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本編

パイライトが反射してキラキラと光る。想い石の後ろ姿を見つけて、そっと近寄る。珍しく画板を持ち、紙になにか書いている。
「なぁに書いてるのぉ?」
「やだ、えっちだな」
ラピスは画板を胸に抱えて、中身を隠す。覗こうとしても僕に背を向けて、全く見せてくれない。
「君はケチだねぇ」
「…………」
ラピスは僕に構う暇はないといった調子で、無視を決め込んで考え事を続けた。僕は別に気にはしない。ラピスがこうなのはいつものことであるので。けれど、ラピスの頭の中を少しでも垣間見たくて、時折画板の中を覗いた。その度、迷惑そうにラピスはかわす。
「しつこいよ?」
「キャキャキャ。見せてくれたらもうしないよ」
「ごめんだね」
池の水面に、僕らの攻防がゆらゆら映る。突き抜ける大空に、入道雲が泳いでいた。
「もうそれなら、こうして、こうだ」
「あ」
ラピスは紙をビリビリに破いて、池に撒いてしまった。たくさんの紙片が風に舞って、池に落ちていく。たちまち、クラゲが群がって食べてしまった。
「あーあ。ペリドットに怒られるよぉ?」
「無駄にしたわけじゃないからいいだろ。もう僕の頭の整理はついた」
髪を後ろに靡かせながら、ラピスは悪びれもせずそう言った。そして、図書室に向かって歩いていってしまう。
「結局、なにを考えてたのさ?」
「んー? 内緒」
意地悪に口は弧を描く。君のことは知ろうとすればするほど隠されて、君から与えられる言葉は秘密か嘘ばかり孕んでいる。それでも、それが君を嫌いになる理由にはなり得ない。むしろ、もっと深みへ僕を誘うんだ。
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