差しのべる彼のセリフ


あの日、私は泣きそうな顔をしていたんだろうか。


一人で大丈夫と心に決めて正々堂々としようとしていたのに。


…そんな顔をしていたんだろうか。


今日も屋上に一人座り込む。


そして、それは突然降ってきた。



「まぁたそんな顔して」


「わっ!!」



またしても水戸くんに不意をつかれてしまった。


どうしてこう一人でいると現れるんだろう。



「また泣きそうな顔してる」


「そんな顔してないよ」


「お前…考えてること顔に出すぎ」



水戸くんは私の顔を見てプッと笑う。



「別に泣きたいって思ってないよ」


「でも、眉間にしわ、寄ってるぜ」



余裕のある顔で私の隣に座る。



「俺でよかったら話聞くけど?」


「別に。水戸くんには関係ないよ」



男の水戸くんに、複雑な私のオンナ心なんてわからないよ。


それに、水戸くんは…不良だし。


きっとサバサバした感じの人がタイプなんだ。


私みたいにウジウジ悩んで、一人で抱え込んでる人は、苦手なんだ、きっと。


アイツみたいに、「うっとおしい」って思うよ。


きっと。



…って、水戸くんの好みのタイプ分析してどうするんだよ、私。




「頼られてねーんだなぁ、俺って」


「いや、別にそういう意味じゃ…」


「なら、どういう意味?」


「う…」



私みたいな地味な人間、放っておけばいいのに、どうしてこんなに聞きたがるんだろう、水戸くんは。


それに、今まで殆ど会話したことないのに。



「言ったじゃん。『辛いときは俺に言え』って」


「そんな。いきなり水戸くんに話しても、水戸くん困っちゃうよ」


「そうかな。わからないと思うな。話してみないと」


「私、水戸くんとそんなに話したことないのに、突然悩み相談なんて…」


「やっぱり、悩んでたのか」


「…!!」



誘導尋問をされて自白させられた。


そんな事水戸くんに言うつもりなかったのに。


この人、一枚上手だ…



「なぁに遠慮してるかわかんねーけど、俺に話せば?」


「……」


「俺じゃ頼りない?」


「違うけど…そんないきなり頼りになんて…」



水戸くんの顔がいつになく真剣だ。



「『俺が』頼られたいんだよ」


「!!!!!」





心臓が一瞬止まるかと思った。


呼吸も、どうやるのかやり方を忘れてしまった。




固まってる私を見て、また余裕のある笑顔で私の隣から立ち上がる。



「まっ、この俺に遠慮は無用だよ」



そういって、また水戸くんは屋上から姿を消した。







なに?



今のどういう意味?



突然すぎてよくわからなかったんだけど…



頼るとか、頼りたいとか、頼られたいとか…


え?


よくわからない。



私の思考は完全にストップしてしまった。


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