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モリオン

キミヲオモウ/ラピスラズリ

雨で見廻りがない日には、君を箱から取り出して、見つめ合うのが定番だった。雨なんて止まなくていい。君とこのまま時を過ごして、やがて溶け合えてしまえたらいい。
「あの時、なにを考えてたのぉ?」
君は答えない。君の声が恋しい。頭だけでも、喋ることが出来たらいいのに。君のインクルージョンは親切じゃない。君の考えてたことも、君の心も、なに一つ僕は知ることのないまま。いや、本当は、なに一つ知れなくともいいんだ。君の隣にいれたら、僕はそれだけでよかったんだ。

大好きな兄/ゴーストクォーツ

気配を消して、そぉーと背後に立つ。あと数歩で、手が肩に触れる時。
「……なぁに? ゴーストぉ」
兄さんが振り返って、僕を見つける。兄さんを驚かせた試しがない。顔を見合わせて、二人でくすくす笑う。
「なんでもないよ。ちょっとびっくりして欲しかっただけ」
「残念だったねぇ。あ、そうだ。手伝って欲しい事があるんだけどぉ」
きっと死の研究に関する事で、ろくな事じゃない。でも、みんなは嫌がるけれど、僕はありのままの兄さんが好きだから。
「いいよ。なにをしたらいいの?」

予防線/エクメア

「人間を作る研究の方はどうだい? 進んでいるかな?」
「……ご覧の通りだよ。行き止まりさぁ」
煩わしい視線を投げても、エクメアは怯まない。そうか、あまり無理をせず。とだけ言って去った。長いため息が出る。
「僕がどうなろうと、知ったこっちゃないくせに」
僕の研究は彼の予防線だ。フォスが失敗した時のための。僕の願いが叶うかなんてあいつにはどうでもいいことで、僕は良いように利用されてるだけだ。だから、優しい素振りが鼻につく。
「思惑が外れればいいのにねぇ。いい気味」

試したい/ラピスラズリ

「僕、実は好きな石がいるんだ」
「……ふーん?」
戸惑いを隠す君に、僕はにんまり笑った。そんな石など存在しない。僕を好きな君が、いったいどんな表情をするのか見たいだけ。真っ赤な嘘がバレても、バレなくてもどちらでもいい。ただ、君がどんな反応をするのかに興味がある。
「ちっとも気持ちは伝わらないんだけどね」
「キャキャキャ……君、分かりにくいもの」
つまらない結果に、ちょっと退屈する。思ったより君は動揺しない。次はなにをしよう。好奇心のままに君で実験を繰り返すのだ。

受け入れたい/ラピスラズリ

「僕、実は好きな石がいるんだ」
「……ふーん?」
誰そいつ。ラピスを睨みそうになって、軽く下を向く。目の端でにんまり笑う彼を見て、直感で嘘なんだと気づく。心底安心する自分を嘲笑う。君がなにをしようと、笑って受け入れるだろう。
「ちっとも気持ちは伝わらないんだけどね」
「キャキャキャ……君、分かりにくいもの」
なに一つ、掴みきれない君を愛している。君が僕の気持ちを利用しようとも。僕を傷つけようとも。その好奇心ごと愛している。計り知れない瞳に恋をしている。

歳上ぶる/アレキサンドライト

「もぉ〜あんたは皆んなに迷惑かけて!」
「研究は君だってするんだから、気持ち分かるだろぉ」
「私は迷惑かけてないもん!」
死の研究で無茶をしたら、アレキちゃんに怒られた。だって好奇心に勝てないんだから仕方ないじゃないか。
「あんた、もうちょっと落ち着けないわけ?」
「説教はこりごりだよ……クリソベリルの真似ぇ?」
イライラして言ってしまったが、まずかったかなと伺い見る。アレキは一瞬苦い顔をした後、ため息を吐いた。
「あんたのこと、頼まれてる気がしてんのよ。あの子に」

結婚式のあとで/カンゴーム

「綺麗だったよ」
結婚式というものが終わって、変貌を遂げた弟に声をかける。月に来てから笑顔が増えて、穏やかな暮らしを手に入れた弟に安堵する。
「本当? ありがとう! ……兄さんも月に来てくれてよかった」
兄と慕ってくれることが嬉しい。僕はなにもしてあげられなかったから。
「フォスに感謝だねぇ」
「そうだな」
目を離せば、すぐさまエクメアの所へ駆けていく。ちょっとだけ羨ましかった。弟にそんな風に思われるエクメアも、好きな者同士で一緒にいれる2人も。月で僕も頑張れば、ラピスにまた会えるだろうか。

ろくでなし/ラピスラズリ

光を通さない漆黒に、強く惹かれていることを見て見ぬふりをしていた。
「ん。どおしたのぉ?」
心地よい距離を保ちながら、こちらに踏み込むのを伺う瞳。好奇心と慈愛に満ちた眼差しが好ましかった。モリオンが僕を好いていることは知っている。
「なんでもないよ」
髪を払い、視線を逸らす。彼をめちゃくちゃにしてみたい。そんな欲を醜いと名付けるほどには、善性を残している。そこまでろくでなしじゃない。
「名前を呼んでよ」
そう言って目を細める君に、意地悪なことばかり浮かぶ僕は、きっとイカれてるんだろうね。
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