海南大附属高等学校籠球部!

牧の名案によってバスケ部の出し物が決定!
…ヨーヨー釣りだ!!

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「っか~~!!今日の練習終わり!」


外はすっかり日が暮れ、暗い校内を体育館の照明が眩しく辺りを照らしていた。


バスケ部の練習が終わり、各々汗を拭いたり水分補給をして火照った体を休ませていた。


「おい、清田。ちょっとこっちこい」


「はい!牧さん!」


清田は飲んでいたスポーツドリンクの手を止め、汗を拭く牧の元へと駆け寄る。


「なんすか、牧さん!あっ、もしかして俺にマンツーマンでコーチしてくれるんですか?」


「何言ってるんだ。俺は帰って勉強だ」


ちぇっ、とあからさまにガッカリする清田を見て牧はフッと笑う。


「ただ、お前にやってもらう事があるんだが、やってくれるな?」


その言葉を聞いて清田の顔がパッと明るくなる。


「もちろんっすよ!で、何をやればいいんすか?」


牧は清田のコロコロ変わる表情を内心ほほえましく思いながら、清田に一つの箱を託す。


「文化祭までにコレ、極めておけよ」


「は?」


「じゃ、お先」


「ちゅ、ちゅーーっす…」


ヒラヒラと後ろ手で帰る牧をただただ清田は呆然と見送った。


「極めるって、何だ?これ…」


牧から渡された箱を床に置き、封を開けるとおびただしい量のヨーヨー(未完成品)と一通の手紙が入っていた。


「な、なんだ、これ!」


清田はすぐさま手紙の封を乱暴に開け、目の前で開く。


『ヨーヨーを作る担当は清田に決まった。文化祭までに完璧に作れるようにして欲しい。ヨーヨーは仕入れてあるから後は頑張れよ!清田に決めたのは俺と牧の一存だ。清田ならきっといいヨーヨーが作れるはずだ。期待を裏切るなよ。  宮益』


読んだ瞬間、清田の体の力が一気に抜け、床になだれ込む。


「ヨーヨー担当ってなんすか…宮さん」


何で俺が、本人の意思無視でなんで勝手に決めるんだ、という気持ちでいっぱいになる。


文化祭で使うヨーヨーをたった一人に託すなんて無謀すぎる。


200は軽くあるヨーヨーを俺一人で作るなんて無理だ…!!


牧と宮益の意図が全く読めずに頭を抱える清田の頭上から声が聞こえた。


「へぇ、すごい量だね」


見上げるとニコニコ笑う神が清田を見下ろしていた。


「…神さん!」


「どうしたの、一人体育館でうなだれて」


「どうしたもこうしたも…」


「?」


神は泣きそうな顔の清田の手に握られている手紙を受け取り、清田の言い分を聞きながら一通り読む。


「へぇ…重要任務だね、これは。バスケ部の命運は信長にかかっていると言っても過言ではないね」


「バスケ部の、命運?」


「そ。文化祭でのバスケ部の命運は信長にかかっているんだよ。ヨーヨーが上手く作れたら、キャプテン、喜ぶんじゃないかな」


「牧さんが?」


「文化祭の出し物はヨーヨー釣りだろ?それを作るのは信長。それを任命したのがキャプテンと宮さん。ここまで言えばもうわかるよね?」


神の言葉を聞いて清田は頭を巡らせる。


(バスケ部の出し物はヨーヨー釣り。つまりそのヨーヨーはバスケ部の要!その要であるヨーヨーが完璧なものでなければならない。そしてこのヨーヨー釣りこそ、牧さんと宮さんがこの日の為に考えてきたもの!成功すればきっと喜ぶ!)


清田の目に闘志の炎が燃える。


(その重要なヨーヨーをこの清田信長に牧さんは託していった、つまり…)


(俺は期待されている!!!)


(宮さんの手紙にも書いてある!「清田ならきっといいヨーヨーが作れる」って。これは期待されている証拠!)


(ここで成功すれば俺の株は急上昇!)


「つまり未来のキャプテンは俺!!」


清田の雄たけびが空っぽの体育館に響き渡った。


「…なんでヨーヨー一つでそうなるんだろう…」


神は燃える清田に聞こえないように呟いた。



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バスケ部の命運は清田の手に!!
ヨーヨーを極めろ、清田!!
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