温もり

はぁーっと吐く息が白くなってきた。


朝の空気は一層冷たくなり鋭さを感じる。


その鋭い空気は体を冷やすだけでなく、私の手を集中攻撃する。


息をかけ、手を擦り合わせても手の温度は上がる気配を見せない。


「寒そうね」


先輩の彩子さんが寒そうな私を見兼ねて問い掛ける。

「彩子さんは寒くないんですか?」


「私?私は平気よ。」


なんで平気なんだろう、こんなに寒いのに。


「寒いのはあんただけよ。」


練習中の部員達は冬の寒さを知らないのか、半袖にハーフパンツで練習をして汗を流している。


特に流川からはメラメラと炎が見えんばかりで、練習に気合いが入りまくりなのがわかる。


(普段は全然そんな風には見えないのに…)


彼のプレイは一際目につき、どうしても彼に目が行ってしまう。


目に止まってしまうのはそれだけではない……個人的理由があるからで……





練習が終わり、皆が汗の処理をするため一旦部室に戻る中、一人後片付けをする。


体育館は部員達の熱気でほのかに暖かい。


「……手伝うか?」


「うわっ!!」


背後から急に話し掛けられて飛び上がりそうになる。

「る、流川くん…もう着替えてきたの?」


「まさか」


そりゃそうだ。早業すぎる。


見ると練習の時のままのシャツに、首にはタオルがかかっている。


「い、いいよ!大丈夫!それより早く着替えてきた方がいいよ、体冷えちゃう!風邪でもひいたら大変!」

目の前にいる流川くんにドキドキして、早口になる。

汗をかいて熱気を帯びている彼からは色気すら感じる。


まじまじと見てられない。


「……そうか」


そう言って立ち去って


行くかと思ったら




「!!!!!!!」




気付けば、彼の両手に私の両手がすっぽりと納まっている。


私の思考は完全にストップしている。


ただ、目を大きくするだけだ。



一瞬の沈黙。



「……冷てぇ。オメーの方が風邪引くぞ」


私の手をを包む大きな手が、更に力を込める。


(………温かい)


思考停止した私が唯一、彼の温もりを感じた。





遠くの方からガヤガヤと部員達の声が聞こえ始めた頃、パッと手が解放される。


「……着替えてからくればよかった」



ポツリ呟いてスタスタと私の前から立ち去っていく。


「……………」


あの…


顔だけ熱いんですが…

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