豊玉vs大栄
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「ふむ……」
土屋は豊玉高校の戦績表の紙を片手に考え事をしている。
「こうやって今までの試合結果見とると全試合100点ゲームやんけ。相変わらず大したオフェンス力やな豊玉は」
「今回はどう攻める?大栄キャプテンの意見聞かせてもらいたいわ」
「う~ん、そやね~…」
「豊玉の速い展開に真っ向勝負して点の取り合いするか?」
めぐの提案に土屋は少し何か考えた後、首を横に振る。
「いや…、あかんな。ウチが豊玉より上っちゅう事を全国の奴らに見せつけてやらんと面白くない」
「どういうことや?土屋」
「今の時点でウチも豊玉も2勝。勝ちの数は同じやからな」
含み笑いをする土屋にめぐは思わず身を乗り出して机を力いっぱい叩く。
「だーー!まどろっこしいな!はよ教えろ!」
「うわっ!驚かさんといて。んもう、めぐちゃんはせっかちさんやな~。まぁ、そこが魅力の一つやけどな」
「………(ギロリ)」
めぐからの鋭い視線を察知して、土屋はわざとらしい咳を一つする。
「…うぉっほん!ええか、ウチには豊玉の爆発的なオフェンスを抑えつけられるくらいの力があるっちゅー事を全国の奴らに教えてやるんや。それはつまり、豊玉得意のラン&ガンの足を止めてやるっちゅー算段や」
「なるほど。相手の得意な戦法をねじ伏せてやるわけやね」
「さすが大栄マネージャー、理解力抜群やな。相手が得意とする戦法を抑える事ができれば、大栄は豊玉より上っちゅうわけや」
「土屋、ちゃんと考えてるんやね」
めぐの言葉に土屋は両手を組み、窓の外で揺れる木々に目を移す。
「…当たり前や。俺は大栄バスケ部のキャプテンやで。キャプテンとしてチームを引っ張っていかんとな。責任重大や…」
「……」
「全勝して、全国に行くんや」
「…土屋…」
土屋は土屋なりにチームの事を考えている、めぐはそう思っていた。
普段おちゃらけてはいるが、バスケの事となると人が変わったように真剣な顔つきになる。
そんな彼は以前から大栄のムードメーカー的存在であった。
だからこそ、キャプテンに選ばれた。
そのことをめぐは思い出していた。
こういう時の土屋を「ちょっとカッコいいんだよな」と思ってしまうめぐであった。
その時、表情をそのままに土屋の目の色がガラリと変わる。
「…それとな」
「ん?」
「豊玉てガラが悪くて嫌やねん」
「は?」
「なんか言葉遣いとかな。あれじゃ『大阪の人間てみんなあんな感じなんや』って誤解されるで」
「あぁ、確かにちょっと怖いヤローが多かったな。応援も迫力あったで。別の意味で」
「それがホンっっトに嫌やねん。あっくん精神強いからあんな応援にひるまんけどな、徳が高いあっくんにはあのガラがとてもじゃないけど許さへんのや」
「…はぁ、さいですか」
「あと、あの岸本!」
「岸本君がどないした?」
「『君』づけせんでええ!!」
「ちょ、耳元でどならんといて!」
「あいつな、なんかいちいち突っ掛かってくんねん!会うたびなんか嫌味ゆうてくるし!」
「…はぁ(なんか面倒やな)」
「こっちは普通にプレイしてるだけやのに…『かっこつけおって!』とか『いい気んなんなや!』とか…ぐちゃぐちゃと!」
「はいはい」
だんだんとヒートアップしていく土屋とは対照的に、めぐは諦め気味に見ていた。
気づけば土屋は椅子から立ち上がっていた。
「腹立つから今度の試合ん時、徹底的にムシしてやるんや!話かけられてもムシ!1対1になってもスルーしたるんや!あっくんと勝負するなんて100年、いや1億光年早いっちゅー話や!!あのチョンマゲ!変な頭しよってからに!」
「(1億光年…?それ、距離の単位や…)」
「見てろぉ!岸本!あいつの上から自慢のシュート打ったるわ!あっくんの大阪一の打点はハンパないでぇ~!あっくんとの格の差、思い知らせたるわ!」
「ムシするんじゃなかったんか。なんかさっきと矛盾してるで」
「けちょんけちょんにしたるわ、チョンマゲ!!」
「お~い、土屋静かにしいや!」
「あ、委員長、コイツの事は気にせんといて~。すぐに大人しくなるから」
ヒートアップしている土屋にクラス委員長の叱責が飛ぶ。
熱くなると「本当の顔」が出るが、試合中の彼はびっくりするほど至って冷静である。
それは集中力の表れである。
試合中は至ってクールな土屋。
それゆえにファンは多いのだが、バスケ部の面々は「本当の顔」がついうっかり出てしまわないか内心ひやひやしているのである。
「なんか、前言撤回、やな…」
心の熱が止まらない土屋を見て、思わず頭を抱えてしまう。
真面目な時の土屋をちょっとでも「カッコいい」と感じてしまう自分の心に呆れてしまう。
そんなめぐをチラリと見ながら土屋は意味ありげな口調でポツリと呟く。
「あと、『アイツ』もおるしな…」
「は?アイツて?」
(もうっ!めぐちゃん、わかってるくせに!)
少し鈍いめぐにもどかしくて土屋は頬を膨らませる。
.