ボルツ・ダイヤモンド・イエローダイヤモンド
強さと優しさと/ボルツ
「ボルツが助けてくれたのよ」
月人に襲われて、目が覚めたら最初に教えてもらったこと。ずっとお礼が言いたいのだけど、恐怖に足がすくんでしまう。思い出してしまう。最後に見たのはボルツの長い髪だった。彼が助けてくれたことを分かっているのに、砕かれた瞬間を思い出して声が出なかった。
「おい。……体調は、もういいのか」
震える私に、ボルツは戸惑いながら声をかけてくれた。言葉もなく頷く。
「ならいい」
去っていく背中を見つめる。私は強くなりたかった。ボルツのように、優しさと強さを持った石になりたい。そう強く思った。
後悔/ボルツ
昨日よりも速く走る。今度は必ず間に合うように。昨日よりも鋭く振り下ろす。今度は必ず散らせるように。昨日よりも強くなる。もう後悔などしないように。
「……必ず取り戻すから、待っていろ」
あの日、僕が未熟だったからあいつは連れ去られた。ボルツは強いね、と。柔らかく笑うあいつを僕は裏切った。あの日あの時を、後悔しない日はない。あと少し速く走れていたら。あと少し大きく踏みこめていたら。今の僕なら、あいつを守れるのに。無意味などうしてに、自分でも呆れる。首を振り、空を睨みつける。必ず、取り戻す。そのために僕は強くなるんだ。
真夜中/イエローダイヤモンド
仲間の喪失に眠れなくなるのが、僕だけだと何故錯覚したのだろう。虚の岬まで歩いてきた。先客がいた。イエローは虚ろな眼で、打ちつける波が崩れるのを見ていた。
「……あぁ、お前か」
ぼんやりとまだ気付いていないかのように、力のない声で言った。僕と分かっているのか疑問だ。
「ここにいるとさ、落ち着くんだよ」
こんな寂しい場所が落ち着くのだなんて。それは嘘ではなかった(それはなんて悲しいことなのだろう)。今にも飛び降りそうなイエローを、そっと掴んで大地と結びつける。
「帰ろう」
イエローが意味を理解するまで、僕は帰ろうと言い続けた。夜を抜け出すように、空が明るくなる。星が消える頃、僕たちは学校に帰った。
「ボルツが助けてくれたのよ」
月人に襲われて、目が覚めたら最初に教えてもらったこと。ずっとお礼が言いたいのだけど、恐怖に足がすくんでしまう。思い出してしまう。最後に見たのはボルツの長い髪だった。彼が助けてくれたことを分かっているのに、砕かれた瞬間を思い出して声が出なかった。
「おい。……体調は、もういいのか」
震える私に、ボルツは戸惑いながら声をかけてくれた。言葉もなく頷く。
「ならいい」
去っていく背中を見つめる。私は強くなりたかった。ボルツのように、優しさと強さを持った石になりたい。そう強く思った。
後悔/ボルツ
昨日よりも速く走る。今度は必ず間に合うように。昨日よりも鋭く振り下ろす。今度は必ず散らせるように。昨日よりも強くなる。もう後悔などしないように。
「……必ず取り戻すから、待っていろ」
あの日、僕が未熟だったからあいつは連れ去られた。ボルツは強いね、と。柔らかく笑うあいつを僕は裏切った。あの日あの時を、後悔しない日はない。あと少し速く走れていたら。あと少し大きく踏みこめていたら。今の僕なら、あいつを守れるのに。無意味などうしてに、自分でも呆れる。首を振り、空を睨みつける。必ず、取り戻す。そのために僕は強くなるんだ。
真夜中/イエローダイヤモンド
仲間の喪失に眠れなくなるのが、僕だけだと何故錯覚したのだろう。虚の岬まで歩いてきた。先客がいた。イエローは虚ろな眼で、打ちつける波が崩れるのを見ていた。
「……あぁ、お前か」
ぼんやりとまだ気付いていないかのように、力のない声で言った。僕と分かっているのか疑問だ。
「ここにいるとさ、落ち着くんだよ」
こんな寂しい場所が落ち着くのだなんて。それは嘘ではなかった(それはなんて悲しいことなのだろう)。今にも飛び降りそうなイエローを、そっと掴んで大地と結びつける。
「帰ろう」
イエローが意味を理解するまで、僕は帰ろうと言い続けた。夜を抜け出すように、空が明るくなる。星が消える頃、僕たちは学校に帰った。