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覚めたくない夢

一歩一歩足を進める度に歓声が大きくなってくる。

会場で流れる重低音が効いた音楽は、この廊下にも鳴り響いている。

空気を揺るがす程の音量だが、それに負けずに聞こえてくる大きな歓声。

廊下を進んでいくごとに歓声が大きくなる。

心が高揚が増してくるのが判る。

こんなに心臓が高鳴るのはいつ振りだろうか。

煌びやかな照明が照らすフロアがドアの隙間から見えて来る。

ドアを潜ると歓声と重低音がダイレクトに全身を襲った。

今まで体感したことのないエネルギーが一気に襲いかかってくるようだった。

コートにあるベンチに座り、フロアを眺める。


(…やっと、ここまできた…)


この場所に来るまでには様々な壁があった。

日本では高いとされていた自分の身長は
、この世界では小さい方だった。

言葉の壁、偏見の壁…

立ち塞がるものは多かった。

でも、こうしてこのフロアに立つ為、乗り越えてきた。

バスケを始めてからずっと憧れいた場所。

壁は多く、大きかった。

高さと技術の違いに戸惑ったものの、努力は実を結び、それが認められた後はトントン拍子に事は進んでいった。

実力がものをいう世界。

足りなければ自分の力でのしあがればいい。

大変ではあったが、辛くはなかった。

むしろ、壁があることで自分を燃え上がらせた。


試合開始のセレモニーの後、順々にメンバーの名前がアナウンスされる。

名前が呼ばれる度に沸く観客。

…次は、自分の番。


「KAEDE RUKAWA!!」


一歩フロアに足を踏み入れると客席は更に沸いた。

夢は叶った訳ではない。

今、自分はスタートラインに立ったに過ぎない。

まだ、始まったばかり。


夢は、覚めることはない。



→元文章

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