て、心底安心する私がいる。どう変わっても、貴方は貴方。

舞闘/アメシスト

「「大丈夫〜? 危なかったね〜」」
目の前で起きたことに呆然としてしまって、返事が出来ない。白粉花の実を集めていたら、月人に襲われた。アメシストの二人が駆けつけてくれて助かった。
「もう大丈夫だよ」
「安心して、一緒に帰ろう」
二人に引っ張り起こされて、なんとか立ち上がる。この地に立てていることが不思議に思えた。
「二人とも、綺麗だった」
思わぬ言葉が口をついて出る。アメシストは目を見開いた後、緩やかに笑った。舞うような闘いに心を奪われていた。

嫉妬/アメシスト84

「先生の研究は本当にすごいの!」
エイティが話す先生は、僕らの先生ではなくなった。月人のバルバタの話を、エイティはよくするようになった。
「先生が作るナポリタンが最高なんだ〜」
幸せそうな顔をするエイティが憎らしくて、僕は生返事をする。君は恋をしてるんだろうか。ただ研究熱心なだけだと思いたい。
「研究、頑張ってね」
誤魔化すように笑いかければ、何も知らない顔で君も笑う。知られたくないような、全てぶちまけてしまいたくなるような、恋の病に侵される。

ばあ/ゴーストクォーツ

貴方がいるはずの図書室に足を運ぶ。右を見ても、左を見てもゴーストはいない。鐘は鳴ってないから、今日は穏やかな日のはず。こんな日は貴方といたいのに。窓から差す陽が温かくて、それが僕の気持ちをかえって急かすようだった。どこにいるの?
「ばあ」
「ひゃっ」
たまらなくなって、名前を呼びそうになった時、貴方はひょっこり顔を出した。驚いた僕の顔を見て、くすくすと笑う。
「酷いよ、ずっといたんだね」
「ごめん、だって可愛いから」
僕の不安を取り除くように、ゴーストは僕の頭を撫でた。溶けるような時間が僕の居場所だった。

問いと答え/ラピスラズリ

ラピスの頭の中を覗いてみたいと、ずっと思っていた。
『君には秘密だよ』
いつもそう言って、緩やかに笑っていた。ラピスの問いかけは難しくて、真意を知ることは遂になかった。君との思い出のなにを選んでみても、そこには謎が残るばかり。
「ラピスの頭はどう?」
「どう? うーん、疲れる?」
ニューフェイスのフォスに訊ねると、そう返ってきた。確かに、ラピスとの問答は疲れた。でも、君から与えられる疲弊感が、僕は好きだったよ。ねぇ、またその瞳で僕を抉り取ってよ。見透かした顔で微笑んでよ。

祈り/カンゴーム

ゴーストの中の子に会えたら、聞きたいことがあった。
「ゴーストの中で、なにを考えてたの?」
カンゴームは私の問いに目を見開いた。それから視線を逸らして、首に手をやり、ため息を吐いた。おかしな事を聞いただろうか。
「……祈ってたよ」
なにか煩わしいことを思い出す目で、そう答えた。
「俺は、ずっと祈ってた」
当然、ラピスの事を祈ってたんだと。私は疑いもなくそう信じていた。でも、きっと真実は違うのだと。信じたくない自分が、ぽつり取り残されていた。

嘘でいい/ラピスラズリ

「海は魚の流す涙という物質で出来ている」
魚ってそんなにたくさん涙を流すんだと思ったら、嘘で。
「雲は植物が出した花粉の塊なんだ」
だったら黄色いのでは?と思ったら、これも嘘。
「いつかきっと、みんな元通りに帰ってくるよ」
打ちひしがれる私にかけた言葉も、きっと嘘だった。
「君のことを誰よりも愛しているよ」
あの言葉が嘘だったのか本当だったのか、答えには自信がない。それでも、全部嘘でもいいと思う。全部、嘘でいいから。
「もう一度私に笑いかけてよ、ラピス」

言葉にできない/ゴーストクォーツ、ラピスラズリ

ラピスラズリを失った気持ちを、私は言葉にすることができない。こんな想いの名前は知らない。
私はゴーストクォーツが好きだった。だからあの子の想いを意のままにする、ラピスラズリが憎かった。いなくなればいいのにと、いけないことを思ったりもした。振り向かないゴーストがダメなのだと、ゴーストを悪く思ったりもした。
ラピスラズリがいなくなった。これでゴーストは私のもの。そう思ったのに、ゴーストはいっそうラピスを求めた。悲しい。悔しい。寂しい。でもこの想いを、ぶつける相手は誰なのか?分からなくなっていた。
渦巻く嵐のようなこの想いが、ラピスラズリへのものなのか、ゴーストクォーツへのものなのか、もう判別がつかないのだ。

好きになってほしい/ウェレガト

「お前を絶対乗せたいアトラクションがあんだよ」
ウェレガトに手を引かれて、連れてこられたのは遊園地。目が眩むような月の世界には、まだ慣れない。ビカビカと光って、グルグルと回って、私が壊れてしまうのではと思った。
「楽しいか?」
「そうね、すごく……」
言葉とは裏腹な態度で、私はその場にへたれ込んだ。ウェレガトは困ったように笑う。
「悪い、無理させた。お前とはもっと仲良くなりたいとずっと思ってたからさ。月も好きになってもらいたいんだ」
月に来てウェレガトは幸せそうだ。それだけで私は満足だけれど、私にも月を好きになって欲しいと言う。
「努力するよ」
好きな奴と好きなものが一緒なのは、やっぱり嬉しいものね。
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