甘いのはお好き?


いつも一緒に帰っているのに何も言わず先に帰るなんて…

そんなバカな、と思いながら駐輪場へと大急ぎで向かう。

駐輪場でキョロキョロと目的の自転車を探すが見当たらない。


「ホントに帰ってる…」


いつものように、帰りも後ろに乗って行く気満々だったのに。

見落としてるかもしれないと、もう一度駐輪場にある自転車一つ一つを確認していくが、やはり流川の自転車は見つからない。

ショックと同時にイライラが込み上げてくる。


「なんで置いてっちゃうの!?」


置いてきぼりを食らった馨は家までの距離、徒歩で帰る事が決定した。

…今日はついてない。


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帰りの身支度を済ませ、バスケ部の面々と別れた後、寒空の中、家へと向かう。

フカフカのマフラーを口元を覆う様にして巻いていても吹き付ける冷たい風が身に染みる。


(うう…寒い…)


自転車ならすぐに着く道だが、徒歩となると倍以上の時間がかかる。

この寒空の中、自転車に乗っていたらもっと寒いだろうか…

なにせ、流川の漕ぐ自転車は速いから…

吹き付ける風は、よりいっそう強くなるだろう。

…そう思ってもこうして歩いて帰っている以上、無駄な考えなのだが。


(くそう、帰ったら首しめてやる)


女子生徒のチョコの出来事も重なり、怒りも一層込み上がってくる。

徒歩でかかる時間が一人で歩く道のりをより長く感じさせる。

途中、駅前に並ぶ商店街を横切る。

街中はバレンタイン一色で綺麗なピンクや赤の装飾が眩しい。

ふと彩子からもらったチョコを思い出す。

街中を見ると小さな紙袋を持ってニコニコしている女の子達が目に写る。


(バレンタインかぁ…)


馨は家の方向ではなく、人混みの方へと歩いていった。


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