甘いのはお好き?


「はっ…しまった…」


時間を遡る事、ほんの数十分前。

何かに気付いた流川は乗っていた自転車のブレーキを思いっきりかける。


キキィィーーー…


甲高い音と共にし、自転車は急停止した。


「馨…忘れてきた…」


彼は無我夢中で学校を飛び出してきた。

部活中、チラチラと自分を追いかけてくる影。

休憩中に外へ出れば、用があるのかないのかわからない素振りを見せる。

チラリとそちらを見れば姿を隠す。


(なんなんだ、一体……)


部活が終わって部室に向かうと一緒についてくる。

用があるならさっさとすればいいのに、何もしようとしない。

イライラも募り、その人影から逃げるため、そのまま着替えて学校を急いで飛び出してきたのだ。

…後ろの荷台に乗せるべき人物を忘れて…


(…怒られるかな)


置いてきぼりを食らい、怒りに満ちた馨の姿が脳裏に浮かぶ。


『か~え~で~!私を…置いていったね…!』


……ゾクリ


背筋に悪寒が走る。


「…引き返すか……」


家まではもう少しだが、馨の怒りを沈めるにはこれが最善だと、道を引き返すことにした。


(アイツ、怒るとコワイし…)


自転車の方向をくるりと変え、来た道を引き返すため、ペダルを漕ぎ始めた。


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