差しのべる彼のセリフ


水戸くん、怒ってる?


どうして怒ってるの?


なんで…怒られてるの?



「だって…だって、私はうっとおしいでしょ?そんな…人にくっついているようなヤツ…嫌でしょ?」



感情が高ぶって声が震えてしまう。


抑えようとしているのに、喉の奥から熱いものがこみ上げてくる。



「私は一人で大丈夫なようにならなきゃいけないの!一人でも平気じゃないと…」


「またアイツみたいに何か言われるって?」


「…!!」



先ほどとは違う声だった。


静かな声は同じだったけど、そこに優しさを感じる声だった。



「馬鹿だな、お前、また頑張りすぎてるんじゃねーの?」


「頑張ってなんか…!」


「そうやって力いっぱい言ってる辺りが頑張ってるんだよ」


「……」


「無理して頑張って、そうやって突っ張って。苦しくねーの?」


「……」


「もう、頑張るの、やめれば?」



私は、「頑張って」いた。


一人で、突っ張って、自分は「一人」だと。


一人じゃないのに、一人でいる気になって。


隣に水戸くんがいるのに、そんな当たり前の事に気づかないで。


そう思ったら、なんだかさっきまでの自分がバカバカしくなってきた。


きっかけはほんの些細な事だった。


些細な事なのに、こんなにもスッキリするとは思ってもみなかった。


自分は一人だと思っていた時、いつも隣に水戸くんがいたことを、今しがた気づいた。



「あのさ…なんか水戸くんに全部話してスッキリした。全部話したら、なんか今までの自分がばかばかしくなったよ」


「……」


「ありがとう。水戸くんに話聞いてもらえてよかった」



そういうと、水戸くんは余裕のある笑顔で笑った。



「だから言ったろ、俺が話聞くって。お前頑固だから中々話してくんなかったけど。もっと早く言えばよかったのに」



…ホント、その通りだ。


自分が自分をちゃんと見ることが出来なかったから、隣にいる水戸くんさえ見えなかったんだ。



「俺が隣に居るからさ、お前は俺のそば離れんなよ」



水戸くんはそう言って屋上から姿を消した。


教室では滅多に話せない水戸くん。


こうして屋上にくれば、水戸くんの隣にいられる。


…明日も屋上に来ようと思った。




END

お題提供元:確かに恋だった

2012.11.26
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