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ジェード・ユークレース・ルチル・パパラチア・ペリドット・スフェン

安らかな眠りを/パパラチア

部屋に忍び込み、君の寝顔を眺める。ふと、普段は逆の立場なんだろうと気づいた。静かな部屋に二人きり、夜は更けていく。
「いい夢見てるか?」
布団の上から、身体に沿って手で撫ぜる。君に出逢ってから、夜に眠るのも少し怖くなったと言えば、君は笑うだろうか。次に目覚めた時に、君がいなかったら。そう思うと。
「注意深く、慎重にいてくれよ」
俺では、君を守れないのだから。それは悔しくて歯痒い事実。叶うなら、いつまでも君が隣にいますように。

不良宝石/ジェード

「またお前は朝礼をサボって……こんなところにいたのか」
「さーせーん。反省してまーす」
「全っ然そんなふうに見えないが!?」
朝礼をサボると、必ず議長が僕を探しにくる。今日は図書室の本棚の影にいた。昨日は鐘の下。一昨日は学校裏。どこにいても、最後には議長が見つけてくれる。
「反省してるって〜もう少し見つかりやすいとこに今度はいるよ」
「私は朝礼に出て欲しいんだが!?」
僕が朝礼に出ない理由くらい、気づけよ馬鹿。

貴方がくれた情熱/ペリドット

紙に触れると思い出す。優しく手解きしてくれた貴方を。一緒に一番の紙を目指した日々を。
『いい紙、出来たか?』
私が作業していると心配そうに覗き込んで、あれこれとアドバイスしてくれた。でも、当の本人は紙作りの時無言で、少しでも邪魔をすれば怒られた。
『お、この紙いい出来じゃないか!』
褒めてくれた声も表情も、今でも覚えている。また聞きたい。最高の紙が出来た時の、貴方の反応が見たい。貴方がくれた情熱が、私を紙に埋もれさせる。

また会う日まで/スフェン

貴方を仕舞う箱を作った。いつも作る物より頑丈になるよう、丁寧に作った。貴方の破片を収める。光を受けて反射するそれを、ひとつ手に取り太陽にかざす。
『スフェンはキラキラ光って眩しいなぁ』
微笑む貴方の顔が浮かぶ。今でも鮮明に。言わなかったけれど、俺よりあんたの方が、よっぽど輝いて見えてたよ。
『スフェンが作った物、あったかくて落ち着く』
俺が作った椅子に腰掛けて、二人笑い合ったこと。帰らないあの日に、再び出逢えることを信じて。

止まった時間/ルチル

緒の浜へパズルのピースを探しにきた。散らばる石の中に、あの子と同じ物を見つけてドキッとする。久々に見るその色を、拾い上げて透かしてみた。反射する光に目を細める。
『ルチルのためなら、なんだって出来るよ』
そう苦しそうに告げたあの子を、私は見て見ぬフリをした。愛おしさ半分、厭わしさ半分。決着をつけずに時が経ち、そのうちにあの子は拐われた。
「私の側にいなかったら、意味がないでしょう……馬鹿な石」
あの子との時間は止まったまま。また動き出す時が来たら、その時は受け入れられるだろうか。

落ち込む/ジェード

黄昏時、膝を抱えて夕陽を見つめるジェードを見つけた。
「どうしたの?」
「……自分に自信がなくなった」
聞けば、フォスに忘れられたのだそう。みんなが持ち込むあれやこれやに、疲れてしまったようだ。
「どうせ私は雑用なんだ……思慮が足りないから」
塞ぎ込むジェードの背中をさする。君に寄り添える言葉を探して、時間だけが過ぎる。
「ジェードが優しいから、みんな甘えてるんだよ」
ようやく見つけた言葉は、君に届いただろうか。君が立ち上がるまで、僕は側にいた。

雨の色/ユークレース

雨に色があるのなら、君と同じ色をしていると思う。
「また雨を眺めているの? 僕も隣にいていい?」
「ユーク……もちろんどうぞ」
意中の人が目の前に突然現れて、僕は動揺する。しとしとと降り続く雨を眺める。時折り、君を窺い見る。雨が好きだった。優しく降り注ぐ雨粒は、君に似ている気がするから。
「雨って落ち着くわよねぇ。僕も好きよ」
「うん、好き」
その好きが僕のことならいいのに。誰にでも優しい君の、一番になる方法は見つからないけど、雨は降り続いてほしい。

寝起きの貴方を見てみたい/パパラチア

貴方が起きているところに会ったことがない。いつも貴方は箱の中に横たわって眠っている。僕が生まれた時からずっと。
「今日も起きない?」
「どうでしょうねぇ……」
苦笑するルチルの顔は疲れていた。こんなにルチルが頑張っているのに、貴方は目覚めない。
「早く喋りたいな」
貴方はどんな声で、どんなことを話すのだろう。どんな瞳で、どんな表情を見せるのだろう。なにも知らない貴方のことが、こんなにも好きなのだ。

徹夜/ルチル

月人との大きな戦闘があった。僕は砕かれてしまって、しばらく眠っていた。目を覚まして立ち上がると、違和感がある。足が左右逆についていた。
「ルチル、これ……」
「ごめんなさいすみません私としたことが申し訳ない」
僕よりルチルのが取り乱していた。ルチルはふらふらで僕に近寄る。
「ルチル、何徹目?」
「まだ三徹です」
「よし、寝て?」
「いいえ、寝るわけには」
無理をしようとするルチルの両肩を抑えつける。
「寝ないと割っちゃうよ?」
僕のことなんてあとでいいから、ルチルに休んでほしい。

冬眠前/ユークレース

冬眠前、みんな翅を伸ばして遊んでいる。それを一歩引いた所で、膝を抱えて眺める君に声をかける。
「まだ眠くない?」
「そろそろ寝るよ」
「ふふふ。そうね」
君の隣に座る。こうして無事に冬を迎えられたことが嬉しい。控えめな君が、今年も僕の隣にいたことが嬉しい。
「今年もありがとう。来年もよろしくね」
「うん、当然」
外は雪が降り始めている。睡魔に襲われる。君の隣で眠りにつく。夢の中でも君に会いたい。そして、目覚めたら一番におはようを告げよう。
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