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ラリマー

君に背負わせた全て、/ジェード

朝はちゃんと起きるけれど、朝礼に出るのは嫌いだった。遠く後ろの方から、議長の言葉を聞く。かつては、自分が立っていた場所。背負いきれなくて、投げ出して逃げ出した場所。
「ラリマー、モリオンのペアは西の浜へ」
ジェードと少しだけ目が合う。目を逸らすように頷いて答えた。お前は辛くないか。そこはお前の望んだ地点か。そんなこと、彼に縋って押し付けた俺に言えるはずもなく。そんな資格もないけれど、彼が楽になれる方法を探している。

望むことすら/ユークレース

ユークレースを前にすると、言葉を失う。逃げ出したくなる。けれど、
「ラリマー」
その声を聴くと、驚くほどに心が安らぐのは何故だろう。相反した感情に支配されて、身動き出来ない。
「また書記の仕事を手伝ってくれる?」
「……もちろん」
ぎこちなく笑えば、返される柔らかい笑顔。いつだってそれに救われた。いつだってそれに苛まれた。優しさは時に、苦しみに変わる。君に導かれるまま、廊下を歩く。君が最期まで連れて行ってくれたなら、なんて。そんな無責任なことは言えない。

恋をする/ヘミモルファイト

ラリマーの背中を見つけて駆け寄る。僕と似た色の髪が揺れる。君と色がそっくりなことは僕の自慢。
「ラリマー! どこか行くの?」
「ヘミモル。うん、ペリドットに紙を貰いに行くんだ」
「一緒に行っていい?」
ラリマーが頷くので、ぴったりついて歩く。君の隣に立つだけで、僕の気分は上がって輝きは増す。
「なんかご機嫌だな?」
不思議そうな君は鈍感だ。もう少し僕の気持ちを知って欲しいけど、今はこのままで。

贖罪/イエローダイヤモンド

俺はイエローダイヤモンドに合わせる顔がない。
「やっほ。今日方角同じだろ? 一緒に行こうぜ」
「あ、ああ」
イエローはお構いなしに話しかけてくる。ほんの少しの時間、一緒にいるだけで気まずい。察したのか、イエローは立ち止まって笑いかける。
「お前のせいじゃないよ」
「いや、でも」
「お前のせいじゃない。みんな、俺と組んでたせいだ」
一番苦しいのはイエローなんだと知っているのに。その言葉で楽になる自分が嫌だった。責任から逃れることばかり考える、自分が嫌いだった。

教科書作り/ペリドット

「……ペリドット、ちょっといいか?」
「そろそろ来る頃だと思ってたよ」
申し訳なさそうに訪ねてきたラリマーに、笑いかければほっとした顔になった。
「新しい子が生まれたから、教科書を作ってあげたくて……紙がたくさんいるんだ」
「分かっている。この時期になるとお前は嬉しそうだから」
「え、俺そんなに浮かれてる……?」
気恥ずかしそうなラリマーに、声を出して笑ってしまった。ラリマーはますます決まり悪そうにする。
「仕事が好きなのは良いことだよ」
彼の仕事を支えられるなら、私の仕事にも意味がある。

光/ジェード

「ぎちょう」
生まれたてのぎこちない発音で、ジェードが俺を呼ぶ。三日寝ていない俺はフラつきながら、ジェードの側に寄った。
「どうした?」
「ぎちょうはものしりだって、みんながいってた」
「……そんなことはないよ」
「がんばってるって」
「そんなことない」
俺が間違わなければ、皆んなは月に行ってない。俺は間違っている。
「わたしは、ぎちょうみたいになりたい!」
その言葉が、毒のように俺を蝕んだ。ジェードが俺を救い出す光に見えた。
「……なってみるかい? 議長に」
俺はその時、自分が楽になることしか考えてなかった。ジェードが俺の身代わりになっても、それでいいと思ってしまったんだ。ジェードという光に、俺の目は眩んだんだ。

問題児/ゴーシェナイト

「ゴーシェ! ゴーシェどこだい?」
先輩が僕を探す声が聞こえる。どこまで聞こえるか興味が出て、さらに学校から離れる。そのうち、風に攫われて聞こえなくなってしまった。そろそろ戻ろうかな、と考えていると。
「見つけた」
「わっ! なんで分かったの?」
「なんとなくだけど、俺が探してるのを面白がってるだろ。だから静かに探した」
ラリマーはため息を吐いて、僕の手を取った。そのまま、繋いで歩く。
「本当に、困った子だ」
ラリマーに世話を焼かれるのは好きだった。手を繋ぐ不自由も、嫌いじゃない。次はなにをしようか。

好きな子/ヘミモルファイト

「ラリマーは好きな子いないの?」
どこか不安気なヘミモルの問いに、俺は言葉を失くした。特定の誰かを好きになったことはないと思う。もし好きになったとしても、それは間違いであると感じてしまう。
「いやぁ、いないかな」
誤魔化すように笑うしかなかった。俺が誰かを好きになったとして、許されるとは思えなかったから。ヘミモルはほっとしたように笑う。それが少し不思議だった。
「そっか。好きな子が出来たら教えてね!」
笑顔で指切りを迫る彼に、流されて約束をする。誰かを好きになってもいいだろうか。誰かを愛したら、罪深い自分は変われるだろうか。
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