徒然モノクローム
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仙道さんは器用に釣り糸にルアーをつけ、海を見渡す。
「あ、そのイス、使っていいからね」
仙道さんが持ってきた釣り道具一式の横には折りたたみの簡易イスがあった。
「仙道さんは使わないんですか?」
自分が使うために持ってきたであろう物を、軽々と使うわけにはいかない。
「俺が座ってて隣に女の子の##NAME1##ちゃん立たせてたら、俺の面目丸つぶれだよ。俺に恥かかせたくないと思ったら使って」
また、誘導するような言い方を…
いいのかな…と思いつつ仙道さんを見ても、仙道さんの目線は海から離れなかった。
ここは素直にイスに座らせてもらうのが妥当だと思い、簡易イスを広げて座る事にする。
「あそこがいいかな…」
仙道さんが呟くと、竿をふり、釣り糸を海に放る。
その後から仙道さんは何も喋らず、真っ直ぐ海だけを見ていた。
「……」
別に話しかけて欲しいわけではなかったけれど、無言のままでいるのがもどかしかった。
隣にいて欲しい、みたいな事を言っておきながら、なんて飄々としているんだろう。
でも…
『一人の時間は邪魔しないよ。俺も一人で釣りやりたいし』
って言ってたっけ。
二人並んではいるけれど、特に干渉しない空間っていうのも悪くないな、と思った。
こうやって海をぼんやり眺めているのもなんだか楽しいし。
「海ってさ…」
仙道さんが独り言のように話しかけた。
「面白いよね。色んな表情がある。大荒れの時もあるし、今日みたいに凪いでいる時もある。こうやって見るのが好きだから釣りも好きなんだよね」
「……」
「もちろん、魚吊り上げる醍醐味も好きだけどさ、釣り糸垂らしながらぼんやり見てる時間も好きなんだよね」
確かに、何かを求めるわけでもないけど、何かを与えてくれる海は不思議な存在なのかもしれない。
波の高い日はなんとなく不安になるけれど、穏やかな日は落ち着かせてくれる。
そんな海の表情を仙道さんは好きなんだ。
「俺の知り合いにもさ、見てるだけで面白いヤツいるんだよね。…ホント、…面白いんだよね」
ぷっと笑いながら小さな声で「からかうのが」と言うのが聞こえた。
なんとなく、なんとなくだけど、飄々とした表情であっけらかんとその「誰か」をからかう仙道さんが見えたような気がする。
(この人、きっと意地悪だ…)
多分、私をここへ誘導したのも同じような感じだったのかもしれない。
ちょっと困らせるような事をして考える様子を見るのが好きなんだ、この人…
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